音楽も物語も激しくスリリング!
悪巧みしてるのに楽しくなっちゃって…
ソンドハイムは日本だと曲の難しさに焦点を当てられがちな気がしますが、作詞・作曲両方を手掛けているので詞の面白さにもぜひ注目してみてください。1幕ラスト、死体をパイにしちゃえば…とミセス・ラヴェットが思いつくナンバー「牧師はいかが」は、こんな職業の人はこんな味(文字にするとアンモラルで恐縮ですが)と、ブラックでシニカルさ満載、ぞっとしつつもたまらない可笑しさです。
人間ドラマを音符で描く、天才ソンドハイム
スウィーニー・トッド役の市村正親さんはダンディ。
興味深いことに、ソンドハイム自身、『スウィーニー・トッド』は映画『戦慄の調べ』(1945)とその音楽を手掛けたバーナード・ハーマン(作曲家。ヒッチコック映画の音楽で知られる)へのトリビュート作品だと記しています。『戦慄の調べ』は不協和音を聞くと凶暴な発作を起こすクラシックの作曲家を主人公としたサイコスリラーで、音楽が強烈に素晴らしい。少年時代のソンドハイムに大きな影響を与えた音楽のひとつでもあります。
演技派キャストが舞台上で火花を散らす
ミセス・ラヴェット役の大竹しのぶさんはキュート。
演出は宮本亜門さん。ソンドハイムと交流があり、芝居をとても大切になさる演出家です。亜門さんは「とにかく『スウィーニー・トッド』という作品が好き!大好き!」と、熱い思い入れを持っていらっしゃいますから、一層進化したドラマを見せてくれるはず。
トバイアス役の武田真治さん。純真でいたいけ。
武田真治さんは純粋な少年トバイアス役で、初演でも評価が高かったはまり役。新しいキャスト、柿澤勇人さんと高畑充希ちゃんは、フレッシュで甘酸っぱく、どこか危うささえ感じさせてくれるカップル。芳本美代子さんは、乞食女という今までにない役どころで魅せてくれます。