将棋はチームプレーでありマネージメントゲームだ
将棋の動かし方
「私は日本における野球の基本は『将棋』にあると考えている」
まず、あなたのチームは20名の個性豊かな駒たちでスタートする。その仲間は最大39名まで増えることだってある。将棋とは、チームの力をいかに引き出すかを競うマネージメントゲームでもあるのだ。
<目次>
個性豊かな8種類の将棋の駒たち、最初の布陣
さあ、箱から駒を出し、盤上にならべてみよう。3点、気をつけなきゃいけないことがある。1.駒には表と裏がある。
最初は、表と裏の区別がつきにくい。でも以下のことを知っていれば、大丈夫。多くの場合、表は楷書や行書などの比較的きっちりとした字体で書かれている。裏はくずした字だ。(赤い字で書いていることもある)
画像の駒はすべて表。
2.多くの場合、「王将(おうしょう)」と「玉将(ぎょくしょう)」の2種類がある。その理由や区別は、マナー編で説明するが、今のところは、どちらも同じものだと考えていい。
3.「歩兵(ふひょう)」という駒が1枚余る場合もある。これは、予備なので、駒箱にしまっておこう。
画像のように、スタート時は「王将(おうしょう)」を中心として、ほぼ左右対称にならぶ布陣だ。ただ一つ、入門期に間違いやすいのが「飛車(ひしゃ)」と「角行(かくぎょう)」の位置。「右飛車」と覚えておくといい。
将棋の目的は相手の王将を詰ませること
「将棋は、相手の王将を取ったら勝ちだ」と思ってる人が多い。でも、実はそうではない。正確には「詰ませたら勝ち」なのだ。「詰ませる」というのは、相手の王将がどこへ逃げようとも、こちらが捕獲できる状況に追い込むこと。それが将棋の「勝ち」なのだ。もちろん、いくら駒をたくさん取っても、勝ちではない。目的は、ただ一つ、相手の王将を詰むことだけ。極端に言えば、王将以外の駒を全部取られても、相手の王将さえ詰めば勝ちだ。だから、最後の最後までハラハラドキドキの連続。大逆転だって、全然珍しいことではない。それが将棋の魅力の一つだ。
将棋の駒の動かし方とルールをマスターしよう
駒の種類は8種類。だから、8通りの名前と動きを覚える必要がある。名前には正式なものと、略したものがある(ふつうに使うのは略名)。基本的に、動ける場所に相手の駒がいれば、その駒をゲットして動くことができる。自分の駒がいる場所には動けないし、自分の駒を飛び越えて動くこともできない。ただし、「桂馬(けいま)」という駒だけは、相手の駒も自分の駒もジャンプして動くことができる特殊な駒だ。1.王将(「おうしょう」、略:「王(おう)」)
玉将(「ぎょくしょう」、略:「玉(ぎょく)」)
王将は、身の回り8カ所、どこにでもいける。ただし、1マスのみ。
金将は身の回り8カ所の内、6カ所にいける。
1マスのみ。
斜め後ろにさがることができない。
銀将は身の回り8カ所の内、6カ所にいける。
1マスのみ。両横と真後ろに動けない。
桂馬は2マス斜め前方に動くことができる。
前述のように、桂馬だけは、相手の駒も自分の駒も飛び越えて進める。
(ここでは、区別しやすいように動ける場所を青印にした)
香車は前にならどこまでも進める。だから、「槍(やり)」と呼ばれることもある。
歩兵は前に1マスだけ進める。
飛車は縦横ならどこまでも進める。他の駒に比べて、自由自在に動ける駒だ。だから、次に紹介する「角行」とともに大駒と呼ばれている。
角行は斜め前後にどこまでも進める。飛車の項で述べたように、力強い大駒の一つだ。
表から裏返すことでパワーアップできる将棋の駒たち
「王将(玉将)」と「金将」以外の駒は、パワーアップ、つまり、動ける範囲を広げることができる。パワーアップした証しとして駒を裏返す。そのことを「成る」と言い、多くの駒は成って「金将」と同じ動きができるようになる。ちなみに、そこから「成金」という言葉が生まれたのだ。右図を見てほしい。
左上は「歩兵」が成った「と金:略称(と)」。
右上は「香車」が成った「成香(なりきょう)」。
