政権交代が日本経済に与える影響
政権が自民党に交代してからというもの、安倍総理大臣は決意をもって経済対策に打ち込んでいます。インフレターゲットも他先進国並みの2%程度に引き上げられ、日本経済は総じて景況感が良くなってきています。その効果は日経平均株価の上昇や、為替の円安という形で如実に表れており、景気回復への期待感が高まりを見せています。これを一時的な効果で終わらせず、しっかりと景気回復トレンドに乗せることが期待されますが、これは、新政権にとって大きな試練となるでしょう。民主党政権下では黙認されてきた円高は、輸出系の企業を中心に大打撃を与え、多額の赤字や大規模なリストラを招く結果となりました。新政権は国内経済の安定化を目的として大規模な金融緩和を進めており、その結果、これまでの異常な円高は是正されつつあります。しかし、一部の国からは、円安の誘導だとの指摘もあり、このまま円安基調が続くかどうか、まだまだ予断を許さない状況です。
低迷の続いていた株価も、政権交代により短期間で大きく値を上げています。若干過熱気味の状態ですが、「株価は景気の先行指標」と言われ、将来を見据えた期待の大きさがうかがえます。しかし、本当に日本経済が再生するためには、新政権の政策の実現が必要となってきます。それを見定めなければ、今後株価がどの程度上昇するかの判断は難しいです。
日経平均株価10年チャート
日本経済再生の前に立ちはだかる「消費税増税」
期待が膨らむ日本経済ですが、再浮上できるかどうかについては、消費税増税との睨みとなるでしょう。消費税は平成元年の竹下内閣で初めて導入されました。その年は、日本は力強いバブル経済のピークの中にあり、消費税導入の大きな反動は見られませんでした。
それに続き、平成9年に橋本内閣により消費税は3%から5%に引き上げられましたが、この増税は、バブル崩壊後、日本経済が深刻なダメージを負っている時期に行われました。その結果、当時の緊縮政策と併せて景気に大きな影を差す結果となり、それ以後、長年に渡るデフレを招き、日本の株式市場の株価や不動産価格は半値まで落ち込んでいます。
過去の経験上、消費税の増税に対して日本経済が力強さを保ち続けられるかどうかが、景気回復の鍵となる事は間違いなさそうです。
景気の回復は、必ずしも賃貸住宅経営にとってプラスに働くとは限りません。
各企業の業績は好転し始めており、これは今後の賃金アップにつながっていくと考えられるため、消費動向については明るい兆しが見えます。しかし、家賃のような必需的支出に関しては、長引く不景気の影響で恒常的に抑え気味になっており、簡単に値上がりする訳ではありません。
経済が好調な時期は住宅の着工戸数が伸びる傾向があるため、景気が回復すれば、当然、競合する賃貸住宅の供給も加速して行くことが予想されます。特に東京は、最新の設備を備えた優良な賃貸住宅が次々と供給されますので、既存の賃貸住宅をお持ちの大家さんは、新たにそれらとの戦いを意識しなければなりません。
特に、駅から遠い、狭い、古いと言った三重苦物件は苦しい戦いが強いられることは明らかで、家賃の下落に歯止めがかかることはないでしょう。中間的な物件についても、勝ち組になるには何らかの手を打つ必要があります。
既に入居者ニーズをしっかりと捉えているような優良物件についても、今の状態に安住することなく、管理体制や日常清掃を強化するなど、テナントリテンション(入居継続を促すための知恵と工夫)を念頭に置いた賃貸経営を心掛けて頂くことが重要です。
また、景気回復に伴いインフレが進んだ場合には、金利が上昇することも予想されます。アパートローンの残債がある大家さんにとっては支払利息の上昇という形で大きな脅威となり、物価上昇と併せて、家計の圧迫が懸念されます。
つまり、景気が回復したからと言って、必ずしも賃貸住宅経営にとってプラスに働くとは限らないのです。
賃貸住宅の賃料への景気の影響は遅くにやってきます。