世界遺産/アジアの世界遺産

コルディリェーラの棚田群/フィリピン(4ページ目)

コルディリェーラ山地に広がる棚田群はその美しさから「天国への階段」と讃えられ、棚田が生産する豊かな実りは人々を2,000年にわたって養い続けてきた。今回はイフガオ族が誇る文化的景観であり、アジア有数の産業遺産でもある世界遺産「フィリピン・コルディリェーラの棚田群」を紹介する。

長谷川 大

執筆者:長谷川 大

世界遺産ガイド

「フィリピン・コルディリェーラの棚田群」の見所

バナウェのビューポイントから見た棚田群

バナウェのビューポイントから見た棚田群。この辺りは標高2,000mに近く、これ以上高いところでは稲作ができない

コルディリェーラ山地に残された棚田群のうち、世界遺産に登録されているのはイフガオ州にある下記4郡の棚田群だ。

■バナウェ郡
バナウェの文化的景観

天・地・人が一体となったバナウェの文化的景観

世界遺産観光の起点となる街がバナウェだ。渓谷に広がる小さな街で、川を挟んだ対岸にバナウェの棚田群が山の彼方まで続いている。ホテルから眺める棚田も美しいが、トライシクロで30分ほどの位置にあるビューポイントからの眺めがすばらしい。

バナウェからトライシクロで1時間弱、約10kmの位置にあるのがバンガアン村だ。人口百数十人ほどの小さな村ながら棚田は美しく、イフガオ族の典型的な村のひとつといわれている。

コルディリェーラの棚田群のハイライトがバタッド村だ。村を取り巻くように広がる棚田群は壮観で、村の中に宿泊することもできる。バナウェから15kmほどだが、バスやトライシクロで行くことができるのは村へと続く山道の入り口までで、その先は片道2時間ほどのトレッキングを覚悟しなくてはならない。

 

バナウェの周辺には他にもタムアン、バタン等の村があり、それぞれに棚田が広がっている。

■フンドアン郡
バナウェから約15~20km、トライシクロで1時間半ほどの位置にあるのがフンドアン郡のハパオ等の村々だ。

ハパオの棚田群の特徴はバナウェのように山を駆け上がる形ではなく、棚田がなだらかな平野に広がっている点。村もバタッドやバンガアンのように棚田の中央に集中しているのではなく、棚田の中に点在している。

■キアンガン郡
バナウェから約20km、州都ラガウェから7~8km、バスとトライシクロを乗り継いで2時間ほどの位置にあるのがナガカダン村の棚田群だ。ここの棚田は川によって二分されており、渓谷の両岸に棚田群が広がっている。

■マヨヤオ郡
バナウェから約30~40km、バスで3時間ほどの位置にあるのがマヨヤオの棚田群だ。4郡の棚田の中でもっとも観光化が進んでいない棚田で、イフガオ族の伝統的な家屋を見ることができる。観光地となったバナウェの成功や失敗から新しいツーリズムを模索している。

■その他の棚田群
マウンテン州のボントック郡やサガダ郡、ベンゲット州のアトック郡等には美しい棚田が広がっている。サガダはハンギング・コフィアと呼ばれる壁面に棺が吊り下げられた洞窟墓地でも有名だ。
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