2021年上1~3月、早期希望退職者募集の実施を公表した上場企業数は41社

わが社が希望退職募集をするとは…

わが社が希望退職募集をするとは…


東京商工リサーチによると、2021年1~3月に早期希望退職者募集の実施を公表した主な上場企業数は41社で、前年同期の約2倍に上ります。人数も9505人と、前年同期の4447人の2倍以上となっています。募集企業には、新型コロナウイルス感染拡大の影響が深刻なアパレルや繊維製品が7社、観光関連が4社、外食が2社、鉄道が1社あります。また1000人を超える募集人数を設定した会社は3社(LIXILグループ1200人、JT1150人、日立金属3200人)です。

驚いたのは新聞社も早期希望退職募集を実施しているということです。東京スポーツ新聞社は100人規模、朝日新聞は2021年1月に100人募集、2023年度までに300人規模の早期希望退職を実施する予定です。新型コロナ感染拡大の影響は思いもかけない企業にまでおよんでいます。では、2021年1~3月に早期希望退職者を募集した企業の一部をご紹介します。企業名の後の人数は「募集人数→応募者数」です。
  • LIXILグループ 1200人 → 965人
  • KNT-CTホールディングス 未定 →1376人
  • オリンパス 950人 → 844人
  • 青山商事 400人 → 609人
  • 東芝 770人 →452人
  • 藤田観光 未定 → 315人
  • 曙ブレーキ 180人 →223人
  • 山陽商会  150人 →180人
  • ワールド 100人 → 125人 
  • デサント 110人 →124人
  • リケン 150人 →103人
  • リーガルコーポレーション 100人 →95人
  • キーコーヒー 100人 →73人
  • 近鉄ホールディングス 未定
  • 近畿日本鉄道  未定
(*)退職に関する用語の中に「勇退勧奨」は見当たらない。 「勇退」は、後進に道を譲るため自ら進んで辞めること。「勧奨」は、あることをするように勧めること。因みに「退職勧奨」は、会社が労働者に対して「辞めてほしい」と退職を勧めることで、労働者には選択の自由がある。
  

早期退職は2種類ある

早期退職制度には2種類あります。1つは、経営再建や事業の再構築・構造改革のために、期間と人数を限定して退職者を募集し、早期退職してもらう早期退職優遇制度です。一般に「早期希望退職制度」あるいは「希望退職制度」と言われるもので、整理解雇を回避するために行われます。多くの場合、退職金の割り増し加算や再就職の斡旋などが行われます。

もう1つの早期退職は、企業が人事制度として設けているもので、定年年齢に達する前に退職を選択できることから「選択定年制」「早期退職優遇制度」とも呼ばれています。まず、この「選択定年制」がどのようなものかを解説します。
 

選択定年制は自己都合退職や定年退職扱い

業績に関係なく、従業員の世代間の人員バランスの均衡や定年前に転職や独立を考える従業員の支援などを目的として、人数を限定することなく随時募集する選択定年制は、退職制度の1つとして常設されています。

中央労働委員会の「令和元年退職金、年金及び定年制事情調査」によると、選択定年制を導入している企業は179社中90社(約50%)です。企業独自が適用要件(例えば勤続年数や適用開始年齢など)を定めています。優遇措置には、 退職一時金の優遇(支給率を加算して定年退職扱いにする、実勤務年数に定年までの年数を加算する、など)や退職年金の優遇などがあります。

「令和元年退職金、年金及び定年制事情調査」から選択定年制を導入している90社の適用状況等をご紹介します。

●選択定年制の適用状況
  • 勤続年数の要件:あり…73社(約81%)、所要年数の平均は14.3年
  • 適用開始年齢:「50歳」から適用が最も多く36社(約40%)
●早期退職者に対する優遇措置(複数回答のため合計は90社に一致せず)
  • 退職一時金の優遇措置あり:84社(支給率を加算し定年退職と同等に扱う:34社、勤続年数の加算:8社、退職時の年齢に応じて支給額を加算:42社、その他:20社)
  • 退職年金の優遇あり:10社
  • その他の優遇あり:5社
選択定年制による退職は「自己都合退職」扱いですが、会社によっては「定年退職」扱いとすることもあります。自己都合退職扱いの場合、雇用保険の基本手当は2カ月の給付制限がありますが(2020年10月に自己都合により退職した場合5年間のうち2回までは給付制限期間が2カ月となる改正がありました。ただし、懲戒解雇など自己の責めに帰すべき重大な理由での退職では今で通り3か月です。)定年退職扱いの場合には給付制限はありません。給付日数は自己都合退職も定年退職も同じで、雇用保険の被保険者期間と年齢等によって決まります。
 

早期希望退職は会社都合退職

使用者側が割り増し退職金のような優遇措置を提示して退職してもらう早期希望退職は「解雇等の理由による退職」にあたるので、会社都合退職(=特定受給資格者あるいは特定理由離職者)となります。雇用保険の基本手当の給付制限はありません。

早期希望退職に応募し、退職金は割り増し加算されたが退職後にもらった離職票の退職理由が「自己(本人)都合」になっていた、というトラブルも発生しています。「自己都合退職」と「会社都合退職」では雇用保険の基本手当の給付に大きな差がありますので、退職前に退職理由が「会社都合」か「自己都合」なのか念のために確認することをおすすめします。
 

割り増し退職金は1~2年

これが早期退職の見返りか…

これが早期退職の見返りか…


選択定年制は人事制度の1つなので、優遇措置などの規定内容は就業規則に明記されています。一方、早期希望退職は、募集ごとに優遇内容が異なります。1回の募集で目標人数に達しない場合や経営環境の悪化などから募集を複数回行うこともあり、回を重ねるごとに優遇内容は悪くなる傾向があります。

