年金受給者が亡くなった場合の手続きとは?

先日、70歳前後の女性が年金相談にみえました。少し気落ちしているご様子。お話をうかがうと、老人ホームに入所していた年上の旦那様が心筋梗塞で急に亡くなったとのこと。相談にみえられたのは、旦那様の年金について、どうすればよいのかを尋ねるためでした。

旦那様は会社をリタイアするまでの40年間、ひとつの会社に勤め上げ、亡くなるまで年200万円程度の年金(うち厚生年金120万円程度)を受給していました。一方、奥様は若い頃会社勤めをしたことがあり、年100万円程度の年金(うち厚生年金30万円程度)を受けているとのことでした。

この相談例をもとに、年金受給者が亡くなった場合の手続きについて、解説していきましょう。
 

年金をもらっていた夫が亡くなったとき、しなければいけないことは?

まずやるべきことは、旦那様が受け取っていた年金を止める手続きをしなくてはなりません。同時に、未支給年金を受け取る手続きも行います。年金は亡くなった月の分まで受け取る権利がありますが、年金は後払いであるため、受け取れない分が発生します。これを「未支給年金」といいます。

奥様は、通常であれば未支給年金を受け取る権利があります。ところが、旦那様は老人ホームに住所を移されていたとのこと。未支給年金を受け取るには、生計同一関係が必要です。

生計同一関係」とは、お互いに経済的なつながりがあったということ。しかし、相談者の場合、書類上は夫婦でも住所が違っていることになり、生計同一関係にあったのか不明です。そこで、生活費や医療費をお互いの年金から出し合っていたことを老人ホームのスタッフに証明してもらうよう、お願いしました。
 

私は遺族年金をもらえるの?

奥様は通常であれば旦那様の年金を「遺族厚生年金」という形で受け取ることができます。そのためには、旦那様と奥様に生計維持関係が必要です。

「生計維持関係」とは、平たくいえば奥様が旦那様に扶養されていたということ。完全な扶養ではなくても旦那様のお金で奥様の生活がある程度まかなわれていたという事実があり、奥様の年収が850万円未満であれば生計維持関係があったと認められます。奥様の収入は年金だけとのこと。先ほどの老人ホームのスタッフの証明があれば、遺族年金を受け取ることができそうです。
 

未支給年金と遺族年金、もらうにはどんな手続きが必要なの?

未支給年金と遺族年金をもらうためには、年金事務所に未支給年金請求書と遺族年金請求書を提出しましょう。

未支給年金と遺族年金をもらうために必要な書類は以下の通りです。
  • 2人が夫婦であったことを示す戸籍謄本
  • 旦那様の住民票除票※1
  • 奥様の世帯全員の住民票※2
  • 奥様の年収を確認する所得証明書※2
  • 旦那様の死亡診断書の写し
  • 年金の振込先となる口座の通帳
なお、※1、※2については、基礎年金番号とマイナンバーが紐付けされている場合には原則として省略可能です(※2については遺族年金請求書にマイナンバーを記載してもOK)。ただし、マイナンバー経由で住民票や所得の情報が年金事務所で確認できないケースもあり、その場合は必要になることもあります。詳しくは年金事務所にご確認ください。

加えて今回の相談例では、生計同一関係についての第三者の証明(老人ホームスタッフの証明)があれば、年金事務所で手続きを取ることができます。旦那様の年金証書はあれば提出しますが、見つからなければなくても大丈夫です。
 

未支給年金と遺族年金は、いくらもらえるの?

今回の場合、未支給年金は旦那様が今までもらっていた年金の1カ月分ないし2カ月分ですから、16~33万円程度になります。

遺族厚生年金の額は、原則として旦那様が受け取っていた老齢厚生年金(報酬比例部分)の4分の3(今回の場合、90万円程度)となります。奥様が昭和31年4月1日以前生まれの場合、生年月日に応じた加算(「経過的寡婦加算」)がつきます。ただし、奥様自身が老齢厚生年金(30万円程度)を受け取っているので、それが優先支給となり、その分は遺族厚生年金が支給停止となります。

上で解説した遺族年金と、自分の年金を一緒に受けることになりますので、金額の合計としては、旦那様の遺族厚生年金(90万円-30万円=60万円程度+経過的寡婦加算)+奥様の老齢厚生年金(30万円程度)+奥様の老齢基礎年金(70万円程度)となります。
ちなみに、これは奥様が65歳以上の場合です。奥様が65歳未満の場合は異なった受け方になります。
なお、「遺族基礎年金」は今回の場合は奥様のお子さんは全員成人しているとのことなので対象外となります。

旦那様の年金に関する手続きと必要書類がわかってほっとされたのか、旦那様との思い出話を少しされてから、お帰りになりました。
 

未支給年金はどんな人が受け取れるの?

