みんながみんな同じではないという事は充分、理解しておきたい事です

性同一性障害では心と身体の性が一致していません。この不一致を是正するための医学的対処法としてはホルモン療法や性別適合手術などがあります。

まれではありますが、時に自分の身体的性(解剖学的性)に心の底から強い嫌悪感を抱いている人がいます。こうした人は通常、子供の頃から異性の格好や遊びを好んでしていた事が多く、自分の性的アイデンティティに深刻な危機が生じやすくなっています。

こうした性的アイデンティティに関わる問題は自分の周囲に、からかいや差別といったネガティブな反応を引き起こしやすい傾向があり、その人には大きな逆境になりやすく、場合によっては、この先、いったいどうやって生きていけばよいのか分からなくなってしまうほど、心の苦しみが大きくなってしまう場合もあります。

今回は、この性同一性障害の原因、症状、治療法について詳しく解説します。

性同一性障害では心と身体の性が一致していない

性同一性障害の正確な発症率は不明ですが、概算として、ヨーロッパの調査では、男性は約3万人に1人、女性は約10万人に1人と、男性は女性より3倍ほど多くなっています。

性同一性障害の根本的原因は、心と身体の性が一致していない事ですが、それではなぜ、体は男性なのに、心は女性といった事が現実に起こるのか、ちょっと不思議に思われたかも知れません。その大きな原因は実は、まだ生まれてくる前、母親の胎内で脳が発達していく段階にあると言われています。詳しいメカニズムは不明ですが、何らかの要因で、脳の性が身体の性と反対になってしまったようなのです。

この性の不一致は周囲にネガティブな反応を引き起こしやすいだけでなく、自分自身の性的アイデンティティに深刻な危機を生じさせ、本人の苦悩は周囲の想像をはるかに超えたもので、日常生活にも深刻な支障が生じている、性同一性障害が起こる可能性があります。

性同一性障害の症状 

性同一性障害では通常、幼少時に以下の傾向が顕著に現われています。
  • 男子は自分が女子であると、女子は自分が男子であると、みなしたがる
  • 異性の格好をしたがる、例えば、男子は姉の服を着たがる、女子は兄の服を着たがる
  • おままごとのような遊び事では、男子は母親の役を、女子は父親の役をやりたがるといったように、自分の身体的性とは反対の役をしたがる
  • 男子は女子がしたがる遊びを、女子は男子がしたがる遊びを好む
  • 男子は女子の仲間に、女子は男子の仲間に入りたがる 
こうした子供時代を送った後、思春期を迎え、自分の第二次性徴がはっきりしてくると、新たな危機が生じてきます。自分の性的に成熟していく体に強い嫌悪感を抱きやすく、自分の体が心とは反対の性になっていく事を隠したい、あるいは抑止したいといった欲求が強くなり、それが強迫観念化してしまう場合も少なくありません。

そして成人後は、自分は異性の心を持っている事をはっきり認識するようになり、周囲からもそう認知され、自分の心の性に一致する生き方をしていく事を強く望みます。と同時に、男性なら男性らしく、女性なら女性らしくあるべきだという、時代とともに寛容度は増してはいるものの、依然として根強い社会的規範に嫌悪感を持ちやすい傾向があります。

性同一性障害の治療法 

性同一性障害の治療法は基本的には、心と身体的性の不一致に対する医学的対処と、その不一致が引き起こしている心理的問題から本人をサポートしていく精神科領域での治療が柱です。

心と身体的性の不一致への医学的対処法としては、身体的性を心の性に近づけるためのホルモン療法、場合によっては、性別適合手術などが行われます。ホルモン療法の原理は、男性を男性らしく、女性を女性らしい外見にしているものは、基本的には性ホルモンの作用だという事を応用したもので、例えば、男性には女性ホルモンを投与して、乳房を女性らしくするといった事が行われます。性別適合手術は、もっと根本的な対処法で、男性なら男性生殖器を除去して、女性生殖器を形成するといったように、身体的性を心の性に、より一致させる手段です。

性同一性障害では自尊心が低下していたり、これからどうやって生きていけば良いのか困難を感じるほど、絶望感が強まっている、あるいは、対人能力など、いわゆる世渡りに必要なテクニックを充分、習得できていない可能性もあり、本人の自尊心を向上させ、社会的適応能力を向上させるために、心理療法が一般に望ましくなります。

こうした性同一性障害は広義に見れば、あるべき自分ではない自分に悩み苦しみ、自分をあるべき本来の自分に戻す事を心の底から望んでいる状態だと見る事もできると思います。その本人の周囲では、先入観や固定観念が強い場合、何らかのネガティブな反応が生じやすいものですが、私たちには元々、大きな多様性が備わっていて、みんながみんな同じである必要性も特に無いのではないかという事は充分、認識しておきたい事だと思います。
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