使い方次第で、需要が深化しそう!
通常の靴紐とは微調整に対するアプローチ自体が大きく異なり、装着する靴の種類さえ間違えなければそこまで極端な着用感にはならないHICKIES。だからこそ飯野個人としては、これは「単に面倒なだけで靴紐を都度結び・解きをせず、一度結んだままの状態でユルユル履きしている怠惰な人」向けでは、あまりにもったいないと思います。また、ファッションアイテムとしてでのみミーハーに採り上げてしまうのも、的の核心を射ずに浅く評価することになるような気がしてなりません。そう言った事とは別の次元で、この種の商品が本当に必要な人が、家屋で靴を履く習慣のない「靴脱ぎ文化圏」の日本にはたくさんいらっしゃるのではないでしょうか。以下具体的に3例挙げてみます。1. 屋内と屋外とを頻繁に行き来し、屋外で危険な作業に従事なされる方。
例えばインターネットや固定電話、それにケーブルテレビの敷設や保守をなされる職種の方です。先日私の家でもケーブルテレビの設備の更新があってそれに立ち会ったのですが、担当の方が部屋の中で配線や画像の状況を頻繁に確認する一方で、足場の悪い屋外で結構危ない作業をなされているのに驚きました。ブカブカの靴での作業は転落などの事故に直接つながる恐れがあるものの、度々の靴紐の脱ぎ履きだけで時間を取られてしまうのも作業効率の観点では問題ですし……。
2. 妊婦さん、若しくは小さなお子さん連れのお母さん・お父さん
お腹が大きくなると、靴を履くのに前屈みするだけでも重労働ですよね。かと言って足に合っていない靴を無理矢理履いて、万が一身体のバランスを崩してしまったらなんて、考えたくもありません。まだ「おんぶ」をする必要がある小さなお子さんを連れて外出するお母さん・お父さんだって同じです。近年は背側ではなく胸側におんぶをするのが主流ですので、靴の脱ぎ履きの際に足元が見えず結構大変なはずです。
3. 身体に何らかの障害を有していて、靴紐が結び辛い若しくは結べない方
より具体的には、膝を痛めて思うように曲げられない方や、事故や病気で足や手の動きが悪くなってしまった方などです。個人や家族の双方の経験から思い出してみても、どちらの方も無理をしない範囲で外出するのが、地道ながら着実なリハビリとなります。しかし、足に合った靴を自分自身で脱ぎ履きしたり微調整するのが困難だと、どうしても屋内に閉じこもってしまいがちで、これは本人も家族も非常に辛い。その一方でユルユルの靴を履いて身体が不自然にふらついてしまうと、外出に意味がなくなる以上に明らかに危険です。
上の靴を実際に足入れすると、通常の紐でホールドした場合と着用感にそこまで大きな変化は出ません。スニーカーに限らず、外羽根式のレースアップの靴が履きたくても紐を結ぶのが難しい環境の人にとって、十分役に立ちそうな予感がします。
つまりHICKESは靴紐を結ぶのが面倒な方より、それを結ぶのが難しい環境にある方に、より本質的な性能を発揮する! 言い換えると、これが真に必要なのは「脱ぎ履きが簡単でありながら、足をしっかりサポートできる」と言う矛盾した要素を持つ靴を、怠惰な発想からではなく真剣に求めていらっしゃる方だと思うのです。靴自体や現状の靴紐では未だに克服できないそんな矛盾が、これである程度、でも確実に解決できるからです。こう言う観点は全くファッション的な要素ではないので、恐らく目立った採り上げ方はされないでしょうが、HICKIESはそんな悩みを持つ方には相当な福音となる予感がします。そしてそのような人々からの的確なフィードバックが得られれば、構造自体はなかなか考え抜かれている商品だけに、更に良いものに発展できる可能性を秘めていると思うのです。