労務管理/人事賃金制度

65歳まで希望者全員継続雇用の具体的企業実務

来年(平成25年4月1日)から、65歳まで希望者全員を継続雇用しなければならなくなります。高年齢者雇用安定法の改正に伴い、企業では、就業規則の改定を含む、人事賃金制度の再設計をする必要が出てきます。経過措置もありますので、今回の記事で改正点を理解し、自社制度の落とし込みをしておきましょう!

小岩 和男

執筆者:小岩 和男

労務管理ガイド

希望者は全員継続雇用の対象へ(平成25年4月1日~)!

いよいよ来年(平成25年4月1日)から希望者全員継続雇用の時代へ

いよいよ来年(平成25年4月1日)から希望者全員継続雇用の時代へ

定年年齢は60歳、その後は再雇用で65歳まで継続雇用の企業が多いことでしょう。現時点では、継続雇用の可否は会社側と従業員側(労働組合や従業員代表)の労使協定で、継続雇用をする対象者を限定する基準を設けて実施してよいことになっています。今一度、自社の基準や実際に再雇用された従業員を検証してみましょう。なお継続雇用制度についての詳しい内容は、私の過去記事(定年後の継続雇用制度をどう設計する?)で再確認してください。

■高年齢者雇用安定法が改正されます

ここから本題です。前記の継続雇用制度の根拠法令である「高年齢者雇用安定法」が改正されることになりました。来年(平成25年4月1日)から、前記の継続雇用制度の対象者を限定できる仕組み(基準)が、「廃止」されることになったのです。いよいよ、希望者全員を継続雇用の対象としなければならない時代到来です。まさに企業の高齢者雇用を考える上での大改正ですね。

■厚生年金の支給開始年齢引き上げに関係した法改正です

現在、厚生年金は、特別支給の老齢厚生年金(報酬比例部分)が60歳から支給されています。年金は定年後の重要な収入の源ですね。実はこの年金、来年(平成25年4月1日)から支給開始年齢が徐々に引き上がります。具体的には来年4月1日以降、61歳になるまでは年金が支給されなくなる人が出てくるのです。無年金の空白の1年が生じるというわけです。この空白の期間は徐々に引きあがって平成37年4月1日になると、年金の支給開始年齢は65歳となることが決まっています。

定年後、継続雇用制度がないと、このような無年金・無収入の状況が生じる恐れが生じますね。雇用継続と年金支給をセットで考える労務管理の時代に入ったのです。また希望者全員の継続雇用制度はまさに社会的な要求ともいえるのでしょう。実施日はまもなくです。今回の記事で、なにがどう変わるのかご理解いただくと同時に、企業実務のポイントを押さえ自社の制度を構築していきましょう。就業規則記載例を後述しましたので、ご参考に。

企業実務に影響する改正内容はこの4点!

企業実務に関わる改正の要旨は次の4点です。

その1. 継続雇用制度の対象者を限定できる仕組みの廃止
継続雇用制度の対象となる基準を労使協定で決めて実施できる仕組みが廃止されます。

その2. 継続雇用制度の対象者を雇用する企業範囲の拡大
継続雇用される企業の範囲をグループ企業まで拡大する仕組みが設けられます。

その3. 法令義務違反の企業名の公表
この法令に違反した企業名が公表されることになります。

その4. 高年齢者雇用確保措置の実施・運用に関する指針が策定
自社の制度を作成するには、この指針内容を踏まえ作成する必要があります。

次のページでは、希望者全員継続雇用の段階的実施について解説しています。
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