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ペイオフ発動で借りていた住宅ローンも返済不要(?)

「金融機関が潰れることはない」―― この言葉が“過去形”と化したことを、改めて実感させられる出来事が起こりました。9月10日、日本振興銀行が経営破綻しました。1月の日本航空に次いで、今年3番目の大型倒産です。今回の騒動では、わが国初のペイオフが発動されたことでも注目が集まっています。そこで、住宅ローンを借りている金融機関が破綻したら、ペイオフ発動によりその住宅ローンはどうなるのか調べてみました。

平賀 功一

執筆者:平賀 功一

賢いマンション暮らしガイド


ペイオフ

日本振興銀行が経営破綻。わが国初のペイオフ発動へ

「金融機関が潰れることはない」――

今では、この言葉にうなずく人はまずいないでしょう。そう思えるきっかけとなったのが、1997年11月の山一証券の自主廃業です。東証一部上場の大手証券会社が消えてなくなるという一大事は、実に衝撃的なニュースでした。会見の席上で、「みんな私ら(経営陣)が悪いんであって、社員は悪くありません」という野沢正平社長の発言は、今でも私ガイドの記憶から消えることはありません。

しかし、これは序章にしか過ぎず、さらに同月(97年11月)には北海道拓殖銀行、翌98年10月には長期信用銀行、99年6月には東京相和銀行など、多くの銀行や生命保険会社が次々と破綻していきました(下記参照)。大蔵省(当時)の保護と規制の下に置かれた「護送船団方式」が、音を立てて崩れていった瞬間です。単に個々の金融機関がバブル崩壊により不良債権を大量に抱えたからというだけではなく、金融行政を含めた金融システムの構造的な体力低下が“ドミノ倒し”を誘発しました。

<経営破綻した主な銀行と生命保険会社>

 1997年4月  日産生命(あおば生命を経て、現在のプルデンシャル生命へ)
 1997年11月 山一証券
 1997年11月 北海道拓殖銀行
 1998年10月 日本長期信用銀行(現在の新生銀行)
 1998年12月 日本債券信用銀行(現在のあおぞら銀行)
 1999年6月  東京相和銀行(現在の東京スター銀行)
 1999年6月  東邦生命(現在のAIGエジソン生命)
 1999年10月 新潟中央銀行

 2000年5月   第百生命(現在のマニュライフ生命)
 2000年8月   大正生命
 2000年10月 千代田生命(現在のAIGスター生命)
 2000年10月 協栄生命(現在のジブラルタ生命)
 2001年3月   東京生命(現在のT&Dフィナンシャル生命)
 2003年11月 足利銀行(一時国有化)
 2008年10月 大和生命(2000年8月に破綻した大正生命の受け皿会社)
 2010年9月  日本振興銀行

その「山一ショック」から13年。今年、またしても同じ悲劇が繰り返されることとなりました。9月10日、およそ6194億円(10年3月末時点)もの負債を抱え、日本振興銀行が東京地裁へ民事再生法の適用を申請しました。1月の日本航空に次いで、今年3番目の大型倒産です。と同時に、わが国で初めてペイオフが発動されました。

ペイオフとは直訳すると「pay off」=「払い戻し」のことで、金融機関が経営破綻した場合、一定額までの元利金を払い戻す(=保護する)制度のことです。銀行が破綻すると社会的な混乱が大きく、多くの預金者が銀行の窓口に殺到するなど取り付け騒ぎが起きかねません。また、融資が突然止まって資金繰りが立ち行かなくなると、倒産する企業が出る心配もあります。そこで、銀行が破綻しても混乱が起きない仕組みが必要となりました。

ペイオフでは預金保険機構が直接、預金者から預かった資金の一定額を保護することで、こうした混乱を最小限に抑える効果が期待されます。現在、ペイオフで保護されるのは同一金融機関の預金者1人当たり「1000万円とその利息」までです。一部カットされる可能性があるのは普通預金や定期預金など利息の付く商品だけで、無利息の決済用預金は預け金れ金額に関係なく全額保護されます。


本コラムでは、住宅ローンを借りている金融機関が経営破綻した場合、ペイオフ発動でその住宅ローンはどのように取り扱われるのか、次ページで分かりやすくご説明することにします。
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