損害保険/損害保険関連情報

仙台からの声も 分譲マンションこそ地震保険を(2ページ目)

財務省「地震保険に関するプロジェクトチーム」の報告書に盛り込まれた「さらなる地震保険の加入促進」を受けた地震保険の加入促進活動には、分譲マンション共用部分の地震保険加入に対するものも含まれています。なぜ、分譲マンションに地震保険が必要なのでしょうか。今回は仙台の被災マンションの状況を取り上げ、解説します。

清水 香

執筆者:清水 香

火災保険の選び方ガイド

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工事費用の資金調達方法は「修繕積立金」と「地震保険金」が多数

さて、2013年9月23日の河北新報によれば、仙台市内の分譲マンションは約1400棟あり、約120棟が罹災証明により全壊判定を受けているとのこと。そのうち公費解体されたのは5棟のみで、全壊判定を受けたマンションの大半は、修繕対応で入居を続けているといいます。つまり、東日本大震災では全壊判定された仙台市内のほとんどのマンションで、修繕資金が必要とされた、ということになります。それぞれの管理組合では、どのように合意形成に至り、そして修繕資金はどう工面されたのでしょうか。

一般社団法人宮城県マンション管理士会が東日本大震災後に発行した「震災とマンション2~経験したものが残すべきこと~」には、全国のマンション管理組合が参考にできる資料です。こちらによれば、被災後のマンションの修繕については、『補修資金の有無が管理組合の合意形成を左右した』としています。また『計画的な大規模修繕工事と異なり、突然の出費となり資金計画が復旧工事の大きな「ハードル」』になったとあります。つまり、修繕資金が確保できているかどうかが、住民の合意形成のカギとなったわけです。

いつ発生するかわからない地震被害では、計画的に修繕資金を積み立てて対応することは困難ですが、だからこそ、『特に、地震保険の保険金受取の有無・金額の多い少ないで、復旧工事に大きな影響』があったといいます。

仙台圏のマンション管理組合の地震保険加入率は高く、『地震保険に4分の3の管理組合が加入しており、その約9割で保険金を受領』したということです。工事費用の資金調達方法の調査でも、『「修繕積立金」と「地震保険金」が多数を占め』、『既に復旧工事を終了したマンションの復旧工事費用の資金調達方法でも地震保険はかなりのウエイトを占めていました。地震保険のみで復旧工事を行ったマンションも25%』あったといいます(同誌内 マンション管理支援ネットワーク仙台・みやぎ「仙台圏での復旧工事に関するアンケート調査」より)。

こうした状況を踏まえると、東日本大震災において、分譲マンション共用部分に管理組合が契約していた地震保険は、地震保険法に定める「被災者の生活再建に寄与」する制度として機能した、といえるでしょう。逆に、『地震保険に加入していなかったことで資金が不足』したり、『新耐震設計のため地震保険が不要と加入していなかったマンションで、今回被災を受け復旧工事の資金繰りに苦慮した』ケースも見られたといいます。
 

地震保険が「合意形成の困難を乗り越える力」に

(社)日本損害保険協会による分譲マンションの地震保険加入促進チラシ

(社)日本損害保険協会による分譲マンションの地震保険加入促進チラシ

分譲マンションにおける地震保険には課題もあります。地震保険が損害調査の対象とするのは、マンションの主要構造部ですから、タワー立体駐車場やエレベータ、貯水槽などの被害は損害としてカウントされません。修繕積立金で賄えなければ、マンションの住人による追加負担が必要にもなります。分譲マンションにおいて、その特徴を踏まえた損害調査を行えないかと、要望があったのも事実です。

しかし当冊子では、こうした課題を踏まえてもなお、『管理組合に求められる対策として、まず一番に挙げられるのが「地震保険」への加入』とし、『「地震保険」は、区分所有者の財産を守るためにも、すべてのマンションに加入してもらいたいものです。』と述べています。

さらに、『支払う保険料と支払われる保険金の額から「損」か「得」かで地震保険の加入を判断する管理組合もあるかと思いますが、「保険」の大きな目的はリスク回避にあります。』そして『予定できる「大規模修繕」でさえ、合意形成までには多くの時間がかかります。ましてや予定できない「震災」の復旧工事には、合意形成がより困難になることは疑いない事実です。その時に、「地震保険」の支払いは、管理組合にとって「合意形成」という問題を乗り越える大きな力になります。復旧工事をしなければならないが、資金不足の管理組合では「合意形成」にかなりの労力がかかっています。同じ屋根の下に住む者同士で嫌な思いを避けることもリスク回避であると考えます。そのためにも、マンションでは「地震保険」の加入は必要です。』と、地震保険についての章を結んでいます。

現在では、財務省「地震保険に関するプロジェクトチーム」の報告書に盛り込まれた「さらなる地震保険の加入促進」を受け、損害保険業界や不動産業界・マンション管理業協会をあげて、分譲マンション共用部分の地震保険についての加入促進活動も行われています。大震災を経験したからこそ見えてくる問題や課題を多くの方が共有し、ぜひ、具体的な準備につなげていただきたいと思っています。

※『 』部分は。一般社団法人宮城県マンション管理士会が東日本大震災後に発行した「震災とマンション2~経験したものが残すべきこと~」より引用。

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