どれだけリスクを取れるか、「リスク許容度」に応じて金利タイプを選ぶのが鉄則 !
「リスク許容度」に応じて、自分に適した金利タイプを選ぼう。
たとえば、いくら低金利の恩恵を得たいからといって、金利の上げ下げに一喜一憂してしまう“金利アレルギー”の人は変動金利タイプをお勧めできません。仕組み上、実際の毎月返済額は5年に一度しか見直されないとはいえ、こうした心配性の人にとって、金利変動は精神的なストレスに直結します。ましてや、奥さんの収入を100%当て込んで返済計画を立てている人、あるいは自営業のような収入に波がある人など、金利変動により毎月返済額が上昇してしまった場合、返済余力の面でも家計崩壊の危険にさらされます。
このように、リスク許容度の低い人は金利変動に弱いので、返済の安定性を優先し、長期あるいは完全固定型の金利タイプを選ぶのが鉄則です。逆に、リスク許容度の高い人は積極的に低金利を追及して構わないと考えます。要点を整理すると、以下の通りです。
<変動金利タイプがふさわしい人> ~リスク許容度が高い人向け~
低金利時代のこの時期において、目先の金利の安さは特筆に値する。マイホーム取得時には出費も多いことから、返済当初のローン負担を少しでも軽減したい人に適している。将来にわたり低金利が続けば、総返済額でも最安プランとなる可能性がある。しかし半面、金利変動の影響を強く受けるため、金利の上昇局面では毎月の返済額が増えることになる。金利の上げ下げに一喜一憂してしまう“金利アレルギー”の人は利用を避けるべきだろう。借りたら借りっ放しで、市場金利の変化に鈍感な人もふさわしくない。
<完全固定金利がふさわしい人> ~リスク許容度が低い人向け~
完全固定金利は、返済期間中に金利が一定なのが最大の特徴。毎月の返済額が変わらないことを最優先したい人にふさわしい。長期の返済計画が立てやすいのも魅力の1つといえる。しかし、弱点もある。変動型ローンに比べ、当初の金利は高めに設定されているため、総返済額は必ずしも最安とならない。金利を固定させてしまうことで、金利の下降局面では余分な利息負担が発生する可能性(過払い利息リスク)がある。ともかく金利変動の不安から解放されたい人に向いた金利タイプといえる。
<固定期間選択型金利がふさわしい人>
固定期間選択型金利とは、約束した一定期間だけ金利が固定される金利タイプをいう。ベースは変動金利だが、「特約」として一定期間だけ金利を固定する仕組みになっている。金利タイプの特徴が、完全固定金利と変動金利の中間的な位置付けとなるため、「完全固定」あるいは「変動」のどちらかに決められない人、あるいは“いいとこ取り”をしたい人に向いている。具体的には、リスク許容度が低い人は「長期固定特約型」を選び、逆に、高い人は「短期固定特約型」を選ぶといいだろう。
リスク許容度は低いが、変動金利を選びたい人
「つもり貯金」の実行で金利上昇リスクをヘッジせよ!
説明が長くなりましたが住宅ローン相談に話を戻し、その回答として、山本さんご本人が高いリスク許容度をお持ちであれば、変動型の金利タイプを積極的に選んで構わないと考えています。借入金利が2.1%から0.95%へ下がれば、かなり家計への返済負担は軽減されます。低金利の恩恵をしっかり享受できます。全世界的に景気の下振れリスクが高まるなか、緩和的な政策スタンスが突然に引き締めへと修正されることはないでしょう。金利環境は低位安定を続けるとの前提のもと、目先の低金利を追いかけることは十分な納得性を伴います。ただ、もしリスク許容度が低い場合には、リスクヘッジの手立てを施しておく必要があります。そこで、私ガイドが提唱したいのが、住宅ローン版「つもり貯金」です。住宅ローン版「つもり貯金」とは、金利上昇によりローン返済額が増えても家計に過剰負担がかからないよう、ローン返済と同時並行で金利上昇時のための返済原資を“別勘定”で貯金しておこうというマネープランです。
山本さんのケースでいうと、これまで通り2.1%での借入金利でローン返済しているつもりになり、0.95%に借入金利が下がっても、その差額を「つもり貯金」して金利上昇リスクに備えてほしいのです。これまで借入金利2.1%での返済ができていたわけですから、その差額を「つもり貯金」できないはずはありません。さらに貯金額の積み増しができれば、安心度は格段に向上します。
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イソップ物語に「アリとキリギリス」という話がありますが、住宅ローン返済は厳しい冬に備えて夏の時期から一生懸命に食料を蓄える「アリ」である必要があります。用意周到さが肝要なのです。働かずに遊んでばかりの「キリギリス」では困ってしまいます。常に長期的な視点を持ち、想定されるリスクに対抗できるだけの用心深さが欠かせません。