土地活用のノウハウ/土地活用の基本とテクニック

けちけちオーナーさんの悲劇。維持管理と修繕計画(3ページ目)

賃貸物件とは、何もしなくてもお金が入ってくる「打ち出の小槌」ではありません。ご自分の物件に愛情を抱いて手間をかけることをせず、目先の修理費用や保険料を惜しんだために、結果として大きなコストを負担せざる得なくなることもあるのです。一方、目先では損をしたようでも、最終的には大きな得になるおとぎ噺のような話もあります。今回は、オーナーさんの建物の維持管理と修繕計画についてお話します。

谷崎 憲一

執筆者:谷崎 憲一

土地活用ガイド

あなたは建物への愛情をお持ちですか 

建物に愛情を持ちましょう

自信が持てる建物にしたいものです

賃貸経営は、オーナーさんがご自分の所有する物件に対して愛情を持つことがとても大事です。子供の身なりや振る舞いをみれば親の愛情が見てとれるように、建物を見ればオーナーさんの愛情の有無が感じ取れるものです。

経営がうまくいかないオーナーさんに一番欠落しているものは、私は「愛情」だと思っています。

愛情は建物を良い状態に保つモチベーションになります。きちんと管理しようという気にならないのは、自分の所有する建物に対して愛情がないからです。もし愛情がなければ、建物に必要なお金をかけることもせず、「もったいない」で済ませてしまいます。

先のケースとは反対の事例をご紹介しましょう。家賃5万円で、20世帯が入るアパートがありました。この物件のオーナーさんは、自らの所有するアパートをとても大事に扱っていました。日頃から手入れを怠らなかったので、このアパートは築20年を経てもまだまだ使える状態でした。入居者も絶えず、満室が続いていました。ところがこのオーナーさんは、築20年の時点で1000万円もかけて大型のリフォームを行ったのです。

多くの人は「なんでそんなことをするんだ」と思うでしょう。何もしなくても満室なのだし、いくらお金をかけたとしても、今の入居者がこれまでより高い家賃を払ってくれることはないのですから。ですが、このリフォームは賃貸経営上、効果絶大なのです。入居者から見れば、自分たちが払っている管理費をはるかに越えるお金をかけてリフォームしていることが明らかです。

ですから、すごく得をしている気分になります。そうなると、管理についても誰も文句を言わなくなります。そしてリフォームで物件としての魅力が一段と増したので、退去する人が出たときにもすぐに次の入居者が現れます。

さらに大きいのは、リフォームによって賃貸物件としてのこの建物の寿命が延びたことです。

築20年のアパートでしたが、1000万円かけたリフォームによって、さらに20年は働いてくれるアパートに生まれ変わったのです。問題が出るまで何もせず、問題が起きたときにも最低限しか手を加えないオーナーさんだったら、アパートは築30年ほどで老朽化し、取り壊すことになっていたでしょう。

ところがお金をかけてリフォームしたことで、築20年からさらに20年間使えるようになったとすると、その差は10年間になります。このアパートから得られる賃料は月に100万円、1年間では1200万円。10年間では1億2000万円です。つまりこちらのオーナーさんは、1000万円を投じることで、しなかった場合と比べて1億2000万円の収入を手に入れた計算になるのです。

目先では損をしたようでも、最終的には大きな得になる。まるでおとぎ噺に出てくるような話だとは思いませんか?それも結局は、オーナーさんの建物への愛情が生んだ結果なのです。
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