死ぬまでに一度は見たい幻の花、サガリバナ

西表島の夏の風物詩、サガリバナのことをご存知でしょうか? 沖縄好きの旅人には「死ぬまでに一度は見たい憧れの花」としてよく知られていますが、なかには初めて聞く花の名前だという人もいらっしゃると思います。
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”幻の花”とも呼ばれるサガリバナの花が川面に浮かぶ様子

サガリバナは、亜熱帯のマングローブの川や湿地で、枝から垂れ下がるように細い雄しべが集まって丸いボール状の花を咲かせる美しい樹木。色は白からうすいピンク色で、その花姿はなんとも儚げです。たった一晩だけ花を咲かせ散ってしまう“一夜花”であることから、「幻の花」と呼ばれることも。

日本では沖縄や奄美地方に自生し、夏の訪れとともにぱっと妖精のように花を咲かせます。花が美しいので栽培されることもありますが、基本的には湿地を好み、ジャングルの山の水際といった人がなかなか足を踏み入れるのが困難な場所に群生するのが特徴です。


西表のジャングルを彩る幻想的な夏の風物詩

島のほとんどを亜熱帯のジャングルが覆い、手付かずの大自然の宝庫である西表島では、このサガリバナが群生する場所がいくつもあり、昔から島の夏を告げる風物詩となっています。といっても、西表島のサガリバナは、ジャングルを流れる川の奥深くに自生するので、島人であってもそう簡単に目にすることはできません。
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国道脇の道からすでに鬱蒼としたジャングルの西表島


サガリバナを見るためには、カヤックや船に乗ってマングローブが生い茂る川をのぼり、群生している場所を探すのです。サガリバナが見頃を迎えるのは毎年6月末となっています。

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このマングローブの川の奥のどこかにサガリバナの花がひっそりと咲きます

梅雨が明け、八重山の本格的な夏が始まったころ、西表島には幻のサガリバナを一目見ようと「サガリバナツアー」をお目当てとした旅人たちが多く集まります。


明け方のジャングルでカヤックを漕ぐ「サガリバナツアー」

サガリバナは夜に花を咲かせ、翌朝陽が昇るとともに花ごと散ってしまう花なので、「サガリバナツアー」と聞けば、夜に花を見に行くナイトツアーと思われるかもしれませんが、この島でサガリバナを見に行くのは明け方と決まっています。

というのも、ジャングルの川岸に自生するサガリバナが最も美しいのは、花が咲いているその瞬間ではなく、夜が明け、陽が昇るとともに花が咲き落ちた瞬間の姿だから。まだ原色の色彩が眠る明け方のジャングルで、川面一面に浮かぶうすいピンク色のサガリバナの花は、しばしば“桃源郷”という言葉で島人たちに語られます。

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細長い雄しべが集まったサガリバナの花


ゆっくりと水面を流れるサガリバナの美しさはとても筆舌に尽くし難く、まさかジャングルの奥地でこんなに可憐な花々に囲まれた光景に出会えるとは誰も想像できません。

そんな桃源郷を訪ねる「サガリバナツアー」では、ガイドさんによって多少の時間は異なりますが、明け方前、まだ真っ暗なうちに宿を出発し、河口からカヤックを漕いでジャングルの奥へと向かいます。

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カヤックを漕ぎ始めてしばらくするとだんだんと空が白みはじめます

サガリバナが一番美しいのはポトンと枝から咲き落ちてすぐ、あたりが少しずつ薄ぼんやりと白み始めた明け方のほんの一瞬なので、その瞬間を逃さないよう暗いうちに移動するのです。

そもそも、夜のジャングルに足を踏み入れるというのもほとんどの人にとっては初めての体験。眩しいほど月光に照らされ銀色に輝く夜の森の姿や、頭上に広がる満天の星空に、夜の森が意外にも明るく照らされていることに驚くかもしれません。

森の生き物たちの音に耳をすませながらマングローブが生い茂る川をぐんぐん奥へと進んでいくと、やがてどこからともなくほのかな甘い香りが漂ってくることに気づきます。その甘い香りは近くにサガリバナが群生していることを教えてくれるサイン。
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甘い香りに誘われた先にはサガリバナの木が

匂いに誘われるようオールを漕げば、満開の花を咲かせたサガリバナの木を見つけるはず。そして、ようやく夜が明けようと少しずつ空が白んでくるころ、この満開のサガリバナはひとつまたひとつと花を落とし始めるのです。

ポトン。静かな音が明け方のジャングルにひっそりと響きます。その音こそ、西表のジャングルの森に浮かぶ桃源郷の扉が開く合図。

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満開のサガリバナの下をカヤックで遊覧

 

梅雨明けの数日間がベストシーズン! サガリバナが幻の花と呼ばれる理由

サガリバナ自体は夏の間じゅう花を咲かせるものですが、西表島では台風がやってくると花のつぼみもろとも散ってしまうので注意が必要。梅雨が明けて開花がはじまり、その夏はじめての台風がやってくるまでの間、例年6月末から7月半ば過ぎくらいがサガリバナを見ることができるタイミングです。

サガリバナを見に行くためにはカヤックで川をのぼらなくてならず、また、花を落としたサガリバナが水面に浮く光景を楽しむためには潮の満ち引きが大きく関係することから、西表島でサガリバナを見るためのベストタイミングは、梅雨が明けて、サガリバナがじゅうぶんに開花した大潮とその前後数日と言われます。

正確には一年の間のわずか2、3日。サガリバナの開花と、潮の満ち引きと、月齢と、お天気とがぴったり合わさった、奇跡のような瞬間がサガリバナのベストタイミング。と聞けば、サガリバナが幻の花と呼ばれる所以がよくわかるのではないでしょうか? 

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可愛らしい花をいっぱいにつけたサガリバナの木
 

西表島以外のサガリバナスポットは?

ちなみに、サガリバナは西表島以外の場所でももちろん見ることができます。沖縄には、宮古島の添道や、石垣島・川平の林道、沖縄本島・名護の真喜屋(まきや)など、いくつかサガリバナの名所と呼ばれる場所が点在するので、梅雨明けの沖縄旅行を計画している人はぜひサガリバナを探しに出かけてみてはいかがでしょうか? 

この時期に西表島を訪ねる人は、ぜひとも明け方のマングローブの川に浮かぶサガリバナをカヤックで楽しんで欲しいもの。真夜中に宿を出て自分でカヤックを漕いでいくのはちょっと大変という人は、早朝、船で川を遊覧する「サガリバナツアー」もあるので、そちらを利用するといいと思います。

最後に、サガリバナの花言葉は「幸運が訪れる」だそう。幸運を求めて、この夏は西表島へ行ってみませんか?


おすすめサガリバナツアー

西表島カヌーツアー風車
西表島の山を専門にネイチャーツアーを行い、サガリバナツアーはプライベートツアーを専門としています。出発の時間帯や、カヤックでの移動時間等、それぞれの希望にそうよう細かなアレンジ対応が可能。現在HP上にはサガリバナメニューが記載されていないので、問い合わせフォームから問い合わせしてください。


西表島カヌーツーリングあたらす

西表島の大自然をカヌーやトレッキングで案内してくれます。サガリバナツアーでは朝4時に宿を出て8時に戻ってくるのが定番コース。


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