児童期に対応する2つの心理的側面は「勤勉性」と、それと対をなす「劣等感」です

児童期は子供心に社会の一員として、社会の中での自分の役割といったコンセプトの芽も生まれる頃。以後の人生で自分の実力を存分に発揮していく上で、この時期、獲得すべき「勤勉性」はしっかり獲得したいところ

人の心理社会的発達は著名な発達心理学者であった米国人のエリク・エリクソンによれば、ライフサイクルの折々で発達課題を順調にこなしていく事が大変重要です。

今回は、エリクソンが提唱した、人の心理社会的発達に関する著名な理論の中から、人はその人生の折々で、いかなる発達課題をこなす事になっているのか、また、そこでいったん、つまずくと、その後、どのような心理的問題が生じやすくなるかを、前回、取り上げました幼児後期の次の段階である児童期を重点的に解説いたします。

児童期における心理社会的発達の意義 

今回、取り上げる児童期は、時期的には5歳くらいから13歳くらいまでで、エリクソンが提唱した、人の心理社会的発達における8つの発達段階のうち、第4段階になります。この時期に対応する2つの心理的側面は「勤勉性」と、それと対の関係をなす「劣等感」となっています。

児童期は、子供が幼児後期(3歳くらいから5歳くらいまで)の発達課題である、同じ年頃の子どもたちの輪に入っていき、幼児後期特有の心の葛藤であるオイディプス・コンプレックスを解決して、小学校へあがり、以後、本格的に始まる学校生活にスムーズに溶け込んでいく時期です。

この発達課題を無事クリアした子供は、この時期に対応する2つの心理的側面のうち「勤勉性」を獲得し、以後の人生で自分の実力を存分に発揮していく大きな力になります。しかし、もしも子供が学校でいじめられるなどして、学校生活につまずいてしまうと、以後の人生で、もう一方の心理的側面である「劣等感」が強まる傾向があり、子供が持つ本来の能力が十分、伸ばし難くなってしまう可能性があるだけで無く、場合によっては、それが大人になってからの、心の病気のルーツになってしまう可能性もあります。

児童期に芽生えた劣等感は心の病気につながってしまう事も

児童期に芽生えた劣等感は、場合によっては、その後の心の健康を脅かす要因になり、心の病気につながってしまう可能性もあります。例えば、「社会不安障害」。別名「対人恐怖症」とも呼ばれる、その名の通り、対人状況で生じる、著しく強い不安感が特徴的な病気などがそう。初対面の人と握手をする際、手が震えてしまい、どうしても握手ができないといったような症状が現われますが、その心理的背景には往々にして、心に深く根付いてしまった劣等感から出てくるものといえます。

もちろん劣等感は、その人にネガティブなインパクトを与えるだけとは限らず、人によっては、劣等感をバネに勉学や仕事に励みに励んで大成される方もいらっしゃいますが、一般に、劣等感は物事に対して消極的になってしまう大きな要因となります。

この児童期に続く思春期は、自分というアイデンティティの基盤がしっかり形成される時期。何事にも積極的にあたっていく事が望ましいこの時期に、もしも物事に消極的になってしまえば、自分のやりたい事をやるチャンスを逃してしまうといった弊害が生じやすく、そのため劣等感が一層、強まり、ますます物事に消極的になってしまうという悪循環に陥る可能性もあり、場合によっては、それが上記の社会不安障害など心の病気につながってしまうのです。

児童期を乗り越えていくヒント 

最後に今回解説いたしました、人の心理社会的発達の、第4段階の内容を元に児童期の育児のヒントをまとめてみます。

まず、この時期に子供を持つ親御さんは、児童期の発達課題はいったい、いかなるものであるかは、是非、頭に置いていただきたいもの。子供が、それまでの生活の主な場であった家を出て、小学校に上がり、勉学の基礎を身に付けていくかたわら、同じ年頃の子どもたちとスムーズに交わり、子供ながら自分の役割を果たした時に喜びを覚えるようになる事は、以後の人生で自分の実力を存分に発揮していく基盤になります。

子供がこの発達課題を順調にこなしていくためには、時に親御さんの力がどうしても必要になる場合もあるもの。例えば、もしも子供が学校でいじめられているような事態に気付いたら、問題が深刻化していく前に、できるだけ早く介入して、何とか円満に問題が解決するように手を打っておきたいものです。

児童期は子供心に何らかの劣等感が寝付きやすい時期である事には、親御さんも注意が必要です。ご家庭ごとに、ご家庭ならではの子供への接し方があるものですが、劣等感の芽が子供の心にしっかり根を下ろさないためにも、例えば子供の行ないに何か良い点があれば、親御さんは積極的に、それを誉めてあげて、子供に自信を付けさせてあげるといった事は良い事だと思います。また、自分の得意分野をしっかり磨いていく事は、劣等感の辛さを最小限に抑える有力な方策。言わずもがなでしょうが、親御さんは、お子さんの得意分野がすくすくと伸びていくようにしっかり力を貸してあげたいものです。

児童期がはるか遠い過去になってしまった大人の方でも、小学生の頃、友達に劣等感を覚えた時の事は、大人になった今でも意外にはっきり覚えているもの。例えば、友達が親から買ってもらった鉄道模型を目の当たりにして、自分も無性に欲しくなり、親にねだったところ、つれなくされてしまったなんて事は、大人になった今では笑って済ませる事でしょうが、人によっては、児童期に芽生えた劣等感を引きずってしまう場合だってあります。

私たちが暮らす、この現代は大変な競争社会になっており、この競争社会を無事、乗り切っていくためには、チャンスがあれば逃さず、自分の力を存分に発揮していく事が、きわめて大事になっていると思います。

もしも、何らかの劣等感のために自分本来の力を充分、発揮できていないと、日々、お悩みの方は、劣等感の苦悩が不合理なほど強まっている可能性もありますので、カウンセリングルームなどでカウンセリングを受けてみる事なども是非、ご考慮してみてください。
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