誰よりも働き者のくまさんを紹介します
絵本には、働き者の動物たちがよく登場します。なかでも1番の働き者はと言えば、イギリスのウォージントン夫妻が描くくまさんかもしれません。今回は、その「くまさんシリーズ」の中から、特に人気の高い『パンやの くまさん』をご紹介します。コック帽子がよく似合うくまさんは、働き者というだけでなく、実に礼儀正しい愛すべき人物なのです。くまさんのパンを、食べたくなっちゃう絵本です
『パンやの くまさん』は、コツコツと真面目に働くくまさんの1日を丹念に描いています。朝早く、パン焼きかまどに火を入れて朝の紅茶を飲む……そこから、くまさんの1日が始まります。パンやケーキを焼いたら、車で街に売りに出かけます。店に戻れば、お客さんとの楽しそうなやり取りがあり、パンが売り切れると、贅沢ではないけれど美味しそうな夕食を楽しみます。もちろん、売り上げの管理だって忘れることはありません。ドラマチックな出来事は何も起こらないけれど、くまさんにとっては、静かで幸せな1日が過ぎていきます。今日と同じような毎日が、これまでも、そしてこれからも、ずっと続いていくのでしょう。つつがなく毎日を送れることの幸せや働くことの喜びが、画面いっぱいにあふれています。これが、この作品の第1の魅力です。
では、第2の魅力とは? それは、くまさんの人柄が醸し出す穏やかで温かい絵本の印象ではないでしょうか。実は、くまさんの人柄については、礼儀正しいという以外、文章での説明はありません。けれども、描かれた絵をじっくり見ていくと、くまさんの「人となり」が浮かび上がってきます。
部屋には釣りの本やレシピ本が置かれおり、釣り好きで研究熱心なことが伺えます。店内には、大きな掲示板があり、くまさんが地域の人たちの交流に一役買っていることもわかります。他にも、描きこまれたいくつものアイテムが、くまさんの愛すべき人柄を物語っていて、読むほどに、くまさんを好きになってしまいます。
この作品を読んでいると、そんなくまさんが一所懸命に焼いたパンやケーキを、食べたくなりますね。さぞかし美味しいだろうなあ……。あっ、美味しそうに焼きあがったパンの数々もこの作品の魅力の1つかもしれないと、いま気付きました。
【書籍データ】
フィービとセルビ・ウォージントン:作/絵 まさきるりこ:訳
価格:945円
発売日:1987/5/30
出版社:福音館書店
推奨年齢:3歳くらいから
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