マルケ料理専門オステリア「ラ チチェルキア」
アドリア海の眺め
皆さんはイタリアのマルケ州をご存知でしょうか。知っている方は、目を閉じて真っ先に何を思い浮かべられるでしょうか。紺碧のアドリア海? ウルビーノの歴史的遺産? それともオペラファンならチケットの入手困難なことで知られるマチェラータのオペラフェスティバルやペーザロのロッシーニ・オペラ・フェスティバルでしょうか。
日本からのパック旅行のルートにはなかなか組み込まれることがないマルケ州。知名度は今ひとつですが、アドリア海と南北に走るアぺニン山脈の間に挟まれたイタリア中部の南北に長い州なんですね。特にアドリア海側にはなんと約180kmにも及ぶ美しい浜辺が続いています。「マルキジャーニMarchigiani(マルケ州人)」はこんな故郷の自然や、ラファエロをはじめ多くの芸術家を産み出した芸術的・歴史的土壌を誇りに思っていますが、実は海と山が40km程度しか離れていないマルケ州は、海と山両方の食材の宝庫! ふんだんな食材を贅沢に駆使した郷土料理も自慢のひとつなのです。
ワインセラーにはマルケ産ワインがいっぱい
そんなマルケ州とマルキジャーニたちに魅せられて、マルケ州に1年半の間、滞在して料理修行をしておられたのが連(むらじ)久美子さん。連さんがマルケ料理を学んだのはアンコーナの山手のイエジ(Jesi)のスローフード認定料理学校ITALCOOK。そこでマルケ料理に格別な興味を持った連さんは、さらに山手のセッラ・デ・コンティ(Serra de Conti)という町にある、ジャコメッリ・マルコ(Giacomelli Marco)さんのリストランテ「コークス・フォルナチス(Coquus Fornacis)」に住み込み、マルケの自然と生活にどっぷりと浸りながら、マルケならではの食材を使って地産地消の郷土料理を1年間みっちりと身に付けられたのです。
「ラ・チチェルキア」の店内
今回ご紹介するのは、その連さんが今年2012年5月、大阪に開店されたマルケ料理に特化したオステリア、その名も「
ラ チチェルキア(La Cicerchia)」。店名にもなっている「チチェルキア」とはマルケ州特産の豆の一種で、セッラ・デ・コンティでは毎年11月の終わりに盛大な「チチェルキア祭り」が開かれているそうです。
お店の場所は靭公園近くのデザイナービルの3階。カウンター6席+小さなテーブル一つのほんとうに小さなお店です。その日のメニューはガラスの壁に手書きされ、シニアソムリエの資格も持つ連さんがたった一人ですべてをこなされています。それだけにシェフ自ら心を込めて手作りしてくださる過程がカウンター越しにすべて見え、大きなレストランでは味わえない「ぬくもり」も感じられるのがいいですね。さながら「マルキジャーニ割烹」とでも呼びたくなる、シェフとの距離感がこの上なく近いオステリアなのです。
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