療養食・食事療法/その他の病気の療養食・食事療法

食物アレルギー治療に大きな変化?!

食物アレルギーはアレルゲンを「避ける」方法が一般的でしたが、最近ではアレルゲンを「避けない」対応策が注目されているようです。

一政 晶子

執筆者:一政 晶子

管理栄養士・米国登録栄養士(RD) / 栄養管理・療養食ガイド

栄養に関する情報は日々変わりますが、最近大きな変化を見せているのが、食物アレルギーの対応策。これまではアレルゲンになりやすい食物の摂取タイミングを遅らせるという方法や、食物アレルギーがある場合はアレルゲンの除去を継続するといった「避ける」方法が主流でした。最近では「避けない」方法に関する研究が活発になってきています。妊娠中から5~7歳くらい向けの最近の傾向について説明します。

妊娠中

妊娠中はお腹の子供のアレルギーを心配してアレルゲンになりやすい食材を制限しても子供のアレルギー予防には有効ではないようです。妊娠している母親自身のアレルギー対応のみでよいようです。

乳児期

アレルギーのない母親の場合、母乳を与えることで子供のアレルギーを予防する可能性が示唆されていますが、アレルギーのある母親の場合は、母乳のみでも食物アレルギーを特に予防する効果はないようです。しかし、全体的な健康を考慮した場合、生後4~6カ月は完全母乳が勧められています。母乳でない場合は育児用ミルクの使用のみが推奨されており、生後4~6カ月はそれ以外の食物は与えない方がよいようです。

アレルギ

小麦&ナッツが入ったアレルギーが心配なお菓子。

離乳食開始時~幼児期

アレルゲンとなりやすい食物は摂取を遅らせるように言われてきました。牛乳は1歳、卵は2歳、ナッツや一部の魚介類は3歳で与えるように勧めている専門機関もあります。私も自分の子供に食物アレルギーが出た時は「もっと遅くあげればよかったのかな」と思いましたが、導入タイミングとアレルギー予防は関連性がないという研究結果が優勢なようです。もしアレルギーがあった場合、原因を特定しやするために赤ちゃんに与える食材は一つずつ増やすように勧められています。もし食物アレルギーがでれば、その食材をしばらく除去する対策が一般的です。牛乳は3歳までに8割以上、卵は5歳までに8割近くでアレルギー反応が見られなくなるようです。しかし、ピーナツの場合は6歳までに反応が見られなくなるのは2割強くらいだという報告もあります。治りやすいアレルギーとそうでないアレルギーがあるようですね。

基本的に有効な食物アレルギー予防方法はなく、アレルゲンになりやすい食材を与える時期を遅らせて予防するのではなく、アレルギーが出れば取り除くという方法が主流になってきているようです。

幼児期以降

多くの子供が食物アレルギーへの耐性を獲得していきますが、そうでない子供達もいます。これまではひたすらアレルゲンを避ける方法が一般的でした。しかし、最近では「避けない」療法である「称特異的経口耐性誘導療法(SOTI)」の研究が世界中で進んでいるようです。「経口減感作療法」と呼ばれることもあるようです。英語の正式名称は「Specific Oral Tolerance induction (SOTI)」です。アレルギーのある食品をごく微量から摂取を開始し、アレルギー発作が出ても発作の対応をしながら、一般的な量(牛乳ならば200~250mlなど)を摂取できるまで量を増やしていく方法です。目標量に到達するまでの期間は医療機関によって差があり、効果的な方法を模索している段階であるようです。病院で治療を開始し、自宅療法へと移行するパターンが多いようです。アレルギーの発作が深刻すぎて途中で断念するケースもあるようですが、成功率もまずまずなようです。ただし、自己判断で行うと大変危険ですので注意が必要です。

上に挙げたように、食物アレルギーの対策として、「避ける」方法から「避けない」療法へシフトしつつあるように見られます。食物アレルギーの子供達が安心して食を楽しめるようになりますように。
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