左下は「桂馬」が成った「成桂(なりけい)」。
右下は「銀将」が成った「成銀(なりぎん)」だ。
どれも「金将」と同じ動きになっている。
ちなみに、裏の字については、「金」という字のくずし字、あるいは、「きん」と読める字(例「今」)をくずしたものなど諸説ある。「飛車」や「角行」の大駒は今まで紹介した小駒以上にパワーアップできる。表の動きだけでもすごかったのだが、成れば、それプラス「王将」の動きができるのだ。
「飛車」が成った駒は「龍王(りゅうおう)」。
略称は「龍(りゅう)」だ。最強の駒だと言える。
略称は「馬(うま)」だ。「龍王」同様に頼りになる駒だ。ちなみに、あの坂本龍馬の名も、この駒に由来すると言う説だってある。
将棋の駒が成る方法3つ
駒は、いったん成ると元には戻せない。今まで見てきたようにパワーアップは有利には違いないが、たとえば「銀」のままの方が「成銀」より役に立つ場合だってある。だから、成るか成らないかは、戦術上重要な選択となる。不利と見れば、成らなくたっていいのだ。それをしっかり頭に入れておいてほしい。では、駒が成る方法について説明しよう。その方法は3つだ。
1.敵陣(相手側3段目まで)に侵入したら成れる。図のように、敵陣に入り込んだ駒は、裏返して成ることができる。
敵陣に入り込み、その時は成らなかった駒でも、敵陣内を移動すれば、成れる。
敵陣から出た、その時だけは、成ることができる。もちろん、その時は成らなくても、後で敵陣に入れば成れる。
相手の駒を取れば、自分の持ち駒にできる
図のような場合、自分の「銀将」は相手の「歩兵」がいる場所に動ける。だから、そこに動けば、相手の「歩兵」を取れるのだ。取った駒は「持ち駒」と言い、その後、自分の順番になった時に盤上の空いているマスに置くことができる。これを「駒を打つ」と言う。ただし、たとえ敵陣であっても、表の駒で打たなきゃいけない。ここは注意が必要だ。もちろん、その後に成ることは、まったくかまわない。
将棋には4つの禁じ手がある
どんな競技にも反則規定があるように、将棋にもある。反則手(禁じ手)は、公式大会の場合は、即負けになってしまうので、十分に注意してほしい。禁じ手は次の4つだ。1.「二歩(にふ)」は禁止
同じ筋(縦のマス目)に自分の歩を2枚置いてはいけない。初心者でなくとも、ついやってしまう、うっかり反則だ。ただし、一つの歩が、成駒「と金」の場合は二歩にはならない。
図を見てほしい。「香車」も「桂馬」も「歩兵」も次に行く場所がない。無理に進めば、盤の外に出てしまうしかない。こういう駒の置き方は禁じ手になっている。
4.「連続王手の千日手」は禁止
これは初心者同士の対局では、めったにないことだ。でも、一応、記しておこう。対局する二人が同じ手を繰り返し、まったく同じ局面が4度出現した場合は勝負がつかないと見なされ、対局を最初からやり直すことになる。千日続けても勝負がつかないだろうという意味で「千日手」と呼ばれている。この千日手の中で、連続して王手をかけることが禁じ手にされているのだ。
将棋の駒の動かし方を覚えるにはとにかく指してみよう
こうしてみると、たくさん覚えることがありそうだ。でも、一つ一つのルールは、そう難しいことじゃない。だから、とにかく、指(さ)してみることをおすすめする(将棋をすることを「指す」といい、囲碁の場合は「打つ」という)。そして、わからないことがあったら、その都度、このガイド記事で調べてほしい。印刷しておけば、さらに便利。盤と駒と、このガイド。最初の内はそれで十分だ。
将棋は一手一手、交互に指していく。では、最初はどちらが指すの?大会などでは、振り駒(マナー編で解説します)で先手と後手を決めるのだが、家族や知人、友人と指す場合は、ジャンケンで決めてもいい。そして、楽しくインテリジェント、深くてスリリングなマネージメントゲーム「将棋」を、ぜひ楽しんでほしい。
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