年金は亡くなった月の分まで権利がある、と述べました。

例えば3月に年金受給者が亡くなったとすると、3月分までは受け取る権利があり、本来は2月・3月分が4月に振り込まれますが、4月には既に亡くなっているので受け取れないことになります。この受け取っていない年金が「未支給年金」です。

しかしこの未支給年金、亡くなった方の家族が請求することで、受け取りが可能であり、受け取れる人の優先順位は以下の通りとなります。
  1. 配偶者(妻または夫)
  2. 父母
  3. 祖父母
  4. 兄弟姉妹
  5. その他の3親等内の親族

この中に入っていない人は受け取れません。また、上の順位の人がいる場合は、下の順位の人は受け取れません。そして、未支給年金を受け取る人は、亡くなった人と「生計が同一であった」ことが必要になるのです。これは、それほど厳しい条件ではありません。一緒に住んで扶養していた場合は当然として、前述の相談事例からもわかるように、別々に住んでいても、例えば生活費や医療、介護費を一部負担していた、など、亡くなった方と何らかの経済的なつながりがあれば生計が同一であったと認められます。
 

未支給年金の手続きの注意点

次に、未支給年金の手続きに必要な書類を確認しましょう。

<未支給年金の手続きに必要な書類等>
  • 亡くなった方と未支給年金を受け取る方の関係を証明する戸籍(受け取る方が亡くなった方の妻や夫なら戸籍謄本、子なら自身の戸籍抄本でOK)
  • 亡くなった方の住民票除票※
  • 受け取る方の世帯全員の住民票※
  • 未支給年金を受け取る口座の通帳
  • (あれば)亡くなった方の年金証書
なお、※については、遺族年金の書類と同じように省略可能ですが、やはり情報が確認できないと必要になってくる場合もありますのでご注意ください。

必要な書類等でポイントとなるのが、2人の住民票上の住所が同じなら問題ないのですが、別々の場合。

例えば結婚して別に家を建てたり、亡くなった方が介護施設に入所したりして、住所を移していたような場合、生計が同一であったことについて第三者の証明が必要になります。

この第三者の証明はおじや姪など、3親等内の親族ではダメというルールがあります。未支給年金を受け取る方の配偶者の家族もこの範囲に入るのでNGです。一般的には会社の同僚や隣人、病院や介護施設のスタッフに頼むとよいでしょう。第三者の証明を受ける書類は年金事務所に備えてありますので、書類をもらっておくとスムーズにことが運ぶと思います。
 

未支給年金はいつごろ、どれくらいもらえるの?

未支給年金の請求手続きが終わってから、通常は3~4カ月後に、指定した口座に振り込まれます。事前に通知が届くので注意しておきましょう。

受け取れる金額は、奇数の月に亡くなった場合は亡くなった方の年金受取額1回分(=2カ月分)、偶数の月に亡くなった場合はその半分(=1カ月分)です。日割り計算はありません。

ちなみに、年金支給日間近に亡くなった場合や、手続きが遅れたりした場合、亡くなった後に年金が通常通り入金されることもあります。その場合は未支給年金がないことになりますので、実際にはお金は受け取れませんが、手続きだけは必要となりますので注意が必要です。

なお、未支給年金をもらう権利がある家族がいない場合は、住民票除票など年金受給者が亡くなったことを証明する書類を添えて、年金事務所に死亡届を提出することになります。


【関連記事】
遺族年金の種類
期間限定の遺族年金加算「経過的寡婦加算」
ご存知ですか?「未支給年金」の存在を

【抽選で10名にAmazonギフト券1000円分プレゼント】All Aboutで「お金」について、アンケートを実施中です!
回答いただいた内容をAll About記事企画の参考にさせていただきます
※2021/12/1~2021/12/31まで

「毎月の家計についてのアンケート」に回答する

※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。