損害保険/損害保険関連情報

国の被害認定と地震保険の損害認定、どう違う?(2ページ目)

地震等により住宅に被害を受けたら、火災保険等の契約をしている損害保険会社だけでなく、り災証明書を作成するにあたって必要となるため自治体も被害認定を行います。こうしたとき、「自治体の認定では『全壊』と言われたのに、地震保険では『全損』扱いにならなかった。ナゼ?」といったケースを耳にすることも。以下解説します。

清水 香

執筆者:清水 香

火災保険の選び方ガイド

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第二次調査は、内部立ち入り調査で設備や建具の損害を判断

第一次調査を受けた住家の被災者から、申請があった時に実施されるのが、第二次調査です。

第二次調査では、外観目視調査と合わせ、内部立入調査が行われ、個々の被害が判定されることになります。第一次調査と同じように、外観による判定、ケースにより傾斜による判定が行われますが、部位による判定は、第一次調査よりも多くの部位、具体的には「屋根・柱・床・外壁・内壁・天井・建具(窓やドア、サッシやふすま、障子他)・基礎・設備(水まわり、システムキッチン、洗面台、ユニットバス、ベランダ他)」の各区分について、それぞれの部位の損傷率を確認し判定されます。

なお、非木造住宅の場合には、雑壁や高架水槽、受水槽などの損害も、被害判定の要素に含まれています。
 

地震保険の損害認定では「主要構造部」の損害で決定されるのが基本

一方、損害保険会社による地震保険の建物の損害認定は、主要構造部に着目して損害認定が行われるのが基本です。 主要構造部とは、建築基準法施行令に定める「構造耐力上主要な部分」であり、柱や梁、屋根や壁などの建物の構造を形作っている部分を指します(下表)。
 
※主要構造部とは?
建築基準法施行令 第1条第3号(構造耐力上主要な部分)

基礎、基礎ぐい、壁、柱、小屋組、土台、斜材(筋かい、方づえ、火打材、その他これらに類するものをいう)、床版、屋根版又は横架材(はり、けた、その他これらに類するものをいう)で、建築物の自重若しくは積載荷重、積雪荷重、風圧、土圧若しくは水圧又は地震その他の震動若しくは衝撃を支えるものをいう。


ですから地震保険では、主要構造部の損害について確認し、その損害の割合に応じて、「全損・大半損・小半損・一部損」と4区分の認定に振り分けることになります。地震保険の始期日が2016年12月31日以前の場合は、「全損・半損・一部損」の3区分の認定です。

あるいは、地震火災による焼失や津波による流失の場合には、延べ床面積に対する被害面積の割合により、損害区分が決定されます(下表)。主要構造部でない門や塀といった部分のみの損害は、損害として加味されません。
 
2017年1月以降、契約始期の損害認定は「4区分」~建物の場合(倒壊・火災)

2017年1月以降、契約始期の損害認定は「4区分」~建物の場合(倒壊・火災)


地震保険における建物の損害認定においては、通常は外観目視により損害区分が決定されます。ただ、外観だけでは分からない内部に大きな被害を受けているケースもあるため、こうした場合は契約者が申し出により「二次査定」を受け、認定をし直してもらうこともできます。

なお、分譲マンションは共用部分(躯体部分)と専有部分(室内)で構成されていますが、専有部分の損害認定は、専有部分の損害の程度だけではなく、共用部分の損害も確認して判定することになっています。つまり、室内の損害がさほどなかった場合でも、共用部分が全損と認定されていたら、専有部分も全損と認定されることがある、ということ。こうした点は意外に知らない方も少なくないようです。

一方で、共用部分といっても主要構造部ではない雑壁や高架水槽、受水槽といった設備については、地震保険では損害認定の対象にはなっていません。
 

り災証明書では「全壊」でも、地震保険で「全損」になるとは限らない


上記で確認してきたように、自治体による被害認定では主要構造部のみならず設備や建具までが被害として認定されます。一方、損害保険会社による損害認定では、主要構造部の損害を認定するのが基本です。被害を認定する着目点がこのように両者で異なるため、同一住宅の認定内容は自治体と損害保険会社では必ずしも同じレベルにはならないというわけです。

【関連リンク】
「災害に係る住家の被害認定」内閣府(防災情報のページ)

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