世界遺産/アジアの世界遺産

古都アレッポ/シリア(4ページ目)

5,000年以上の歴史を誇る古都アレッポの中心にそびえるアレッポ城は、十字軍やモンゴル軍の攻撃に耐え抜いた難攻不落の城。周囲に広がる市場=スークには世界中の産品が集まり、古代オリエントの隊商貿易の中心として繁栄した。ところが2012年、内戦の影響でスークの多くが焼失してしまう。今回はシリアの世界遺産「古都アレッポ」を紹介する。

長谷川 大

執筆者:長谷川 大

世界遺産ガイド

古都アレッポの見所

グレート・モスク

グレート・モスク。安息日である金曜日になるとスークの多くの店が休みをとり、人々はこのモスクに集合する ©牧哲雄

アレッポは人口200万人を超えるシリア第二の都市。この中で、アレッポ城とその周辺の歴史地区が世界遺産に登録されている。簡単に見所を紹介しよう。

■アレッポ城
アレッポ城のゲート

石橋へと続くアレッポ城のゲート ©牧哲雄

この辺り、もともとはヒッタイトやフェニキア神話に伝えられるハダト神を祀るハダト神殿で、ローマ時代にはジュピター神殿になったらしい。十字軍に備えて城塞化され、サラディンが整備しておおよそ現在の姿になった。地下には常時大量の食糧が保管され、戦時には市民を避難させたという。

■グレート・モスク
イエスに洗礼を与えた洗礼者ヨハネの父ザカリアの墓があり、そのためローマ帝国の時代にキリスト教会が建てられた。ジャミ・ザカリーエとも呼ばれるが、これはザカリアの名前による。715年にウマイヤ朝のワリード1世がモスクに改修した。

■ハラウィア・マドラサ
グレート・モスクの前にあるマドラサ。もともと大聖堂だったが改築され、12世紀にイスラム教の高等教育機関=マドラサとなった。宗教の戒律がそのまま法となる西アジア諸国では、このようにモスクと学校が一体化していることも珍しくない。

 

■スーク
スークの屋根

スークの屋根。球形のドームを並べることで、石造屋根を造り上げた

紀元前より続くスークで、石とレンガ造りの建物はギリシア・ローマ時代のものも残っている。といっても数千年も増改築を繰り返しており、造りも雰囲気も場所によって異なる。アーチ屋根の下に店舗が延々と続いており、まるで迷路のよう。1,500軒以上あるといわれるが、2012年の戦闘で多くが焼失した。

■キャラバンサライ
アラビア語でハーンと呼ばれる隊商宿。アレッポ周囲にいくつかあるが、回廊式で二階建てのハーン・アル・ワジルは特に大きくて、まるで砦のよう。商人たちのための宿泊施設だが、ラクダや馬を休ませる設備も完備している。現在は工芸品店。

■キリスト教区
19世紀、トルコによるアルメニア人弾圧から逃れてきた人々が住む地域。彼らがキリスト教徒であったことからこう呼ばれるが、アルメニア人地区ということもある。複数のキリスト教会があり、ヨーロッパの街並みを思わせる。

 
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