銀行とリクルートでは、なぜこうも「風土」「人材」が違うのか?
ボトムアップ型組織の典型として、私も以前勤務していた銀行を例にとりましょう。大半の銀行のトップはサラリーマンであり、意思決定は一般的に下からの議論の積み上げにより上位に持ち上げられるスタイルがとられます。また、銀行は“信用を売る商売”であるが故に管理に管理を重ねた体質が身上で、制度やマニュアルで固められたプロセスを経て組織決定をみます。こうした流れからは、堅実で保守的な「風土」が醸成されることになります。「人材」も管理重視の結果、何よりも組織の一員であることが求められ、人事運用は制度・ルールに従っておこなわれるため抜擢人事はほとんどありません。個々人は着実な昇給・昇格をめざし努力する形になり、「人材」面においてもまた堅実で保守的な人間を多数生み出すことになります。銀行員が“お堅い職業”と言われる所以は、お堅い人ばかりが集まってくると言うこと以上に、こういった商売柄の組織管理に由来する「風土」に「人材」が染まった結果でもあるということがお分かりいただけると思います。
トップダウン型組織の例としては、故江副浩正氏のオーナー企業としてスタートした黎明期のリクルートを挙げておきましょう。江副氏の強いトップダウン型リーダーシップの下、氏が掲げた「誰もしていないことをする主義」が深く組織内に浸透。リクルートブックにはじまり、住宅情報、とらばーゆ、じゃらん等々、目新しいヒット企画の数々は、江副社長体制での企画に対するトップダウンでの即断即決決裁方式に誘引されたチャレンジャブルな「風土」が生み出した成果でもあるのです。
このようなリクルートの組織「風土」はまた、チャレンジャブルな「人材」を多数輩出することにもつながります。新規事業は、独自の基本的に社内カンパニー制度によって独立採算に導かれ、より一層「人材」の独立心をも育てることになります。さらに、トップの考え方を反映した「フレックス定年制度」などの制度的な後押しを受けて、組織を飛び出して活躍することを目標として働く「人材」が多く育つ環境に至っているのです。
銀行とリクルート、同じように大きな企業組織でありながら、トップ「人材」の考え方や組織の歴史等に依存する「風土」、さらにその「風土」が生み出す「人材」はどうして全く異なるものになるのかがお分かりいただけましたでしょうか。