文章:河崎 環(All About「子育て事情」旧ガイド)

公の場で赤ちゃんにおっぱいをあげていたら、米国では「セクハラ」として訴えられたという事例があります。日本でも母乳育児を頑張っているママが増えていますが、公の場での授乳はまだまだ肩身が狭いのが実情。人前で赤ちゃんに母乳をあげる『公然授乳』、あなたは肯定派?それとも否定派?


米国では人前でおっぱいをあげたらセクハラ!

日本よりもずっと開放的で、「他の人が何をやっていてもあまり気にしない」アバウトな印象さえある米国の育児。しかし、寛容なイメージとは裏腹に、人前で赤ちゃんにおっぱいをあげているお母さんが、「セクハラ」で訴えられてしまったという事例があります。

哺乳瓶に入れた粉ミルクをあげるのとは違い、母乳をあげるということはお母さんが乳房を出すということ。ですが、赤ちゃんはお腹を空かせるのにTPOは考慮してくれません。一度「お腹が空いた」と泣き始めたら待ったなしなのです。

もし街の中で、公共の交通機関の中で、お店の中で、赤ちゃんが泣き始め、彼の要求はおもちゃでもお菓子でもなくただ一つ「おっぱい」なのだとしたら?「おっぱい」がやってくるまで決して泣き止まないぞという初志貫徹の心意気で、彼が全身で泣いているのだとしたら?お母さんは、その場でおっぱいをあげることができるでしょうか。

周囲の人の反応はどうでしょう。温かく微笑んでくれるひともいるでしょう。しかし、目をむいて驚く人もいるでしょう。好奇の目で見る人もいるかもしれません。米国で、授乳中の母子を「セクハラ」で訴えた人は、授乳の姿を「いやがらせ」だと嫌悪感(!)を持ったのでしょう。育児の当事者であるお母さんや赤ちゃんにとっては当然かつ必然の営みである「授乳」が、周囲の人にどのように受け取られるかは非常に微妙な問題です。


日本では『公然授乳』派が増加中?

ところが、翻って日本では、このところ都会での『公然(母乳)授乳』派も増加しているようです。産院などで母乳育児の指導が徹底され、現代の育児は「なるべく母乳で育てましょう」という風潮が強まっています。戦後すぐの時代は栄養状態の悪いお母さんの母乳よりも人工乳(粉ミルク)のほうが栄養価に優れているとして粉ミルク育児が推奨されていたという歴史がありますが、日本人の栄養状態が向上し、厚生労働省が母乳育児を推奨するようになって、医学的にも心理的にもメリットが大きいとして母乳育児は広く市民権を得てきました。

スリング
赤ちゃんをすっぽり包んでくれるスリング

この「母乳回帰」に加え、近年は赤ちゃんをぴったりと密着して抱っこする抱っこ紐やスリングが流行し、これも『公然授乳』を後押ししているようです。これらの抱っこ紐は、お母さんの胸元を上手に隠してくれるのが特長で、抱っこしながらの授乳が可能。いかにも「おっぱいをあげています」という風情ではないので、周囲の人もあまり気づきません。これまでは、赤ちゃんがおっぱいを求めて泣いても、授乳室のないところでは周囲の視線が気になって、やむを得ずトイレで授乳していたお母さんたちも沢山いました。しかしいまは、公園やカフェで座りながら、車で移動しながら、中にはスーパーで買い物をしながら(!)赤ちゃんの要求に寄り添う母乳育児を頑張っているお母さんたちが増えています。


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