土地活用のノウハウ/土地活用の基本とテクニック

けちけちオーナーさんの悲劇。維持管理と修繕計画

賃貸物件とは、何もしなくてもお金が入ってくる「打ち出の小槌」ではありません。ご自分の物件に愛情を抱いて手間をかけることをせず、目先の修理費用や保険料を惜しんだために、結果として大きなコストを負担せざる得なくなることもあるのです。一方、目先では損をしたようでも、最終的には大きな得になるおとぎ噺のような話もあります。今回は、オーナーさんの建物の維持管理と修繕計画についてお話します。

谷崎 憲一

執筆者:谷崎 憲一

土地活用ガイド

けちけちオーナーさんの悲劇 

頑固なオーナーさんの例

他人の意見には、耳を傾けましょう

賃貸物件とは、何もせずともお金が入ってくる「打ち出の小槌」ではありません。建物の維持と管理をきちんと行わないと、思ってもみない悲劇を生んでしまうこともあります。

代々木にお住まいのあるオーナーさんの賃貸アパートで、大きな事故が起きたことがありました。こちらのオーナーさんは70歳前後で、私のセミナーにもよく顔を出されていた方です。

性格的にもとても良い方なのですが、それがある日、「困ったことがあるんですが」と私のところに相談に来られたのです。「どうされましたか」と聞くと、「弁護士を紹介していただけませんか」とおっしゃいます。

聞けば所有している賃貸アパートの2階の鉄製階段と外廊下が腐食して落下し、郵便配達員が重傷を負ったというのです。この方は50歳代で、配達中に鉄製階段とともに2階から落下して頚椎と背骨を骨折し、半身不随になってしまったのです。

現在は入院中なのですが、オーナーさんがお見舞いに行っても、「来ないでほしい」と面会を拒否していて、何度行っても会ってくれないとのこと。勤め先の郵便局の総務を窓口にして、全てそちらを通して話してほしいと言われたそうです。オーナーさんとしては、いずれ損害賠償の請求があるだろうから、弁護士に相談したいとのことでした。

私は、まず事故のあった現場を訪ねました。問題の建物は玄関口が共有の2棟の古いアパートでしたが、まず驚いたのは敷地の様子です。身の丈ほどもある雑草が一面に生い茂り、築20年という建物が荒地の中に佇んでいました。茂った雑草の中には、通りがかりの人たちが放り込んだらしい空き缶やゴミ袋が散乱しています。

建物自体も悲惨な有様でした。壁面には雨だれの跡がサビの筋となって地面まで伝わり、建物全体がどす黒く汚れています。オーナーさんはこの20年間、全く手入れをしていなかったのでしょう。
崩落したのは2棟にそれぞれついている鉄製の外階段と、同じく鉄製の外廊下の1つで、2階のほぼ半分が落下していました。鉄部の塗装が剥げたまま塗り直さずに放置していたので、腐食が進行して内部がぼろぼろになってしまったのでしょう。衝撃で外壁は大きく破損し、また落下した廊下の下には洗濯機置き場があって、洗濯機が押しつぶされていました。生々しい血痕も残されていました。

2階の部屋へ上がるための玄関部分にあたる廊下が落下してしまったため、2階にいた入居者は外に出ることができなくなり、消防署のレスキュー隊に助けられて脱出したそうです。しかし、今度は部屋に戻ることができません。

この入居者は女性でしたが、私たちがとりあえず仮住まいを提供することにしました。オーナーさんは、この女性から家賃はもらわず、逆に仮住まいの家賃を持つことになりました。

女性入居者からは、冷蔵庫の中身がそのままになっているということと、衣類なども取りに戻りたいという希望があり、たまたま私たちのスタッフに、登山経験の豊富な女性がいたので、彼女に手伝いをお願いして、避難用の梯子を2階の部屋に掛け、やっと自分の部屋に戻ることができました。

部屋に入ると、なぜかブレーカーが上がって電気が切れており、冷蔵庫の中の食べ物は全て腐っていました。当然のことですが、入居者の女性は大変お怒りの様子でした。
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