月が男性名詞で、太陽が女性名詞?
月、太陽から学ぶドイツ語の性
さらに個々の性について言えば、
Sonne(ゾネ/太陽)が女性で、Mond(モーント/月)が男性。
Rock(ロック/スカート)が男性で、Krawatte(クラヴァッテ/ネクタイ)が女性。
つまり、「男らしさ」「女らしさ」についての一般的な連想に沿わなそうな例もあるわけです。
そして男性・女性に加えもう一つ、ドイツ語にはKind(キント/子供)やHaus(ハオス/家)のような、中性名詞もあります。
というわけで、ドイツ語名詞は性によって、男性名詞(Maskulinum、略称m.)、女性名詞(Femininum、略称f.)、中性名詞(Neutrum、略称n.)の3種に分類されるのです。
<目次>
ドイツ語の性の判別
これら名詞の性は、基本的にその都度覚えてゆくしかありません。男性・女性・中性名詞はそれぞれ単数1格でder(デア)、die(ディー)、das(ダス)の定冠詞をとるので、der Vater、das Kindのように、定冠詞とセットで覚えてゆく、というのが常道とされます。ただしドイツ語名詞の性にも、ある程度の規則性が確認されています。例外も少なからずあるものの、その規則ないし傾向を知ることは、もちろん記憶の大きな助けとなるでしょう。
まず、性別が、人間や動物の自然なそれに一致する場合。これは分かりやすいですね。
一つ、Lehrerinの語尾の-inに注意してください。これは男性名詞の女性版を作る語尾で、職業の他、Japaner(ヤパーナー/日本人男性)→Japanerin(ヤパーネリン/日本人女性)のように、国籍等でも用いることができます。
der BMWなら車、die BMWならバイク
語の属する意味領域に応じて性が定まる場合もあります。国名など地域名には普通は冠詞を付けませんが、das vereinigte Deutschland(統一ドイツ)など、付加語をとる場合は一般に中性名詞として扱います。ただしdie USA(ウーエスアー/アメリカ合衆国)のように複数扱い、die Schweiz(シュヴァイツ/スイス)のように女性名詞の例もあるので注意。
酒類は基本的に男性ですが、これも重要な例外として中性名詞のdas Bier(ビーア/ビール)があります。
お尻の形で、性の区別
続いて、性の判別に役立つ後つづりの例を。ドイツ語にある程度親しんだ方なら、特に女性名詞を作る語尾(-heitなど)に重要なものが多いとお分かりでしょう。-eが一般に女性の語尾ということで、Sonne(太陽)やKrawatte(ネクタイ)が女性名詞というのもとりあえず解せます。
中性名詞の語尾-chenや-leinは、「ちいさいもの」を意味する後つづりで、これをとればMädchenやFräuleinのように感覚的には女性である名詞も、中性とされるわけです。
性の決め手は?
ではこうした名詞の性は、一体どうやって決められるのでしょうか? 決め手の一つには、外来語・借用語の場合、由来する言語での性を引き継ぐ、というパターンがあります。例えばドイツ語には同じつづりながら性と意味が異なるdas Moment(モメント/契機)とder Moment(瞬間)があるのですが、前者の由来はラテン語の中性名詞momentum、後者はフランス語の男性名詞moment。それぞれ借用元の性を引き継いでいるわけです。
もう一つ、新来の単語では、既存の単語の影響で性が決まることもあります。E-Mailは、die elektronische Nachricht(電子メッセージ)のことなので女性、といった具合にです。
新たに取り入れた単語の性が、既存の同義語によって影響され、「性転換」が起きてしまう例も見られます。例えば「ベルリンの壁」でお馴染みのdie Mauer(マウアー/壁)。元々ラテン語の男性名詞murusを借り入れたもので、その性を引き継ぎ男性名詞であったのが、ドイツ語相続語である同義語die Wand(ヴァント)の影響で、女性名詞へと性を転じたのでした。
また、中には性が確定せぬままでいる名詞も。Curry(カリー/カレー粉)は男性・中性両方扱い、Joghurt(ヨーグルト)にいたっては、男性・中性・女性、全ての性で用いられています。
【関連サイト】
ドイツ語アブノーマル名詞集:ドイツ語名詞の性を覚えるための語彙集。
【関連記事】