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雪国の住まいのくふう マンション篇

東北地方に住んでみて、雪が多く降る地方ならではの住まいのくふうが目新しかった。それらをご紹介しようと思う。今回はマンション暮らしについて。

井上 恵子

執筆者:井上 恵子

住まいの性能・安全ガイド

雪が降った翌朝は一面の銀世界になる

雪が降った翌朝は一面の銀世界になる

雪の降る地域では、屋根の雪かきをしなくて済むマンションの方が、ダンゼン便利だと思う。でも実際は、地方であれば戸建て住宅の方が圧倒的に多い。

そんな少数派のマンションではあるけれど、都心部のマンションとは異なる部分がいくつかある。今回は、雪が降る地域ならではのマンションのくふうをいくつかご紹介しようと思う。

 

冬を暖かく乗り切るために

私が今住んでいる山形県山形市はもともとそれほど雪深い土地ではない。だけど昨シーズンの冬はすごかった。31年ぶりの記録的な大雪となり、平年の3倍の90センチも雪が積もった日もあった。雪がほとんど降らない土地に住んでいた身にとっては、驚きの連続だった。

ただ、私が暮らしているのはマンションで、住まいの冬支度といえば、室内の冷気対策として窓にプチプチを張ったり、断熱ボードを設置したり、床にアルミシートを敷いたりと、それほど大変な作業はなかった。

 

東北の寒さ対策を参考に

自宅にそれらを実装してみて思ったことは「これは東京でも効果があるはず!」ということだった。暖かさが、断然違う。ただ、一般的に関東以南ではあまり広まっていないだけだ。この記事を読んだ雪国以外にお住まいの人で、まだやってみたことのない人は、ぜひ上記の対策をやってみて欲しい。

 

なぜ床が高いのか

外廊下の床下に空間があり、ここにかいた雪を置く。

外廊下の床下に空間があり、ここにかいた雪を置く。

そしてマンションの造りそのものにもくふうがある。例えばマンションの1階の床の高さだ。このマンションを下見に来た時、エントランスホールから一階の住居に至るまで、数段の階段を上らなければいけない構造になっていて少し残念に思った記憶がある。都心部のマンションでは、土地の形状にもよるけれども、基本的にエントランスホールと一階住戸の玄関に段差はほとんどなく、あっても10センチ程度しかないと思う。バリアフリーの概念が発達しているからだ。

今住んでいるマンションは、1階の住居の床レベルは外の地盤レベルから計って1.2メートルほど上がっていた。

 

床下の有効利用

冬場になり、ようやくそれがなぜかわかった。「雪が積もるから」という理由のほかに、1階の床を上げることによってバルコニーやベランダの下に空間ができるが、そこはかいた雪をおく「雪捨て場」のためのスペースだったのだ。

空き地が少ない場所では雪を捨てる場所がなくて問題になるが、私の住むマンションの周辺にも空き地がなく、冬になるとここは貴重な雪置き場となる。

 

外部倉庫が必需品

外部倉庫は必需品。使用料は家賃に含まれることが多い。

外部倉庫は必需品。使用料は家賃に含まれることが多い。

その他に、都市部のマンションと異なるのが「外部倉庫」の存在だ。戸建住宅だけでなく、分譲・賃貸問わずマンションでも、ほとんどが住戸別に外部倉庫が割り当てられている。そこには冬の間に装着するスタッドレスタイヤやスキー用品、雪かき用品などが仕舞われることになる。こちらでは11月ごろになるとほとんどの車がスタッドレスタイヤに履きかえる。小学生は冬の間体育の授業でスキーがあり、多くの家庭でマイスキーを持っている。

また、高級分譲マンションでは、敷地内通路にはロードヒーティングが設けられる。雪が積もっても自動で溶かしてくれるから、雪かきをする必要がない。

 

独特の時間が流れている

私の住んでいる賃貸マンションには駐車場の上に屋根は無いし、もちろんロードヒーティングだってない。雪の日に車で出ようと思ったら、まずは雪かきをしなければならないので、出かける前に大汗をかくことになる。

出発前の雪かきを始め、雪道ではなにが起こるかわからないから、早め早めに家を出るし、少々遅刻しても「ごくろうさん」と、かえってねぎらってもらうこともある。これは雪の降る地域ならではの、ゆっくりとした時間の流れ方なのだろうと思う。


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