年齢を重ねるにつれ、悩みのタネは増える一方かもしれませんが、それでも心身の健康さえあれば、何とかなるもの!? 心の病気は精神科(神経科)で是非、早めにお手当てを!
人は生きている限り、年をとる事は防げません。今はランドセルを背負っている子供だって、いつの間にか成人式を迎え、そのまま年月が過ぎていけば、やがては道を歩くにも、杖が必要になるもの。
それでも、「終わり良ければ、すべて良し」と言います。その言葉通り、人生の終盤では見事な花を咲かせてみたいもの。その際、「無くてはならないものは?」と問えば、地獄の沙汰も金次第なんて言いますが、やはり健康が大切! 体も心も健康が一番です。もしも、朝、起きた時、膝の調子が悪かったりすれば、それだけで一日、気分は、ふさぎがちになるもの。
今回は、高齢者に多い心の病気と、それに加えて介護する側のコツも詳しく解説します。
高齢の方は心の病気にも要注意!
年齢そのものが、心の病気の直接のリスクと言う訳ではありませんが、高齢になればなるほど、心の不調に結び付きやすいネガティブな要因が現われます。
まず、体力の低下は避けがたいもの。体の筋力や敏捷性に関しては、若かった20代、30代の頃と比べれば、ちょっと別人の観があるかも。また、知的面では、若かりし日の頭の鋭さは、いまだ健在と自負している人は少なくないでしょうが、記憶力の低下は、よく現われる症状。例えば、会ったばかりの人の名前が、なかなか頭に出て来なかったりします。
人間、年をとれば、持病もいくつか抱えがち。例えば、「関節があちこち痛む」「肝臓の調子が悪い」「糖尿の気が出てきた」といった事で、体の不調に悩みっぱなしの人もいるでしょう。また、仕事をリタイアしてしまえば、職場の人間関係など、それまでの社会生活を喪失してしまい、自尊心低下の原因になってしまう事もあります。さらに、もしも長年、苦楽を共にしてきた伴侶や、仲の良かった友人を亡くしてしまえば、日々の暮らしは寂しくなってしまいます。このように老齢期は心の健康を維持する事が時に難しくなってしまう時期なのです。
高齢者に多い心の病気は、うつ病、認知症……
高齢者に多い心の病気についてですが、まず、高齢者とは、いったいどの年齢で区切れば良いのかという問題があります。人生50年などと言われていた江戸時代まででは、40代も後半になれば、もはや老境と言えるでしょうが、平均寿命が80歳前後に達した現代では、40代後半なんて、まだまだ、小僧扱いされてしまう場合があるかも!?
ある年齢を超えた人をひとくくりに高齢者扱いするのも失礼な話。70歳を超えられても、元気いっぱい、社会の一線で活躍されている人もいれば、反対に、体のさまざまな不調に悩まされてしまう人もあり、個人差は非常に大きいです。
ここでは仮に、65歳以上を相対的に高齢という事にしておきますが、その高齢者に多く見られる心(脳)の病気としては、うつ病、認知症、アルコール依存症、恐怖症といったものが代表的で、高齢者の10%前後、あるいは、それ以上で見られます。
また、老齢になると、若い頃には無かった非合理性が思考に現われてくる事も、場合によってはあります。例えば、玄関先に空き缶が転がっているのを見て、「これは、お隣の○○さんの仕業ではなかろうか!? うーん、このあいだ、通りがかりに挨拶が無かったのは、こういう事だったのか!」などと考えるようになってしまったら、周囲の人は、決して、「年のせい」と解釈せず、本人の被害妄想的傾向が、精神科での治療が必要な妄想性障害のレベルにまで達している可能性もあるので注意が必要です。
症状のなかには根本的治療法が無いものがある事は認識しておきたい
心の病気は患者本人だけの問題ではなく、家族にとっても大変深刻な問題になり得ますが、患者の年齢が高齢になればなるほど、本人の体力低下や合併疾患などのために、患者を支える家族にとっても、問題は、より深刻化してしまう傾向があります。
例えば、現在、70歳を超している自分の母親が、うつ病と認知症を同時に発症したとします。息子にとっては、過去の母親のイメージは必ず心に残っているもの。例えば、小学校の運動会の時には必ず、ご馳走が一杯詰まった重箱弁当を作ってくれ、自分の徒競走の際には、手を振って応援してくれていた母親の姿は、大人になったあとも、覚えていたりするもの。その過去のイメージから現在の母親の姿が離れるにつれ、辛さだけが増すものですが、これから母親がどういう経過をたどっていくのかは、しっかり認識しておきたいものです。
高齢者の症状は、かなりの部分、治療が可能ですが、なかには、根本的治療法が無いものがある事は充分、認識しておく必要があります。上記の例では、気分の落ち込み自体は抗うつ薬などによって治療できますが、もしも、認知症がアルツハイマー型だったならば、母親の脳内には根本的治療法が無い不可逆的な病変が生じています。母親が、かつての姿に戻れない事は悲しい事ですが、その事をはっきり認識しておく必要があります。とはいえ、たとえ脳内に根本的治療法の無い不可逆的な病変があったとしても、その症状の現われ方自体には、心理的要因の影響が大です。上記の例でも、母親が息子の愛情を身近に感じる事が出来れば、認知症の症状自体は、より軽く現われ、病気の進行も、より遅くなる事は期待できます。
介護する側は何としても長期戦を乗り切れる態勢を作っておきましょう!
高齢者の介護はどうしても長期化が避けがたい面があり、中途でのバーンアウト(燃え尽き)は何としても避けられるよう、長期戦を乗り切れる態勢を作っておきたいものです。そのためには、自分のすべてを介護のために犠牲にするのはNG! 自分の出来る限界は充分認識したうえで、自分自身の息抜きが出来る時間は必ず作っておきましょう。
また、同じ境遇の介護仲間は是非、見つけておきたいもの。介護の苦悩自体は当事者のみにしか分からない部分があるものですが、仲間同士で、たまには愚痴をこぼし合う事が出来れば、気持ちは随分、軽くなるはずです。
高齢者の介護は、この高齢化社会では誰にとっても不可避な問題となっています。ここで改めて言うのは、ちょっと、くどいかも知れませんが、介護の当事者には周囲のみんなで、もし何か協力出来る部分があれば、積極的に協力出来る態勢が出来ていたとしたら、本当に素晴らしい事だと思います。