毎日の暮らしの中で、日照や通風はとても大切な要素です。建物が密集しがちな都市部の住宅地では、隣が空き地でもいつそこに新しい建物が造られるか分からず、日照が阻害されるリスクを伴います。そのため、建築の可能性が低い公園や畑などが隣にあることは、住宅選びにおいて一つのメリットと考えられるでしょう。
とくに敷地の南側に広い公園や運動広場などがあれば、日照や眺望をしっかりと確保でき、これが将来的に失われる心配もほとんどありません。
敷地のすぐ隣ではなくても、季節によって表情を変える広い公園が近くにあれば、休日に散歩をしたり草花を楽しんだりと、日々の生活に潤いを与えてくれることでしょう。
もちろん、安全な遊具施設が整えられた公園なら、子どもたちの格好の遊び場になり、子育て環境としても好ましいものです。
一見すると良いことばかりで、価格のプラス要因になることも多い公園の隣の住宅ですが、一定の注意も必要です。純粋な住宅地の中の公園ならあまり心配はいらないでしょうが、繁華街の裏手にあるような公園では、家を持たない人たちが寝泊まりしている場合もあります。雨天時などに公園のトイレが占拠されているような例も実際にあるのです。
また、酒場が近くにあると夜中に酔客が奇声を発したり、夜半過ぎに若者が集まって騒いだりする公園の例もみられます。
芝生の公園であれば問題はないでしょうが、土の地面のままの場合には、乾燥時に強風が吹くと砂埃が舞うこともあり、外に干した洗濯物が変色したり、サッシの桟(さん)に砂が溜まったりすることも多くなります。
さらに球技場などを兼ねている公園では、日曜日ごとに早朝から草野球大会や地域の少年野球の試合などが行なわれ、騒がしいためになかなかゆっくり寝られないこともあるようです。
また、夜間の人通りが極端に少なく閑散とし、照明も十分にないような公園では、防犯上の問題が生じることもあります。毎晩、公園の脇を通って帰宅するようなロケーションなら、住宅選びの際に夜間の様子をチェックすることも欠かせません。人の視線が遮られるような死角がある公園にも注意が必要です。
一方、隣が畑など農地の場合にも、公園と同様に、建物の新築によって日照などが遮られる可能性は低くなります。さすがに都心部ではあまり見かけないものの、少し離れれば市街化区域内でも畑などが残されているところは多いでしょう。
しかし、市街化区域は原則として市街化が促進されているエリアです。かつてのように、どんどんと農地が潰されてマンションなどが次々に建てられるケースはないでしょうが、いつ宅地開発されるか分からないリスクも考えなければなりません。
購入しようとする敷地が市街化区域内であり、隣が畑などになっている場合には、そこが生産緑地地区に指定されているかどうかを確認するようにします。この指定がある畑などには、原則としてそれを示す標識が設置されています。
生産緑地地区に指定されると、固定資産税など税制面での優遇が受けられる代わりに、建築や宅地造成などの行為が制限されることになっています。ただし、指定から30年が経過したとき、あるいはそれ以前でも農業の主従事者が死亡したり営農できなくなる故障が生じたりしたときには、指定が解除されて農地以外への転用が可能となる場合もあります。将来にわたって、建物が建たないことが保証されるわけではありません。
自治体によっては、市街化区域内の畑などを「防災協力農地」として登録し、大規模災害時に避難空間や仮設住宅建設用地に活用しようとする場合もあります。都市に残された農地を、地域の財産として考えることも必要でしょう。
斜面に沿って畑が広がり、その下側に敷地がある場合には、大雨のときなどに土砂が流れ込むリスクを考えることも必要です。農地の災害などは自治体でしっかりと把握できていないケースも多いのですが、近所に古くから住む高齢者に尋ねると「昭和○○年の台風で、ここの家が泥で埋まった」などという話が聞ける場合もあります。
また、畑など農地に対しては建築基準法による規制が働きません。そのため、セットバックを要する狭い道路に面して農地がある場合には、その部分の拡幅がいつまで経っても進まないことも多いでしょう。宅地開発されるケースが少ないことの裏返しとして、街路の整備が進みづらい側面もあることを覚えておきたいものです。
関連記事
不動産売買お役立ち記事 INDEXマンション隣の空地は守られる?
隣の敷地には何階までのマンションが建つ?
市街化調整区域の土地でも家は建つ!?