文句のつけようもない、最新VWテイスト
最高出力105ps/最大トルク175Nmを発生する1.2リッター直4SOHCターボエンジンを搭載。デュアルクラッチトランスミッションの7DSGを組み合わせる。10・15モード燃費は17.2km/lと、旧型の最終モデル(1.6リッターエンジン搭載)より48%向上した
正直に言って、試乗直後は、「最近のVWだったね」としか言葉がなかった。これって、VWの実用車としては、非常にいいことだと思う(たぶん)。何せ、ゴルフのように乗れてしまったわけだから、ふだん乗りに不便はないし、文句のつけようもない。エンジンもミッションも、既に評価の高い組み合わせで、その“良さ”をわざわざアピールする必要もないだろう。
とても、いいクルマだった。
反面、2時間後には、どんなクルマだったかほとんど忘れてしまっていた。ゴルフ、ポロ、up! と続いた、とてもよくできた実用車の延長線上にあって、その存在が早くもかすんでしまったのだ。なんと、1週間後には、事務所のスタッフに、“新しいビートル、試乗会行けなかったから、借りて乗っておかなきゃね”と言ってしまい、“西川さん、もう借りましたよ”と返される始末……。
いやはや、実用車としては、これに優る“水や空気”感覚はないのだけれど、はたして、“ビートルスタイル”が好きな人にとって、それは本当に嬉しいこと、なのだろうか……。
いやまてよ、そもそもビートルスタイルだって、このザ・ビートルでは穏やかに否定されているのだ。ルーフの頂点はフツウのクルマのように後に下げられ、何だかアウディTTに空気を入れて膨らませたようなクルマになっちゃったのだから、ニュービートルファンのなかには、「買い替えるの、やっぱやめとくワ」となった人も多いんじゃ、なかろうか。
ボクは、正直、恋しいのだ。ニュービートルの、ちまたの機能一点張り実用車を笑ってやり過ごすユニークな存在感と、車体のまん中に座ってぐらぐらする画面を眺めながら運転する、ちょっと遊園地の乗り物みたいなライドフィールが。
あれは、今から考えると、来るべき低速化社会、縮小化社会への実験というべき、“未来の実用車”だったのではないか。クルマなんて、格好よければいいじゃん、可愛ければいいじゃん……。(もっとも、ボクは運転して楽しければいいじゃん、なんだけどね、古くさいけど)
Think slow.
21世紀のビートルというからには、アウトバーンを大笑いするくらいの衝撃が欲しかった。