一方、低文脈文化社会では、「あ・うん」のやり取りが高文脈文化社会ほどは通じません。
基本的に同じ言語で用が足せ、文化的にも均質性の高い日本社会とは異なり、異なる民族、文化、言語が入り交じる社会では、コミュニケーション全体に占める言葉そのものへの依存が高くなります。
別の言い方をすれば、「言葉で言い尽くす社会」と言えるでしょう。ですから、上司からの誘いを断る時には、言葉である程度言い切らないといけない訳です。
この2つの社会のコミュニケーションの方法を「言葉」と「慣習やルール」の暗黙の了解に分けて、その割合がどのくらいかを表にすると以下のようになります。
気をつけたいのは、低文脈文化社会にも気遣いがあり、いわゆる「察し」が存在しているということです。「察し」は日本特有だと考える向きもあるようですが、そんなことはありません。オックスフォードに在籍していた各国の学生達は、むしろいわゆる日本人的な「察し」や「気遣い」にあふれていることを体験しました。
しかしながら、ちょっとしたやり取りはいざ知らず、何かを議論したり書いたりしようとする時は、「言葉で言い尽くす」ことが求められます。「これは言わなくてもわかるよね」が通じないのです。留学中は、課題のエッセイで苦労しました。
ではどうすればいいのか?—実践編—
以上のようなことを踏まえて、上記の先輩や上司からの飲みの誘いを「高文脈文化社会的な言い回し」から、「低文脈文化社会的な言い回し」に変換してみましょう。●高文脈文化社会的な断り方:「あの、ちょっとー今晩は……」
○低文脈文化社会的な断り方:’I wish I could, but I have another appointment tonight with friends. Thank you for asking anyway(是非とも行きたいところのですが、今晩は友人と別の予定が入っているんです。でも、お誘いありがとうございます。).’
このように、「行けない」ということを明確に伝えます。でも、「行けたら良いのですが」という一節ではじめることや、誘って下さった事自体に御礼を述べることで、丁寧さを出すことが出来ます。
いかがでしょうか?
このような断り方なら、はっきりと断るのが苦手な多くの日本人にとっても、それほど負担のない言い回しですし、このような穏便で思いやりのある断り方は知性を感じさせ、好かれることはあっても揶揄されることはまずないでしょう。
日本語と英語の世界を行き来する感覚があると、会話はもちろん、読み書きの力が飛躍的に伸びます。このような感覚を踏まえながら、英語学習を進めてみて下さいね。