「土地活用」で社会貢献を考えるオーナーさんが増えています  

最近、私が出会うオーナーさんに感心させられることがあります。2棟3棟と物件をお持ちの方に多いのですが、収益だけを重視するだけではなく、社会的に役立つ土地活用にチャレンジしたいと希望される方が、けっこういらっしゃるのです。

次の物件を建てるにしても、所有物件を改修するにしても、資産を自分のためにだけでなく、誰かの役に立たせたいという方たちが、確実に増えてきているようです。

今回は「土地活用」を社会貢献という視点から考えてみたいと思います。


自立をサポートする障害者自立支援法とは

盲導犬でのお手伝い

お手伝いには、さまざまな方法があります

私がまだ若いころですが、アルバイト先のパートさんとの会話で胸がつかれる気持ちになった話しがあります。

何でも一生懸命な頑張り屋さんの彼女。ある時、私が彼女に、「いつも頑張っておられて、偉いですね」、と声を掛けさせていただいたとき、彼女は、「実は、私には障害をもつ子供がいて、とにかく頑張らなきゃって……。毎日が大切なんです」「いずれお迎えは私の方に先にやってくるのでしょうが、息子を残したままでは、死んでも死に切れない気持ちです」と涙を流されました。

ある取引先との食事会で、ビールの注がれたグラスに手をつけない方に、「アルコールは苦手ですか?」と伺ったところ、「自分が健康で長生きしないと、障害を持つ子供が困るだろうから。私はタバコもお酒もコーヒーも、子供に障害のあることが判った時にやめたんです。でも本当はお酒が大好きなんですよ……」と言われたことがあります。

障害を持つ親御さんたちの気持ちは、非常に切実です。家庭の中だけでのサポートには限界がありますので、社会全体での取り組みが必要とされています。

「障害者自立支援法」は、障害者の方がそれぞれの能力や適性に応じた一定の役割を社会の中で果たすことができ、自立した生活を送ることができる世の中の実現を目指して、2006年4月に制定されました。

障害者の方にはそれぞれの能力に応じて、自分で生きていけるだけの力を身につけてもらい、そのためのサポートを社会全体でしていこう、という取り組みがこの法律の制定を機に活発になりつつあります。

健常な皆さんの力で、障害を持たれている方々を支えていける、そんな社会にしていこうというビジョンがあるのです。


足りない障害者のための住宅。官民両方からのサポートを。 

障害とひと言でいっても、知的障害、精神障害、身体障害の3種類があり、程度も各々です。障害者の総数はおよそ744万2千人、なんと日本の全人口の割合では約5.8%で、実に17人に1人は障害を持っていることになります。決してマイノリティ(少数派)とはいえません。

しかし、今もって障害者の方たちのための住宅は充分に用意されているとは言えない状況です。法律が制定されてからも、障害者用住宅は供給が少なく、多くの方たちが自宅で待機されています。

しっかりとしたニーズがあり、社会的な要請もあるのです。現状を改善するために、良質な地域のグループホーム等の環境整備は急務で、官民両方からサポートしていく必要があります。

厚生労働省と国土交通省が省をまたいで連携し、障害者の住まいの確保のための取り組みを積極的に行っています。グループホームやケアホームなどの整備をはじめとする障害者の住まいの場の確保に向けて、地方公共団体に対して両省が連名で「障害者の住まいの場の確保のための福祉部局と住宅部局の連携について」という文章を通知しています。

また、障害者でも入居可能な民間賃貸住宅の確保を進めるため、自治体やNPO法人・社会福祉法人、及び不動産仲介業者等が連携して、賃貸住宅の登録情報の提供と居住支援を行う「あんしん賃貸支援事業」が平成18年度から始まっています。


専門家による障害者施設の安定供給への取り組み

私の所属している社団法人東京共同住宅協会でも、障害者の方のニーズにマッチした住宅の供給を目的として、厚生労働省・東京都・社会福祉法人・運営事業者等にお集まりいただき、福祉施設の安定供給に関する実務研究会を、13回ほど開催し、具体的な研究発表の場を設けています。

