パン/パン屋さん取材レポート(東日本)

ダンディゾン【吉祥寺】(2ページ目)

10年後にも変わらず訪れてもらえたら。そんな想いで「10年後」と名付けられた吉祥寺のDans Dix ans( ダンディゾン )はこの春、10周年を迎え、新たな10年後へ向けてスタートを切りました。行列のできるパン屋さん、ダンディゾンの今をお伝えします。

清水 美穂子

執筆者:清水 美穂子

パンガイド


日本人にとってパンとは何か

はるきらり、春よ恋、キタノカオリ。ダンディゾンのプライスカードには国産小麦の名前が多く見られます。

「北海道の小麦の生産者との出会いやバイオダイナミック農場での農作業経験がありました。うちの店は妊婦の方や小さなお子さん連れのお客さまが多く、自分にも子供ができたこともあり、素材選びを大切に考えています。お客さん、問屋、製粉会社、生産農家、それらすべての顔を知ることができたらと思います。人と人との信頼関係が必要な時代だと思うんです。お互い顔を知っていて、その人のつくったものだから安心できる、ということが大切で、今の自分には自然なことなんです」。

木村さんは自然であること、を大切に考えています。彼にとって「自然」とはまず、土地のもの、つくった人の顔が見えるものを使うということでした。
木村昌之さん

木村昌之さん

そしてもうひとつ、「自然」であることがありました。それはいうなれば、日本人としての自然。

本格派のパンをつくる人は皆、フランスやドイツ、パンの歴史ある国のパンの製法を学びます。そして伝統のパンを極めれば、パン職人として高く評価されます。でも、ある日、気がつくのです。自分のつくるパンと、日本の食卓との距離に。このパンは日本人の日常の食事には合わないじゃないか?
ダンディゾンのパン職人チーム

ダンディゾンのパン職人チーム

「パンは米飯の代わりにはなりえない。欧風の食スタイルが入ってきても、パンは特別で、嗜好的な食べものである、という感覚は相変わらずそこにある。ぼくは日本人として、自然な生き方をしたいと思っています。家庭の食卓とパンの距離はどうしようもない。それは無理に合わせなくてもいいと思うんです」

普段思っていたことを、木村さんの口からしっかりとしたかたちで聞くことができて、わたしは大きく頷きました。
ショフェ

ショフェ

「ヨーロッパの伝統のパンをつくるのは勉強になるし、とても楽しい。その上で、日本人ならではの”おいしい”を大切にしたい。日常のパンとおいしさを追究したパン。パン屋として、そのバランスをとっていきたい。そしてこれからも、不必要なものをギリギリまで削ぎ落としたレシピで素材の生きたシンプルさを貫きたいと思います」。
人気のあんぱん、アカネ

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