インドネシア二大遺跡、プランバナンとボロブドゥール
シヴァ神殿に刻まれた獅子の神シンハー。左右の木はすべての願いをかなえるカルパタルの樹。木の下にいるのは音楽の女神キンナリで、頭部は人間、身体は鳥の形をとっている
プランバナン寺院遺跡公園内にあるルンブン寺院。こちらも世界遺産に登録されている
ボロブドゥールが建てられたのは8~9世紀、プランバナンは9~10世紀で、100年ほどの違いしかない。位置的にも至近で、直線距離で35kmほどしか離れていない。
実は9世紀当時、プランバナンを建てたサンジャヤ朝は、ボロブドゥールを建造したシャイレーンドラ朝の支配下にあった。信奉する宗教は違ったが、お互い宗教的に寛容で、それで対立することはなかったようだ。
サンジャヤ朝の王たちはシャイレーンドラ朝の王たちにしばしば仏教寺院を建造して寄進していた。その一例がプランバナン寺院遺跡公園にあるブブラ寺院やルンブン寺院、遺跡公園の外にあるカラサン寺院やサリ寺院、プラオサン寺院だ。プランバナン=ヒンドゥー寺院と思われがちだが、実は遺跡公園と周辺の寺院はそのほとんどが仏教寺院なのだ。
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ピカタン王とセウー寺院、ロロ・ジョングラン
ロロ・ジョングランと共に世界遺産に登録されているセウー寺院。エントランスを守っているのはラクササと呼ばれる守護神で、インドネシアでは日本の大黒様のようにあちらこちらに祀られている
セウー寺院の主堂。セウー寺院はほとんど未修復で訪れない旅行者も多いが、人の少なさとその廃墟ぶりが味を出している
この寺院は9世紀にシャイレーンドラ朝の王女プラモダワルダニーとサンジャヤ朝のピカタン王が結婚した際に、それを記念して建てられた寺院だ。インドネシアの王宮等でよく見かける守護神ラクササ(別名ドゥアラパラ)がエントランスを守っていることを除けば、お堂と破壊された仏像が立ち並ぶ姿から仏教寺院だとひと目でわかる。
ジャワ島最大の勢力だったシャイレーンドラ朝だが、ボロブドゥール完成後その力は急速に衰えて、10世紀にはジャワ島から消滅してしまう。おかげでサンジャヤ朝は力を増し、ピカタン王は仏教寺院をヒンドゥー寺院に改修しつつ、856年、ついに総本山ロロ・ジョングランの建設を開始する。
プランバナン周辺の寺院が仏教・ヒンドゥー教両方の影響を受けているのはこのような事情による。