第78回 煮物の味
先日、NHKで草間彌生さんの特集をしていたとき(ご覧になった方、多いと思います)、アートとかあまり興味ないダンナがめずらしくじっと見入っていて、おもしろいなあと思いました。後日、渋谷の246っていうゲイバーに行ったとき、その話をしたら、店員のアキラさん(「ふつうのくらし」という個展をやってた方)に「へええ。どこが気になったの?」って聞かれて、「生き方がスゴい」って答えてました(確かに、スゴいですよね。あれは見入っちゃいますよ)それはさておき、最近のウチらの話です。
先週の日曜日、ダンナが1日中口をきいてくれなかったという事件がありました。たぶん、前日(土曜)の夜、僕がちょっとキツい物言いをしたせいなんだろうな…と思っていたのですが(仕事がらみだったのですが、言い方が…)、はっきりしなくて、怒ってることだけは伝わってきて、「どうして無視するの?」とか言い始めると逆効果(火に油を注いでしまう)っていうのがわかっていたので、その日は何も言わず、怒りが静まるのを待っていました。こういうとき、だいたいダンナは一晩寝ればさっぱり忘れるのです。が、もし別れるとかなったらどうしよう…とか考え始めると、怖いやら悲しいやらで、独りで泣きそうな気持ちになってました。
本当は、お互い言いたいことをちゃんと言い合って、ちゃんとケンカしたほうがいいのかな…と思うこともあるのですが、なにしろダンナは怒ると迫力がスゴイ(とにかく怖い)ので、すぐにごめんなさいしちゃいます(ヘタレ)。いったんダンナが怒ってしまったら、(目が赤くなった王蟲みたいに)なかなか止められないので、時々様子を窺いつつ、静かに時を待ちます。「まだダメか…」みたいな。ダンナも自分の瞬間湯沸かし器っぷりをよくわかってて、感情を必死にセーブしています(たぶん)
翌日、(ものすごく勇気をふりしぼってるのですが)何事もなかったかのように「ご飯食べよ」と声をかけて、無事に、和解できました。どうやら行き違い(誤解)があったみたいです。こういうことがたまにあるのです。
で、今日はひさしぶりに晩ご飯を作るよ~ってメールしたら、ダンナがめっちゃ喜んでくれたので(ハートマークとかついてました)、張り切って煮物を作りました(あとは焼けばすぐできる魚のムニエルとか、味噌汁とか)。しばらく冷蔵庫とか放置してたので、賞味期限切れた調味料とか腐りかけの物とか捨てたり、無い物を買い足したり(雨の中何度もスーパーへ)、ドタバタでしたが、ひさびさに家でいっしょに晩ご飯食べれて、ダンナも「旨い!」って言ってくれたし(最後に「ちょっとしょっぱいかな…」とダメ出しもありつつ)、よかったです。
もう会話もあまりはずまないし(もちろん夜の営みもないし)、なんだか小津映画に登場する熟年の老夫婦みたいな二人ですが、東京の片隅で、そんなふうに暮らしてます。