ショッキングな出来事のあと、場合によっては、短期精神病性障害を発症する事もあります

短期精神病性障害は夏の通り雨の如く、短期間で元の自分に戻りますが、その引き金となった心的ストレスは、このように精神病様症状を引き起こすほど脳内環境を病的にする事があります

幻覚や幻聴を始めとする「精神病様症状」は、代表的な精神症状の一つ。自分の身の周りの現実認識能力が、顕著に低下してしまうのが特徴です。

統合失調症や妄想性障害などの場合、さまざまな精神病様症状が特徴的に現れ、その経過は一般に長期になりやすい傾向があります。しかし、心の病気の中には精神病様症状の発現自体は深刻でも、症状の経過が一過性で終わるものもあります。

今回は、夏の通り雨の如く、激しい雷雨も通り過ぎれば空にカラリと晴れ間が広がるように、たとえ精神症状が一時的に深刻でも、短期間で元の自分に完全に戻る「短期精神病性障害」について詳しく解説いたします。

短期精神病性障害の特徴・症状

短期精神病性障害の特徴的な症状は、幻覚や妄想あるいは周囲の者には不明瞭な言動などで、これらの症状は統合失調症の急性期に類似しています。

短期精神病性障害の詳しい発症率は不明ですが、心の病気の中では頻度が少ない疾患だと考えられています。その内訳は20代から30代の若い年代に多く、性別では女性に多く見られます。この病気の発症に至る詳しいメカニズムも不明ですが、精神的に不安定な状態にある人が、何らかの事態に直面して大きなショックを受けてしまった時に発症することがあると考えられています。

例えば、もともと精神的に不安定な傾向にある20代の女性が、彼氏から突然の別れ話を切り出されたケースなどでもありえることです。その相手が初めての彼氏で、夜も眠れないほどの大きな失恋のショックを受けてしまった場合など、数日後から幻聴が起き、自分の行動に対して逐次コメントする声が聞こえてしまう……といった状態です。短期精神病性障害ではそのように症状が出現してきます。

短期精神病性障害の治療法・予後

短期精神病性障害の治療法は、病的になってしまった脳内環境を是正するため、薬物療法などが行われます。具体的な治療薬として、抗精神病薬や睡眠導入剤などが、個々の状況に応じて選択されます。また、短期精神病性障害が発症するきっかけがはっきりしている場合、その出来事に正面から向き合うために、場合によっては心理療法も必要になります。

短期精神病性障害では症状の持続時間は、病気の定義上、1カ月以内と定められていることもあり、病気の予後は良好です。多くの場合、症状の再発は無く、完全に元の状態に戻ります。

なお、短期精神病性障害ではパーソナリティ障害の合併が多くなっています。具体的なパーソナリティ障害としては、いわゆるナルシスト的傾向が顕著な自己愛性パーソナリティ障害、あるいは感情面の不安定さが特徴的な境界性パーソナリティ障害などがあります。

ショッキングな出来事は予期せぬ心的反応を生みやすい事にご用心!

短期精神病性障害は精神疾患の一つですが、ごく日常的な心的反応にも類似点はあります。何か大変な出来事が思いがけず起きてしまうと、どんな人でも普段の自分の状態を保てなくなってしまうものです。例えば自分を大変可愛がってくれていた身内を亡くしてしまった場合など、その悲しみは言葉では言い表せないほど深いものでしょう。しばらくの間はショックで仕事が手に付かなくなってしまっても当然です。このようなとき、人によってはより病的な反応が起こってしまい、今回のような短期精神病性障害の発症につながる可能性もあります。

また、その体験が自然災害や交通事故など、自身も生死の境をさまようほど過酷な出来事だった場合、その数カ月後、場合によっては数年の期間を置いてから、その時の恐怖感が悪夢やフラッシュバックといった形でよみがえってしまい深刻な心的後遺症が現れるケースもあります。

もっとも、ショッキングな出来事は予期せぬ時に起きてしまうもの。なかなか具体的な対策は取りにくいものですが、そのようなことが起きてしまった場合の病的な心的反応を防ぐために、普段からストレス対策などをしっかり意識し、心の健康を出来るだけ良好に保っておくことは有効です。

そしていざ茫然自失になるような事態に直面してしまった場合、自分を精神的に支えてくれる人間関係があれば、どんなに心強いことでしょう。言わずもがなでしょうが、自分の身近な人間である家族や、子供の頃からの友人たちとは、どんなに忙しくても疎遠にならないようにありたいものです。たとえ、現時点では生活に何の問題もないとしても、将来の見通しが立ちにくい厳しい世の中、備えあれば憂いなしです。

もしもの時に起こるであろう心の激しい動揺にも備えがあるか、一度じっくり考えてみるのも良いのではないでしょうか。
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