スカンジナビアンデザインの、潔く有機的な美
それはともかく。話を“対ドイツの2モデル”に戻そう。
まずは、モデル概要をつかんでみてほしい。新型V40を含め、この3モデルは、当然のことながら、ディメンジョンがとても似通っている。ほぼ同じターゲットを目指したからであろう、3サイズはもちろんのこと、ホイールベースや車両重量も近い。これは何もこの3モデルに限った話ではなく、Cセグモデル全般に言える話で、そういう意味では、室内スペースや積載容量について事細やかに比較する必要など、もはやないのかも知れない。ベーシックな機能性は、ことボディサイズが関係する項目にかぎって、同質化の進行が著しいのだ。
最新Cセグメントの、スタイリング上の特長として、ワイド&ロー化を挙げることができる。車幅をほぼ1.8mまで拡げ、車高は1.45mを割る、というあたりがトレンドだ。このことは、とりもなおさず、このセグメントにおいてもスポーティなイメージが望まれているからに他ならない。当然、V40もそこを強く意識しており、コンサーバティヴな1シリーズはもちろんのこと、生まれ変わったAクラスよりも、ダイナミックなフォルムをみせている。
もちろん、そこには考え抜かれたスタイリングディテールによる影響も少なからずあると言っていい。
サイドウィンドウのグラフィックスを薄くティアドロップ型にまとめて伸びやかなルーフラインを強調しクーペワゴン風にみせる手法は、ルノーメガーヌにはじまった“非ゴルフ”陣営の定番スタイルといえるが、ボルボはそこにプレミアムブランドばりの“ヘリテイジ”を持ち込むことで、さらなる躍動感を与えることに成功した。たとえば、P1800ESをモチーフにしたフックラインだ。
1シリーズやAクラスが、スタイリングに躍動感を与えようとしたあまり、ボディサイドに複雑な面とラインの構成を持ち込んでしまったのに対して、V40ではP1800フックでブランドヘリテイジに基づく主張をみせつつも、全体的にシンプルで飽きの来ない、けれども見応えのある存在感を実現してみせた。特に、フックで連なるキャラクターラインの美しさには、目を見張るものがある。それはスカンジナビアンデザインに特有の、潔く有機的な美であった。
ボルボといえば、スタイリングアピールの最も強いブランドである。そのことは、この3台を並列に眺めてみれば一目瞭然だ。
1シリーズやAクラスが、ある意味、自社の歴史にある高級大型車イメージに束縛されてしまうため、どうしてもユニークなフロントマスクの成り立ちとオシリのないハッチバックフォルムとの整合性にムリが生じる。しかしながら、XC60以降、従来イメージからの脱却を図ったボルボには、それがない。ブランドアイコンを表現する顔立ちから、特徴的なリアエンドにいたるまで、首尾一貫した、破綻のないデザインがみえる。安全性や環境性と並んで、最新のモビリティに欠かせない要素、デザイン性において、V40の優位は明らかであろう。