社会保険/社会保険の基礎知識

建設業者の社会保険未加入対策はこうする!(2ページ目)

建設業は、元請・下請け・孫請けなどの、下請け重層という特殊な業界。また業界全体の問題として、従来から、社会保険「未加入」の企業が多く存在することが挙げられています。そのため、従前より、管轄行政庁(国土交通省)から、未加入対策が次々と打ち出されていましたが、本年(平成27年)4月以降からは、より強い未加入対策が実施されています。未加入のままだと、それこそ死活問題。早急に対策しましょう!

小岩 和男

執筆者:小岩 和男

労務管理ガイド

下請け事業者に対する指導はこうする!

下請け業者に対する社会保険加入指導は、元請会社の役割責任です!

下請け業者に対する社会保険加入指導は、元請会社の役割責任です!

さらに国土交通省では、元請会社は社会保険に未加入の下請け企業に対して指導する役割があることを徹底するために「下請け指導ガイドライン」を作成し公開しました。元請企業の経営者、実務担当者必見といえる内容です。

今まさに確実に指導していくことが求められているのです。元請・下請け企業の役割責任が明確になることで信頼関係をより強固にしていくことが求められているのです(ガイドラインは、平成24年11月1日施行です)。

指導がうまくできない場合、未加入状態が続くことになりますが、その場合は強い行政指導が入る可能性があります。また国の方では、平成29年以降には未加入である建設企業に対しては下請け契約をすべきではない、との見解が出されています。対応を保留するわけにはいかないのです。次のとおり実践していきましょう。

■元請企業には次の役割と責任がある!

1.協力会社組織を通じた指導等を徹底する
建設業は、前記のとおり元請会社からの下請け会社への請負契約となることが多いので、各下請け企業は、元請企業の事業協力をする「協力会社」といわれることがあります。当然ながら、孫請け、ひ孫請けなど重層形態となることもありえます。その際は元請企業が、傘下の下請け企業すべてを直接指導することが困難な場合があります。その際は協力会社組織体を通じた加入勧奨、周知啓発を進め、元請企業はそれを統括する方法をとって万全を期しましょう!

2.下請け企業選定時の確認・指導の徹底
下請け業者の選定候補の企業が社会保険未加入だった場合には、元請企業は早急に加入するよう指導。国土交通省の見解では、遅くとも平成29年度以降は、加入が義務づけられているのに未加入の企業は下請け企業とすべきではない、との見解が出ていることに特に留意ください。

また各作業員についても、建設工事によっては、下請け企業との関係で「再下請負通知書、作業員名簿」などを作成することがあります。そこに記載されている社会保険欄で加入状況を把握してください。加入が義務づけられているのに未加入の場合は、前記と同様、平成29年度以降は現場入場を認めないとすべき、との見解が出ています。

3.その他
建設工事によっては、前記の書式などで確認ができない場合もあります。その場合でも適宜加入指導をすること。また加入についてのポスター掲示やパンフレット配布、講習会の開催などを積極的に進めることです。下請け企業を集めて、社会保険制度の説明会などを積極的に進めることをぜひお勧めします。そこでは社会保険制度だけでなく、企業の労務管理のポイントも説明していくと効果的です。

■下請け企業には次の役割と責任がある!

1. 下請け企業で働く者の社会保険加入義務の有無を的確に判断すること

下請け企業で働く者には、従業員として雇用されている者と、請負契約にある者に区分ができます。前者はわかりますね。給与が支給されていることでしょう。出勤簿や賃金台帳の整備がされているか確認してください。もちろん加入条件を満たしていれば加入をしなければなりません。

後者は、たとえば個人事業主として請負契約で働く人のことです。自身で確定申告をしている方などですね。従業員ではないので、出勤簿や賃金台帳はないことでしょう。後者の場合は、社会保険に加入義務はありません(別途、特別に労災保険などに加入できる制度などが用意されています)。

建設業法令遵守ガイドラインで社会保険の加入項目を確認しておこう

(平成24年7月31日施行)

以上、建設業の特殊性(下請け重層)から社会保険の未加入問題を解説してきました。なおその他、建設業者には、法令順守ガイドラインが従来からありましたが、今般、社会保険・労働保険に関する項目が改訂されました。建設業の特殊性から、法令遵守については相当の注意が必要であることは周知されているところですが、社会保険・労働保険に係る項目についてかなり踏み込んだ内容になっています。

当該保険料は、建設業者が負担しなければならない法定福利費であること、建設業法で定められた「通常必要と認められる原価」に含まれること、見積時から法定福利費を必要経費として適正に確保する必要があること、下請負人の見積書に法定福利費相当額が明示されているにもかかわらず元請負人が下請負人の法定福利費相当額を一方的に削減したり、法定福利費相当額を含めない金額で建設工事の請負契約を締結した場合、建設業法に違反するおそれがあることなどが明記されました。その他建設業法に基づく帳簿の備付け・保存及び営業に関する図書の保存の項目等について所要の改訂がされていることに注意をしておきましょう!

<関連記事>
従業員採用時の社会保険手続き

次に監督官庁により参考サイトをご紹介します。内容を確認し、元請・下請け企業それぞれ手配を進めていきましょう。

<関連資料>
国土交通省「「建設業法施行規則の一部を改正する省令」及び「建設業法第27条の23第3項の経営事項審査の項目及び基準を定める件の一部を改正する告示」について

国土交通省「社会保険の加入に関する下請指導ガイドライン」

国土交通省「建設業法令遵守ガイドラインの改訂について」

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