西表島の秘境、船浮へ行こう！(2ページ目)

船浮の魅力

さて、ここからが本題。同じ島にありながら、陸路がなく、海からしかアプローチできない船浮とは一体どんな場所なのでしょうか？ 白浜港から船は内海を走ります。内離島を右に見ながら進むと、その先は船浮湾。湾を囲むようにぐるりと連なるのは深い緑色に覆い尽くされたジャングルの山々。この光景を一目見れば、山々を切り開いて道を作ることができないという事実にも納得です。
まるで山間の大河を進むように船が進むと、正面に見えるのが船浮港。この港を中心にこぢんまりとした集落があり、集落を抜けた反対側にはイダの浜と呼ばれる美しいビーチが広がるのが船浮です。その昔、船浮の先にも、網取、崎山、鹿川といった集落がありましたが、廃村となり、現在は船浮が西表島で一番奥に位置する集落となっています。西表島の代名詞となっているイリオモテヤマネコが最初に発見捕獲されたのは、ここ船浮でのことで、発見場所には碑が建てられています。
船浮の素晴らしさは、なんといっても手つかずの大自然との距離の近さ！ 亜熱帯のジャングルの森の中に、わずかばかり切り開かれた人が住める場所というのが船浮。ここから見える風景は、深い山並みと、海に浮かぶ無人島。船に乗って海岸線を走れば、すぐにマングローブの林へと景色は変わり、いつの間にか海ではなく川を渡っていることに気づきます。水辺に根をはるマングローブの木々の後ろには、亜熱帯の植物が鬱蒼と生い茂る山がそびえ、そこでは様々な植物や動物たちが互いに絡み合うように濃密な生態系を作り出しています。西表島の山は野生のイノシシが多く生息することでも知られ、毎年11月15日～2月15日の間はイノシシ猟が解禁となり、島人たちは山に入ってイノシシ猟を行ないます。離島に住む人々にとって、その昔、イノシシは貴重なタンパク源だったのです。
人の手が介入せず大自然のまま形を残すのはもちろん海も同じで、この辺りの海の素晴らしさといったら！ 整備されたリゾートの海ではない、自然本来の姿のまま目の前に広がる海の美しさはとても言葉では尽くせません。海は驚くほどに透明で、眩しいほど真っ白に輝く砂浜には人の足跡もなく、船の上から眺める珊瑚の海は玉虫色の光を放ち、時にウミガメがぽっくりと顔を出します。生命に満ち溢れる色鮮やかな珊瑚の森に訪れた旅人たちは驚きますが、これが地球本来の姿であることを船浮の人々は知っています。
船浮で目にする景色は全て、人の営みもまた大自然のサイクルの中に溶込んでいるべきだということを教えてくれるもの。自然の近くで生活するためには、自然をよく知らなければならないし、自然に合わせて生きることが基本。今のようにスーパーやコンビニがなかった時代、食べる物はもちろん、家の屋根の資材も、ロープや帚を作る材料も、薬も、生きるために必要な様々な材料を船浮の人々はずっと必要な分だけ自らの力で山や海から取って生活してきました。そして彼らはまた、決して取りすぎてはいけないこともちゃんと知っています。

船浮を訪れたらなら、ぜひそこで暮らす人々とも会話を交わしてみてください。集落の歴史や西表の島のこと、海や山の自然のこと……etc. きっといくつもの興味深い話を聞くことができますよ。

ちなみに船浮では、毎年4月に船浮音祭りというイベントが開催されています。船浮出身のシンガーソングライター池田卓氏の企画&プロデュースによる音楽際で沖縄出身のアーティストたちをゲストに迎え、ライヴを楽しめるイベントとして、また船浮の人々とそこを訪ねる人々との交流の場として注目を集めているので、こちらもぜひおすすめです。