冒頭でお話ししたような障害を持たれた親御さんが、安心して子供を委ねられる福祉住宅を作っていきたいと心から考えています。


【障害者施設等の安定供給研究会のテーマ】

  •  福祉関連施設の企画・運営の実務と現状の問題点、解決手段について。
  •  各種行政の助成・補助制度の活用促進について。
  •  供給者(土地・建物提供者)への告知方法(提案手法)とシステム構築について。
  •  福祉関連施設・業界研究(グループホーム・ケアハウス・関連施設etc)
  •  「精神障害者」「知的障害者」「身体障害者」施設の研究と「あんしん賃貸制度」。
  •  具体的事例発表(実際にモデルケースを企画運営してみる) その他

障害者のグループホームとは…

障害者の方々が「世話人」等の支援を受けながら、地域のアパート、マンション、一戸建て等で生活する居住の場です。障害者自立支援法により、障害の程度により共同生活援助(グループホーム)と共同生活化介護(ケアホーム)の2種類に分けられました。

運営する団体としては、社会福祉法人やNPO、民間企業等です。これらグループホーム等の事業者に対しては、国の給付費に加えて東京都独自の運営費助成が行われています。また運営費の外に東京都では建物の建築や回収に対する補助もあります。

具体的に、どんな建物を想定できるかというと、建物30坪、土地30坪程度から実現可能です。


【グループホーム建設の建築的要件】

  •  アパート・マンション・一戸建て等でいずれも可能
  •  1ユニット2人~10人(既存の建物活用の場合は20人まで、事業所の要員は4人)。但し、運営事業者の体制や採算を考慮して計画する必要あり
  •  個室1人あたり、7.43平方メートル(4.5畳)以上、共用スペースとしては、玄関、台所、トイレ、洗面所、浴室、居間(食堂)、他スタッフ控え室などをユニット毎に設ける
  •  近隣の別棟も含めた利用が可能(サテライトスペース可)
     

周辺住民の理解も大切 

障害者の方の住宅をつくるうえで、大切なことが周辺住民の方たちの理解を得るということです。運営事業者がどのような施設になるのかをしっかりと説明し、「実は安心で、地域にも迷惑をかけない社会貢献型の施設である」と事前に理解していただくことが大切です。

中野区にある『Eハイツ』の例はとても参考になります。
もともと高齢者住宅として使用されていた2階建て木造アパートを改修し、1階を身体障害のある方、2階を知的障害等のある方のグループホーム・ケアホームとして開設しました。

開設にあたっては、中野区の職員の方々がご近所を一軒一軒回りました。その効果もあり、近所の方が好意で食事を作ってくれるほど協力的です。

1階の風呂とトイレにはリフトを付け、車いす利用の方にも使いやすい環境を整えました。この例は、地域の中に受け入れられ地域に馴染んだ経営がなされている好例だと言えるでしょう。
 

障害者グループホームの特徴と留意点 

高齢かつ障害者

高齢の障害者も増えてきます

どんな立地が望ましいかと言えば、利便性のいいところです。
特に作業所となる大型の工場に近いところ、介護サポーセンターが近いところ、スタッフが通いやすいところ等々です。立地条件の悪いところでのご相談が多いのですが、アパート経営が成立するような場所でチャレンジしていただきたいというのが私の願いです。

最後に障害者グループホームをつくる際のメリットと留意点を紹介します。

メリットは、

  •  障害者福祉に貢献できるということ。
  • 長期借上げなのでその期間内は空室のリスクがないということ。
社会福祉法人等の経営は安定しているので長期安定した運用が期待できること。

留意点としては、
  •  期間満了や途中解約などの際、他の用途に転用しづらいこと。
  •  賃料の改定がしづらいこと。
  •  消防法等に対応した処置が建物に必要であること。
  •  入所する方々の可処分支出には限度があること。
  •  運営者の見極めに留意が必要であること。
いずれにしても現状では制度自体が認知されておらず、オーナーさんや近隣住民の方への情報が不足しています。今後は対策として、オーナーや利用者、運営者等の当事者の間に立って、契約内容などをチェックし随所で調整できる、専門家のサポート体制を強化していく必要があるでしょう。

私の関与している団体でも、社会貢献型の土地活用の相談を受けています。
障害者の方々がもっとイキイキと暮らせる世の中になるよう、オーナーの皆様もお力を貸していただけませんでしょうか?
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