ジャズドラム演奏参考曲 第三位
アート・ファーマー/ドナルド・バード「2トランペッツ」より「ディグ」

2 Trumpets

      2 Trumpets

 

このCDはモダンジャズがもっとも華やかだった1956年に、当時売り出し中の二人のトランペット奏者アート・ファーマーとドナルド・バードをフィーチャーしたセッションです。ドラマーにはアート・テイラーが収まっています。

アート・テイラーはほぼ同時期にマイルス・デイヴィスのバンドメンバーとしても活躍、同じ頃にマイルスバンドにいたフィリー・ジョー・ジョーンズやジミー・コブと似た感じの堅実なプレイヤーですが、中でも一番地味な存在です。それだけに、参考にするには一番良いかもしれません。

その上この「2トランペッツ」の「ディグ」におけるアート・テイラーには、普段にはあまり感じられない鬼気迫る迫力を感じる事が出来ます。リズムセクションのベースのダグ・ワトキンスやピアノのバリー・ハリスというさらに地味な渋いミュージシャンとの相性もバッチリ。

演奏はのっけからアートのドラムフィルインで始まります。マイルス・デイヴィス作曲の有名なテーマの少々荒っぽい合奏から、すぐにピアノのバリー・ハリスの好調なソロに入ります。

この際のアートのトップシンバルを聴いて、先程のスティーヴ・ガッドとの「シンシンシンシン」という音の長さの違いに注目してみてください。シンの音が切れない内に次のシンがうたれ、シンバルの音が連なった音に聴こえてくるはずです。

左手のフィルイン(スネアドラムやタム、ハイハットなどで左手で演奏中に入れる合いの手)など良い意味で、遊びの多いモダンジャズのドラミングの見本のようなプレーです。

次のアルト奏者ジャッキー・マクリーンのソロは、最初はモソモソ聴こえます。それが2:40くらいから急にバックのドラムの音量が上がると同時にスイッチが入り、ジャッキーのアルトもハードなものに聴こえてきます。

演奏が盛り上がったのはもちろんですが、実はここには秘密があります。それは、このセッションを録音した超有名なエンジニアのルディ・ヴァンゲルダーにあります。ルディがジャズファンに愛されてやまない原因がここにあるとも言えます。

ルディは、その場のジャズの空気を敏感に感じ取り、自分の信じた独自のバランスでジャズを鳴らします。もちろん、この時は、ドラムのアートとアルトのジャッキーの音量を一挙に上げたに違いありません。でもその事によって、いきなり演奏が生き生きしてくるのが分かるはずです。このあたりが、突発性が強い生の音楽であるジャズの醍醐味です。

このCDは、特にピアノのバリーハリスとベースのダグ・ワトキンスの地味さが顕著で、おそらくはベースソロの部分ですが、ダグはソロを取ろうとはしない場面があります。

ピアノのバリーはバリーで、これが同時期のピアノ奏者ウィントン・ケリーやレッド・ガーランドならばまさに取って代わらんと飛び出して来るようなソロの隙間の部分を、バリーはコードを少し弾くだけです。

3人のホーン奏者の熱いソロとの、演奏のメリハリを一手に引き受けているかのような静けさには、その一徹な姿勢に逆に感心してしまうほどです。その分、ドラムのアートが張り切らざるを得ないので、アートにとっては、見せ場を作れる良い人選だったと言えるでしょう。

最後の2トランペッツの4バース(四小節ごとにソロを取り合う事)の部分では、トランペットとドラムしか聴こえないほどの熱演です。普段は冷静なアートが活火山のように熱く燃える名演となっています。

そして、そのドラミングはこの5年前に吹きこまれた有名なマイルス・デイヴィスのセッション、オリジナルの「ディグ」のドラマー、アート・ブレイキーと比べても、少しも遜色が無いどころか、まさに双璧と言える演奏です。

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最後におまけ、プロドラマー直伝!
まる秘リズム練習法 こっそり教えます

このリズム練習法は、フュージョンシーンで活躍するプロドラマーの仲間に教えてもらった必殺の練習法です。

その方法とは「メトロノームを裏で鳴らそう」というものです。これだけで、ピンと来た方は早速初めてみてください。リズムの長さとタイミングの再確認に最適ですね。

初めての方にご説明しますと、リズムの練習で必ずと言って良いほど使われるものに「メトロノーム」があります。昔は音楽室にカチカチと木目のメトロノームが必ずありました。

ああ、と思いだした方も多いはず。上記のようなものでなくとも、今は電子式のものや、スマホの無料アプリなどもありますので、どれか一つをご用意ください。できれば、ヘッドフォンで聴けるものがベストです。

それを鳴らしながら練習をするのですが、良くやりがちなのが、「カチカチカチカチ」のカチの部分を頭で捉える方法です。

「カチカチカチカチ」を「1,2,3,4」と頭から数えてやる方法、これが「表で鳴らす方法」です。では、今回おすすめする「裏で鳴らす方法」というのは、次のやり方で試してみてください。

  1. ゆっくり目のテンポ(70~90くらい)で「カチカチカチカチ」鳴らします
  2. 「カチカチカチカチ」に合わせて声に出して(重要、必ず声に出してください)「エンエンエンエン」と合わせます(エンはエンド、andのエンですので恥ずかしがらず自信を持って)
  3. 乗ってきたら切の良いところでエンの裏に1,2,3,4の数字を入れていきます。このように「エン1エン2エン3エン4エン」を繰り返し、次第にエンを言うのをやめ、数字のみを言う様にします
  4. 裏の1,2,3,4の数字を意識してそちらが表になるように強調します。この時は身体全体で乗らないとリズムをとる事が難しいので、めいっぱいリズムをとってください。メトロノームの音が常に裏で聴こえる様に。
  5. メトロノームの音が裏でとれるようになったら、なにか歌いやすい歌か、テーマを口ずさんでみましょう。感覚がつかめたら、いよいよメトロノームの音を裏にしてドラムを練習してみよう!

最初は難しいけどガンバロー! めざせ、一流ドラマー!



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