8つの初期キリスト教建築物群
テオドリック廟。ローマ時代の石積技術を利用して組み上げられた廟堂で、天井は一枚岩でできている。ここにはキリスト教芸術の影響がほとんど見られず、モザイクも存在しない
■サン・ヴィターレ聖堂
殉教者聖ヴィターレに捧げられた八角形の礼拝堂。6世紀前半、東ゴート王国時代の起工で、547年前後に一応の完成を見るが、その後ビザンツ皇帝ユスティニアヌス1世やベネディクト会によって改修された。内陣(聖職者の空間)や至聖所(祭壇や聖餐台のある場所)にはビザンツ芸術を代表する見事なモザイクが残されており、ユスティニアヌス1世と皇后テオドラの姿も描き出されている。
■ガッラ・プラキディア廟
ガッラ・プラキディア廟のモザイク。ギリシア国花でもあるアカンサスの森で泉の水をすするシカの図。『旧約聖書』の一節
■ネオニアーノ洗礼堂(正統派洗礼堂)
450年頃、オルソ司教によって建造されたラヴェンナ最古の教会堂のひとつ。八角形の洗礼堂で、内部は美しいモザイク、レリーフ、大理石で埋め尽くされている。天井の円形装飾メダリオンはヨハネの洗礼を受けるイエス像。後述のアリアーニ洗礼堂のものと同じ場面を描いているので、見比べるとおもしろい。その真下に洗礼盤があり、ここに聖水を入れて洗礼を行った。
■アルチヴェスコヴィーレ礼拝堂(聖アンドレア礼拝堂)
500年前後にペトルス司教の私邸に建造されたギリシア十字形の礼拝堂。ラヴェンナに残る教会堂のうち、唯一プライベートで建てられた。初期はイエスに捧げられたものだったが、のちにイエス最初の弟子のひとりアンドレア(アンデレ)を奉じた。大理石の装飾や天井のモザイク画が特に美しい。ネオニアーノ洗礼堂と隣接している。
■サンタポリナーレ・ヌオヴォ聖堂
サンタポリナーレ・ヌオヴォ聖堂のモザイク。かつてこの地に存在したというテオドリックの宮殿が描かれている
■アリアーニ洗礼堂(アリウス派洗礼堂)
6世紀、テオドリックがアリウス派の洗礼堂として建てたもの。八角形のレンガ造りで、モザイクは天井のドーム部分に残されている。シンプルで質素ながら、荘厳さでは他の建物に負けていない。天井のモザイク画はヨハネの洗礼を受けるイエス像。アリウス派は「父なる神、子なるイエス、および聖霊は同一である」という三位一体を認めず、イエスを人と解釈したため、より人間らしく描かれている。
■テオドリック廟
テオドリックが亡くなる直前に自ら築いた霊廟。526年に没すると石棺に収めて祀られたが、異端者の墓であるとして561年に遺体が取り除かれた。円形2階建ての珍しい建物で、ローマのキリスト教建築やビザンツ建築の影響をほとんど受けない東ゴート独自のスタイルで築かれている。
■クラッセのサンタポリナーレ聖堂
ラヴェンナ中心から約8km、クラッセという街にある聖堂。6世紀前半に建てられた典型的な初期キリスト教の3廊式バシリカで、アプス(後陣)には預言者モーセ、大天使ミカエルとガブリエル、イエスらを描いた美しいモザイクが残されている。サンタポリナーレ・ヌオヴォ聖堂ほどモザイクはないが、ヌオヴォ聖堂の天井が改修を受けているのに対して、こちらはオリジナルがそのまま伝わっている。