「東海地震」ってどの範囲?
駿河湾の海底を震源域として、近い将来、マグニチュード8レベルで発生すると考えられているのが「東海地震」です。東海地震は、おおむね100年から150年の間隔で発生してきましたが、1954年の安政東海地震から150年以上発生しておらず、現在ではもはや、いつ発生してもおかしくないとみられています。
静岡県全域、そして東は神奈川県茅ヶ崎市や東京島部、西は三重県熊野市、内陸は長野県諏訪市に至る8都県157市町村にわたる広い範囲に影響を及ぼすとされる東海地震が発生すると、揺れや液状化、津波や火災などにより、建物全壊棟数は23~26万棟にも及び、また死者数は7900~9200人にも上るとの被害想定が予測されています。
こうした被害による経済的被害は約37兆円に上るとみられており、こうなればわが国全体に影響が波及することにもなるでしょう。
地震がいつ、どこで、どの規模で発生するかを、地震発生前に科学的な根拠に基づき精度よく予測することを「予知」といいますが、東海地震は唯一、直前に予知の可能性があるといわれている地震です。
1978年に施行された大規模地震対策特別措置法は、東海地震を予知し、災害を防止・軽減することを目的とした法律。この法律により、東海地震で大きな被害が生じると予想される地域は「地震防災対策強化地域(下図参照)」に指定され、数々の防災対策の強化が図られています。
地震の「警戒宣言」とは?
東海地震を予知する根拠となるのが地震の前兆現象ですが、その前兆現象は気象庁、そして静岡県によって各地に整備されている「ひずみ計」等により監視されています。
ひずみ計のデータに、通常と異なる変化が確認された場合、その変化のレベルに応じ、最大では東海地震の発生の恐れがあると判断されます。この場合、気象庁より政府へ東海地震予知情報が発せられることとなり、この予知情報をうけて内閣総理大臣から発令されるのが「警戒宣言」です。
警戒宣言発令とともに、政府から様々な対応が講じられることになります。おもな対応としては、地震災害警戒本部が設置され、救助や救急・消火部隊の周辺への派遣、さらに救護班を派遣できる体制が整備されます。あわせて、必要な交通規制も行われます。
また警戒宣言とともに、住民等は避難をおこなうことになります。鉄道の進入禁止や一般車両の流入抑制、さらに金融機関の窓口業務は原則として停止されることとなります。
このように警戒宣言が出され、住民等の避難や鉄道の進入禁止等の措置が取られれば、警戒宣言が出されずに地震が発生した場合と比較して、建物や人命にかかわる被害は大きく抑えられると予測されています。
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