―取引事例比較法とは―
例えば、あるマンションの1室を鑑定評価するとします。皆さんならば、その価値をどのように評価しますか?
真っ先に思いつく手法は、取引事例比較法だと思います。
まず、そのマンションにおける別の部屋が、“いつ”・“いくら”で取引されたのか、といった情報(この情報のことを取引事例といいます)を多数収集します。この取引価格を元に、対象の部屋と取引事例とを比べ、両者の有利な面や不利な面を考慮し、対象の部屋の価格を推定することができます。
同じマンションの中から、取引事例が入手することができない場合には、範囲を広げて周辺のマンションにおける取引事例を収集し、同様に比較して対象の価格を推定することができます。
-原価法とは-
取引事例比較法は、あくまで不動産の価値に対する1つの見方です。続いて、2つ目の見方である原価法の内容をみていきましょう。
原価法は、「今、この不動産を作ったらならば、いくら位で作れるものなのか?」といった観点から、不動産の価値を推定する手法です。
具体的には、まず、マンションの敷地全体の価格を求めます。この場合、敷地全体の価格は、周辺における土地の取引事例や公示価格等から推定します。
次に、マンション1棟の建物価格を求めます。中古の建物の場合には、新築価格から中古である度合いを引き算して査定します。
こうして求められた、(敷地全体の価格+1棟の建物価格)の合計額を、対象である部屋に配分します。配分の方法にはいくつかありますが、評価人が合理的と思われる方法が採用されます。
例えば、1棟のマンション中に、10戸の部屋があったとします。いずれも、同タイプで面積は50m2だったとします。50m2×10戸なので、合計では500m2となります。
単純に、この面積割合を配分方法として採用しますと、(敷地全体の価格+1棟の建物価格)÷500m2×対象の面積50m2と計算することで、対象の部屋へ配分することができます。
―収益還元法とは―
不動産の価値に対する3つめの見方が、収益面から見る手法です。
まず、対象の部屋を賃貸することを想定します。不動産を賃貸すると家賃収入が得られます。家賃収入は周辺の家賃相場から推定できますので、1ケ月の家賃×12ケ月で年間家賃収入を計算します。
家賃は、いったんは貸主の下へ入金されますが、その全てが手元に残る訳ではありません。つまり、賃貸には経費が伴います。例えば、管理を管理会社に頼んでいれば“管理費”が必要となりますし、修繕にもお金が必要となります。その他にも、不動産を保有していると、固定資産税や都市計画税といった税金も支払わなければなりません。さらに、火災保険にも入らなければならないでしょう。
こうした、経費を差引いた金額が、手元に残る金額、純粋な家賃収益です。この家賃収益からの“逆算”で不動産の価値を推定する手法が収益還元法です。高い家賃収益を上げる不動産ほど高い価値とされ、逆に、低い家賃収益しか上げることができない不動産ほど低い価値とされます。
実務上、収益還元法にはいくつかの手法があり、個別案件に最もふさわしい方法が採用されます。繰り返しになりますが、その1つの手法がDCF法です。
鑑定評価の考え方をみてきたところで、今回はここまでです。
DCF法の具体的な内容は、次回No.2で解説します。
お楽しみに。
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鑑定評価とDCF法(No.2)
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