開放感はジャーマンテイストに対する“アンチテーゼ”
V40は180ps/240Nmの直4ターボにデュアルクラッチの6速ギアトロニックを採用。アイドリングストップ機構やエネルギー回生システムを備え、JC08モード燃費は従来モデルから約40%向上した16.2km/lとなる
V40、Aクラス、1シリーズの3台にはいずれも、1.6リッターの直噴ターボが積まれている。パワースペック的にも似たり寄ったりか、と思いきや、V40の最高出力だけが突出して数値が大きい。トルクスペックもダントツ。ライバルに対するユニークなポイントだと言っていい。
トランスミッションでは、V40が6段のDCT(ダブルクラッチシステム)であるのに対して、Aクラスは7段、1シリーズに至ってはトルコンATながら8段である。多段化は最近の顕著な傾向で、さすがに4段だと言われれば文句の3つや4つもたちまち噴出となるが、だからと言って多ければいいというものでもない。
インテリアの印象を比べてみよう。まずはBMW116iだ。
低いポジションに腰を落とし、太めのステアリングホイールに手をかけて辺りを見渡せば、BMW各モデルに“お馴染み”の光景が広がっていた。人によっては“代わり映えのしない”という評価になるが、ヒューマンリレーションはどのモデルでも同じ(乗る方はクルマのサイズで変わらない)という考え方に立てばこれでいい、とも言える。色気もないかわりに、スポーティイメージを強く打ち出すということもない。運転するという行為に徹して機能的なインテリア、と言った方がしっくりとくる。
A180スポーツはどうか。AクラスはCセグメントへの“正式参入”に際して、ことさらにスポーツ性を強くアピールしている。若年層のユーザーを拡大して、ブランドの裾野を拡げたいからだ。こういった思惑は、何もメルセデスに限ったものではなく、ボルボも含めすべてのブランドに当てはまることだが、Aクラスにおけるメルセデスの、その決意表明の度合いは、そもそものブランドポジションとのアンマッチ感と相まって、最もアグレッシブに映る。
コクピットも、SLクラスにも通じるスポーツテイストでまとめられ、これまでのメルセデスの乗用ラインナップにはなかった雰囲気だ。長年のメルセデスユーザーからすれば、ちょっとやり過ぎに見えるほどで、確かにけれんみもタップリ、質実剛健なイメージとは真逆。若返りの狙いは、見事に達成されている。
ドライバーオリエンテッドでスポーティな雰囲気のインテリア。ずばり、黒が似合って、それゆえ男くさい。ドイツ2モデルに共通するテーゼははっきり言って昔ながら、21世紀のコクピット方程式そのものだといっていいが、ボルボV40のそれは、正に、そんなジャーマンテイストに対するアンチテーゼである。
柔らかなライン構成とカラーコーディネーション、上質なマテリアル質感の表現、そして抑制の利いたアソビ心(TFTやクリアシフトノブなど)、をコクピットとしてまとめあげる巧さはまた、エクステリアと同様に、デザインの最新ボルボというにふさわしい。
座ったときの開放感というか、穏やかな雰囲気もまた北欧テイストである。ドイツの2モデルには、やはりドライバーをシートにしばりつけるような圧迫感があって、クルマとの問答無用の融合を迫られる。
対してV40では、もちろん乗り手とクルマの関係性を良好に保って高い操作性を担保しながらも、ドライバーの気持ちを独立して落ち着かせるだけの懐の深さがあった。
こういうデザインこそ、本当のデザインであって、最近やたらと多い、見栄えのためだけのデザイン、目立つためだけのデザイン、いわゆるデザインのためのデザインとは一線を画している。
「これなら奥様の評価もイッパツ合格だろうな」。よくできたインテリアを眺めつつ、かなり落ち着いた気分で走りだしたV40だったが、そのライドフィールはといえば、かなり溌剌としたものだった。