一度、巨大地震が発生すると、その復旧には多大な時間と労力が必要になる。
しかし、11月1日現在、東日本大震災による避難者の数(公営住宅や仮設住宅などを含む)は約32万5000人(復興庁)にのぼり、「忘れた頃」ではなく「現在進行形」の状態が続いています。被災者の皆さんは、避難先で2度目のお正月を迎えようとしているのです。いまだ完全復興への道のりは前途多難です。私ガイドは、哀悼の気持ちを忘れてはならないと強く感じた次第です。
さて、こうした大震災の惨状を目の当たりにし、今では多くの新築マンションが共用部分に防災備蓄倉庫を設置し、入居者のための防災備蓄品を用意するようになりました。ひとたび巨大地震が発生すると電気・ガス・水道は寸断され、ライフラインが復旧するまでには何日もの時間がかかります。
一例として、東日本大震災の被害が大きかった宮城県仙台市を見てみると、市内全域がほぼ復旧するのに電気は約10日間、水道は約30日間、ガスは約50日間かかっています。さらに、被災地全域で見てみると、復旧日数は下表のようになります。水道は20日間で8割が復旧したものの、完全復旧には3カ月を要しました。この間、マンション住民は「自助」(居住者の自衛)と「共助」(管理組合による支え合い)で難局を乗り切らなければなりません。
「自分の生命と財産は自分で守る」―― 防災備蓄品の事前準備が欠かせないわけです。
東京湾北部地震の勃発で、東京23区内の約7割に震度6強以上の揺れが出現する
巨大地震発生の切迫性は高まるばかりです。今年1月には東京大学地震研究所から、「南関東でマグニチュード7クラスの地震が今後4年以内に起こる確率は70%に高まった可能性がある」との発表がありました。「30年以内に70%程度」と想定していた政府の予想とは大きくかけ離れた内容です。また、地震を引き起こすフィリピン海プレートの境界面が従来予想より最大で約10キロメートル浅いことが判明したため、東京都はこれまでの被害想定を全面的に見直し、4月18日に東日本大震災を踏まえた新しい被害想定を公表しました。その内容は最大震度7の地域が出現するとともに、震度6強以上の範囲が23区内の約7割に及ぶというものです。その結果、死者は最大で約9700名(東京湾北部地震の場合)に達するといいます。ますます防災対応力の強化が欠かせなくなります。
円滑な共助活動のための対策として、震災以降の新築マンションでは分譲業者があらかじめ防災備蓄品を取り揃えてくれるようになりました。防災マニュアルまで用意してくれる周到ぶりで、入居者にとっては有り難いかぎりです。しかし一方、既存(中古)マンションでは管理組合が自ら用意しなければなりません。管理会社のサポートは期待できても、役員が先導的役割を担い、自主的に行動する姿勢がなければ良い結果は生まれません。自ら考え、行動するバイタリティーが必要となります。
そこで、中古マンションではどのような防災備蓄品を準備すればいいのか、次ページでそのリストを紹介します。