早期希望退職募集に応募した人に対する金銭的補償はどのくらいなのでしょう。前出の藤田観光は「所定の退職金に転職援助金として加算金を上乗せ支給」、リーガルコーポレーションは「所定の退職金に特別退職金を加算」、東京スポーツは「退職金+1年分の給料」とあります。割増退職金は企業業績や経営状況、募集理由、対象者の年齢など諸条件で異なるので一概には言えませんが、新型コロナ感染拡大による経営環境の急激な悪化を考えると、「退職金+給与12~24カ月分程度を上乗せ」が多いのではないでしょうか。なお、退職金は退職所得として所得税と住民税が課税されます。
 

早期希望退職の決断ポイントは4つ

会社が「早期希望退職を実施する」と公表した場合、あなたはどうしますか? 独立開業する予定の人 や転職を考えている人、50歳後半の人の中には「ラッキー!」とばかりに応募する人がいるかもしれません。しかし、多くは「会社の将来性は……」「再就職は……」など将来の不安が大きく、決断できない日々を過ごすのではないでしょうか。では、早期希望退職に応じるかどうかの決断ポイントを考えてみましょう。

1.割り増し加算の退職金で退職後の収入ダウンを賄えるか
退職後は雇用保険の基本手当、例えば45歳以上60歳未満で勤続20年以上の人には「給付日数330日×8370円(上限額)=約276万円(令和2年8月1日以降適用)」が給付されます。基本手当の給付期間中に再就職を決めたいところです。

再就職後から年金支給開始年齢の65歳までの収入を、現在の会社に残った場合と再就職した場合で予測します。その差額の総額が退職金の割り増し加算分に近ければ、早期希望退職に応募してもいい、ということになります。収入減のカバーに充足するのは割り増し加算部分だけです。本来の退職金は65歳になったときの退職金として別に管理しましょう。

2.現在の会社の将来性は?
会社に残った場合でも現在の収入が保証されるわけではありません。計画通りに再建できない場合は、さらなる早期希望退職の募集や整理解雇、果ては倒産ということもありえます。

3.転職市場での「売り」は?
自分の「売り」や人的ネットワークを持っている人は、再就職が有利に進みます。年齢が高くなればなるほど人的ネットワークが力を発揮するようです。再就職への道が険しくなければ、早期希望退職に応募するハードルが低くなります。

4.退職後の夢に着手する
定年退職後に挑戦しようと夢見ていた仕事に、気力も体力もある年齢で着手するチャンスかもしれません。資金には退職金の割り増し加算分を充当。不足する技術は、雇用保険の基本手当を受給しながら職業訓練校に通い、併せて教育訓練給付の通信教育を活用して身につけることもできます。

※教育訓練給付とは
雇用保険の被保険者や離職者が、自ら費用を負担して、厚生労働大臣が指定する教育訓練講座を受講し修了した場合、本人がその教育訓練施設に支払った経費の一部を支給する制度で、次の3つがあります。給付を受けるには被保険者期間や受講する間隔など一定の要件を満たす必要があります。

1.一般教育訓練給付金
教育訓練施設に自分で支払った教育訓練経費の20%に相当する額(上限10万円)が支給されます。4000円を超えない場合は支給されません。平成29年1月1日以降で受講開始日前1年以内にキャリアコンサルタントからキャリアコンサルティングを受けた場合の費用(上限2万円)も教育訓練経費に加えることができます。

2.専門実践教育訓練給付金
教育訓練施設に自分で支払った教育訓練経費の50%に相当する額が支給されます。ただし、1年間で40万円を超える場合の支給額は40万円(訓練期間は最大で3年間となるため、最大で120万円が上限)とし、4000円を超えない場合は支給されません。

専門実践教育訓練の受講を修了し、資格等を取得し、受講修了日の翌日から1年以内に就職に結びついた場合は、教育訓練経費の20%に相当する額が追加支給されますが、その合計額(70%=50%+20%)は、訓練期間が3年の場合は168万円、2年の場合は112万円、1年の場合は56万円を上限とします。4000円を超えない場合は支給されません。なお、10年間に複数回専門実践教育訓練を受給する場合の支給合計額は、初回から10年間で168万円が上限です。

また、2022年3月31日までの時限措置である「教育訓練支援給付金」があり、初めて専門実践教育訓練(通信制、夜間制を除く)を受講する受講開始時に45歳未満など一定の要件を満たす人が、訓練期間中に基本手当の支給を受けられないときは「基本手当日額の80%相当額×2カ月毎に失業認定を受けた日数」が支給されます。

★詳しくはコチラをご覧ください。【厚生労働省】
https://www.mhlw.go.jp/content/000571214.pdf

3.特定一般教育訓練給付金
厚生労働大臣の指定する特定一般教育訓練を受講し修了した場合に、教育訓練施設に支払った教育訓練経費の40%に相当する額(上限20万円)が支給され、4000円を超えない場合は支給されません。2021年4月1日現在の特定一般特定教育訓練給付の対象講座は464講座あります。


【関連サイト】

新型コロナウイルス感染拡大で社会構造が変化

2020年に始まった新型コロナウイルスの感染拡大は、働き方改革――在宅勤務やリモート会議、リモート営業、ロボットの活用他――を一気に進め、また余暇の過ごし方、人との交流方法、家族や親族との関係など、これまでの社会構造や生活スタイルを否応なく変容させました。
 
AIの革新など働く環境の変化のスピードは速く、社会構造や生活スタイルの変化への対応に後れを取った企業は大小を問わず淘汰されていく時代です。いつ早期希望退職が実施されても慌てることなく転身できるように、シンプルな生活と堅実な家計管理で貯蓄額を増やし、目標を持って自己研鑚に努めましょう。

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