「母さんは女でなくてはいかんのか?」
おしゃれでオンナを感じさせるきれいなママ。子どもを産んでも、母さんはオンナでなくてはいかんのか!?
私は欧州に住んでいる。こちらの母さんたちは、そりゃもういろんな方々がいて、人種もそれぞれだが、なんというか、女としての種類もいろいろだ。若くムチぷりで当たり前みたいにヘソ出してる肉体派もいれば、お父さんだと思って話しかけたらお母さんだと判明してこちらが自爆する、ヒゲの生えた(比喩ではない)母さんもいる。
携帯片手にベビーカーを押すスーパーモデルみたいな母さんや、化粧っけゼロでマウンテンバイクを駆る母さん。妖精も、魔女も、トロールもいる。この中で散見される日本人の母さんたちは、(日本ではどんなにフツーでも)こっちではみんなものすごく小綺麗でたおやかに見える。この身長高くて肩幅デカくて悪口雑言の塊の私でさえ、非常に愛らしい母さんだと思われている(はずだ)。そもそも人種的背景や階級、教育などの文化的背景が千差万別だから、一口に母さんと言ったって年齢も10代から40代、50代までホントに親子ほどの開きがある女たちが同じように子育てをしている。
肉食狩猟文化で求められる「そそられるママ」像と、コメ食農耕文化日本への波及
その社会でも、やはり「ママになってもオシャレでセクシー」な方々を「Yummy Mummy」という。美味しそうな、そそられるママという意味だ。ちょっと前にはおしゃれ妊婦のススメを説く本の影響で「Hot Mama」という言葉も流行った。グッと来る、やっぱりそそられるママという意味だ。「どんなに年を取っても、妊娠中でも産後すぐでもセックスし続けなければいけない」強迫観念がママ雑誌の「妊娠中のオススメ体位」特集や人生相談欄を日々飾り続ける肉食狩猟文化では、妊娠していようが出産しようが更年期を迎えようが、どうやら女なるものには常に「セクシー」で「そそる」ことが期待されているようだ。だから欧米の産後の母親たちはオンナであることを維持するためにMummy's Job(贅肉や加齢を修正するための各種美容・整形)に執心する。そうした延長線上で、日本の妊娠出産文化もファッションや欧米セレブのゴシップを糸口に「オンナ化」「肉食化」が始まって久しい。コメ食の農耕文化、我が日本でも、出産前段階の若い女子の肉食化に伴って「オンナな母」の裾野が広がった感がある今日この頃である。
そもそも母になることを選ぶ時点で、「オンナ性」に比較的親和的な層であるとは言えるものの、妊娠出産期の、自分と赤子の生命維持で精一杯の状況がデフォルトとなって「女度レス」の緩やかな下降曲線を描いていく人もいれば、そこからむしろ「こんなことじゃダメ、こんなのアタシじゃない!」と「女度UP」へと鼻息荒く邁進する人もいる。この鼻息荒くなる方の母の割合が増えた、そんな感じがするのだ。
>> 長らく母たるもの、オンナを必要以上に感じさせるのは御法度であった……