旧型は“フツウのクルマ”離れした空気感で人気に

VWザ・ビートル

昨年の東京モーターショーでお披露目された、“21世紀のビートル”をキャッチフレーズとした新型。ボディサイズは全長4270mm×全幅1815mm×全高1495mm


Think small.

VWニュービートル

旧型となるニュービートル。日本では1999年から販売され、累計輸入台数8万3097台を記録した

‘60年にアメリカで制作された、初代ビートル用広告のキャッチコピーである。一連の“衝撃的”なプロモーションもあって、ビートルはアメリカ市場で爆発的にヒット。その人気は世界中に広まり、結局、65年ものあいだ作られ続け、つごう2150万台が世に送り出された……。

とまあ、ビートルというクルマは、超のつくスーパースターであって、これぞ正に真の伝説、当のVW社はもちろんのこと、他のメーカーが寄って集って束になったって、金輪際敵いやしない、雲の上どころか遥かなる宇宙の存在、みたいなもんだ。

VWニュービートル

ニュービートルにはソフトトップを備えるカブリオレもラインナップ。こちらの国内累計輸入台数は4689台

であるからして、’98年に登場したビートル・ファッションドカーは、“ニュービートル”と呼ばれ、BMWミニやフィアット500といったレトロ風味プロダクションの先駆けとなった。

ニュービートルは、あくまでもデザインチャレンジだったし、その、言ってみれば“フツウのクルマ”離れした空気感が人気を博していた。われわれプロもまた、他とは違うユニークなクルマとして、その存在を認めていたというわけだ。

たとえば、こんな具合に。

「走りがどうのこうのって、このクルマにはカンケーないよね。可愛いし、格好いいし、ユニークだし。なんか、ずっと一緒にいたい感じがしてさ……。トモダチみたいなもの?」


実用を考えた21世紀の“ビートル”

VWザ・ビートル

国内にはまずベーシックなデザイン(250万円)とデザイン レザーパッケージ(303万円 写真)を導入。ボディカラーは6色が用意された


こんどのザ・ビートルは、違う(新しいのに、ニューは付かないんです。BMWミニもそうでしたね)。フツウを目指したというのだ(ああ、BMWミニもそうでした)。21世紀に“ビートル”を作ってみたら、なんて大仰な話にさえなっているらしい。

いや、待てよ、と言いたい。

確かに、ビートルスタイルなクルマを、より実用度を高めて世に送り出すことには、一定のニーズがあるだろう。先代ニュービートルオーナーのなかには、それを望む人も多いに違いない。けれども、その一方で、ニュービートル(先代ですよ、ヤヤコシイ)の、あのほどよくほんわかふんわり“非常識”な感覚がなくなってしまったことに失望する向きも、少なからずいらっしゃるんじゃないだろうか。

少なくとも、ボクはそうだった。

先代のニュービートルには、ちょっと人を食ったところがあって、たとえば、あの饅頭を3つ重ねたようなスタイリングにはじまり、一輪挿しどころか芝生とチューリップだって植えられそうなドライバー前の空間や、速度無制限のアウトバーンを小馬鹿にするようなライドフィールまで、クルマが、言ってみれば、機能重視のドイツ製高性能車たちを大いに“笑っていた”。そこが、愛くるしかったのだ。

ちなみにボクは、黒で赤幌のカブリオレのニュービートルがイチバン好きだ! so cool!

それに、ニュービートル登場の背景には、それこそ、think smallを突き詰めた、ゴルフやポロの存在があった。“実用”を極めたモデル、=初代ビートルの進化形、が、まわりにちゃんといた。だからこそ、ファッションに割り切ったビートルスタイルがリバイバルできたのだろうし、世の中の支持も得られたのだと思う。

翻って今、VWには、ゴルフ、ポロどころかup! まであって、“小さく行こう”という初代のVW哲学は、いっそうの進化をみせつつある。パワートレインのダウンサイジングトレンドを世に知らしめた功績だって、そうだ。初代ビートルのスーパースター哲学は、VWブランドの本流として、今、世界中の人々から支持されているわけである。

そんなところへ、ニュービートルのモデルチェンジ版だけど、実用を考え、21世紀のビートルを目指しましたという、その名も“ザ・ビートル”登場って、ちょっと、なんか、ヘンじゃないか?

何の問題があるというのか。ビートルだけがVWのなかでスタイル重視、デザイン重視、雰囲気重視、見栄え重視、趣味性重視、多少の実用無視であり続けることに?
VWザ・ビートル

ボディ同色のカラーパネルやビートルボックスと呼ばれる収納を備えるなど、インテリアも初代からインスパイアされたデザインが取り入れられた