第36回世界遺産委員会速報
2012年6~7月、ロシアのサンクトペテルブルクで世界遺産委員会が開催された。ここで新世界遺産26件が誕生し、世界遺産総数は962件となった。今回は第36回世界遺産委員会の概要と新登録の全世界遺産、危機遺産リストの変更点などを紹介する。なお、本記事はユネスコ(UNESCO:国連教育科学文化機関)の公式サイトの情報を参考に編集した。
新世界遺産26件誕生、世界遺産総数962件へ!
リオ・デ・ジャネイロとグアナバラ湾を一望するコルコバードの丘からの展望。この雄大な景観は「リオ・デ・ジャネイロ:山と海に挟まれたカリオカの景観」として世界遺産に登録された
今年の新世界遺産候補は33件(詳細はこちら)。うち26件が世界遺産として登録され、通過率は78.8%となった。
2013年にはいよいよ「富士山」と「古都鎌倉の寺院・神社」の世界遺産登録が審議される
そしてパラオ、コンゴ共和国、チャド、パレスチナにはじめて世界遺産が誕生した(パレスチナ・イスラエル双方が領有権を主張する「エルサレムの旧市街とその城壁群」は考慮していない)。
また、危機遺産リストには新たに5件が登録され、2件が削除されて、計38件となった。
世界遺産条約採択40周年
元世界遺産「ドレスデン・エルベ渓谷」に登録されていたカトリック旧宮廷教会。近隣に造られる橋が景観を乱し価値を損ねるということで、世界遺産リストから削除された
これまでに登録された世界遺産の総数はおよそ1,000件に及ぶ。世界遺産は各国の国内法によって守られなければならないため、それらすべての世界遺産がユネスコの高い基準で今日も保護されているということになる。そしてまた、世界遺産を目指す多くの物件が同様のレベルで保護されつつある。
現在緊急で保護が必要な物件ということで38件が危機遺産リストに掲載されているが、実際その価値が失われて登録抹消になった物件は、オマーンの「アラビアオリックスの保護区」とドイツの「ドレスデン・エルベ渓谷」の2件しかない。普遍的価値を持つすぐれた文化や自然を残そうという活動は世界に拡大しており、大きな成功を収めているといえるだろう。
一方で問題も多く、戦争や内戦、途上国の環境開発、南北問題、気候変動や人口増加、都市開発と公害問題など、世界遺産に影響を与える多くの課題が指摘されている。たとえば次項で紹介するパレスチナ問題がその一例だが、世界遺産が政治や経済の道具になっている事実も否定できない側面だ。
いずれにせよ世界遺産条約採択から40年。これを記念して世界各国でイベントが行われている。日本でも京都などで開催される予定だ。
【関連サイト】
- World Heritage Centre -40years- (ユネスコの40周年記念公式サイト。英語・フランス語)