将棋/将棋上達のコツ

3匹の子豚から学ぶ王の囲い方(2ページ目)

将棋で大切なのは、実は、セキュリティー感覚。どんな対局も、王将を詰められたら負けなのです。逆に言えば、王を守りきれば負けないということ。だからこそ、必要になってくるのが囲いの知識。今回は、3匹の子豚を例に、材料や労働時間などのコスト面や耐久性の面からも、囲いをガイドします。

有田 英樹

執筆者:有田 英樹

将棋ガイド


高セキュリティーの条件とは

3匹の子豚に学べ

3匹の子豚に学べ

一つには非常口があること。そして、ボディガード同士がしっかりと連携し合い、そのシールドの中に「王」が入っていること。この2点を満たしていることが、高セキュリティーな囲いの条件なのだ。もちろん100%の囲いなんてものはあり得ない。また、そんなものがあれば、将棋の魅力は消え失せてしまう。たとえば、以前にご紹介した「カニ囲い(関連記事)」は王の動きがよく、非常口という観点では力を発揮するが、連携という点では弱い。相手の陣形、そして、自分の陣形、この2つから状況を考え、最適の囲いを選んでいかねばならない。それは、ちょうど、オートロックにするのか、チェーンをつけるのか、ダイヤルキーか、はたまたシリンダーキーにするのか、などと考えるのと同じことなのだ。全部、装備したらいいじゃないか。そんな声もあるだろう。だが、それではコストがかかる。実は、このコスト計算も、将棋の囲いを考える上で重要なのだ。

唐突で恐縮だが「3匹の子豚」という物語をご存じだろうか。

3匹の子豚に学ぶ「囲いのコスト」と相手

どの家が安全か/画:ガイド

どの家が安全か/画:ガイド

子豚の兄弟が家を造る。長男はわらの家。すぐに、できあがる。もちろん、材料面でも労働時間面でも、低コストだ。次男は木の家、少し時間がかかるが、なんとか、できあがる。三男はレンガの家。これは時間がかかる。2匹の兄がゆっくり休んでいる間も働き続け、やっとの思いで完成する。かなりのコストがかかった。翌日、オオカミがやってくる。わらの家も、木の家も壊されるが、レンガの家は大丈夫だった、めでたしめでたし、というお話だ。やっぱりコストをかければ安全が高まるということだ。

ところがである。もし、オオカミが、もっと早くやってきていたらどうなっただろうか。レンガの家はまだ完成していない。わらの家なら、丈夫ではないものの、隠れることくらいはできるだろう。この場合は、コストの低いわらの家が高セキュリティーということになる。また、相手がオオカミではなく、洪水だったらどうだろう。木の家なら、材料にしがみついて浮き輪の代わりにできる。わらやレンガでは無理。かように、コストだけでなく、相手によっても安全度は変わってくる。ケースバイケースなのだ。

話を将棋に戻そう。囲いにおけるコストも、材料面と労働時間から考えなければならない。材料面とは駒の種類と数、そして、労働時間とは囲いが完成するまでにかかる手数だ。そして、相手とこちらの陣形。また、連携と非常口という設計図が、あなたが囲いを造る上での大切な要素になるのだ。

ちなみに、初心者囲いは材料面では「金」2枚「銀」2枚。労働時間は2手ということになる。材料のコストは高いが、労働時間は低コスト。だが、いかんせん、設計図が悪かったのだ。

では、いよいよ高セキュリティーの囲いを紹介しよう。3匹の子豚にちなんだわけではないが、代表的で実践的な囲いを3つ紹介しよう。初めのうちは3つ覚えておけば、十分戦えるのだ。

矢倉囲い(やぐらがこい)

矢倉囲い

矢倉囲い

右図が矢倉囲いと名付けられた囲いである。「金矢倉」と呼ぶ場合もある。

材料コストは「金」2枚に「銀」1枚。これは標準コストといえるだろう。ただし、労働時間(手数)がかかることは覚悟しておかねばならない。こちらは高コストだ。

 
お城のやぐらが名前の由来

お城のやぐらが名前の由来

だが完成した場合、この矢倉囲いはとても頼もしい囲いとなってくれる。特に上部からの攻撃には耐久力がある。3匹の子豚で言えば、煙突からやってくるオオカミに強いのだ。そんな相手に対しては、コスト以上の効果を上げる囲いだと言える。非常口は左端に用意されている。

ちなみに、左辺に王がいる以上、自分の最大の攻撃力を持つ飛車は右辺からの攻撃をねらうべきだ。

名前の由来は、お城の「やぐら」である。 相手が上部からの攻撃をねらってきた場合は、この矢倉をおすすめする。

 

舟囲い(ふながこい)

舟囲い

舟囲い

右図が舟囲いである。図の状態での材料コストは「金」2枚に「銀」2枚、「角」も協力している。だが、将来的には、どちらか1枚の「銀」と「角」は攻撃に参加していくことになるだろう。とすれば、「金」2枚、「銀」1枚の囲いだとも言える。これならば、材料は矢倉と同じ標準コストとなる。労働時間(手数)は矢倉に比べて低コスト。もちろん非常口も上部に用意されている。

 
王が舟にのる

王が舟にのる

舟囲いは、中央周辺からの攻撃に特に力を発揮する。相手の飛車が中央突破をねらってきたら、舟囲いだ。もちろん自分の攻撃の柱である飛車は右辺から狙っていこう。

ちなみに、この名前は、王が舟に乗っている形からつけられたもの。わかりやすいように補助線を引いてみたが、いかがだろうか。

 

美濃囲い(みのがこい)

美濃囲い

美濃囲い

美濃囲いは、材料コストは「金」2枚、「銀」1枚で、矢倉や舟と変わらないが、労働コストが低いのが特徴だ。また、その金銀がお互いに守り合っていて、ロスがない。非常の場合は右辺から脱出する設計だ。

この囲いは左辺、つまり横からの攻撃に強い。相手がそのような攻めできたら、迷わず、美濃囲いだ。こちらの飛車も左辺に展開させよう。

名前の由来については、定かではないものの、美濃国出身の棋士が創出したからという説がある。

 

お出かけまえに鍵かけて

ようするに、これである。今回のガイドは、王という宝を守るセキュリティーにスポットを当てた。3匹の子豚のように、いつもいつもレンガの家が良いわけではない。また、オオカミがどこからやってくるかわからない。壁を壊して侵入しようとしているのか、はたまた、煙突からねらっているのか。それぞれに対応できる囲いが必要だ。今回ガイドした3種の囲いを実践で使いこなし、オオカミどもをやっつけてほしい。めざせ5級、その日は近い。

【編集部おすすめの購入サイト】
Amazonで将棋関連の商品をチェック!楽天市場で将棋グッズをチェック!
  • 前のページへ
  • 1
  • 2
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます