不眠・睡眠障害/不眠・睡眠障害の種類

子どもに特徴的な睡眠障害…睡眠遊行症や夜驚症など

【医師が解説】子どもでも、遠足などの前日に興奮して寝つけないことはよくあります。しかし夜中に歩き回る「睡眠遊行症」や、突然叫んだり手足をバタバタさせたりする「夜驚症」などの睡眠障害もことも。子どもによく見られる4つの睡眠時随伴症について解説します。

坪田 聡

執筆者:坪田 聡

医師 / 睡眠ガイド

 

子どもの睡眠障害1:睡眠遊行症……静かに歩きまわる

睡眠時遊行症(すいみんじゆうこうしょう)というのは、いわゆる夢遊病のことです。典型的には、眠りについてしばらくすると、突然起き上がって、部屋の中を目的もなく歩き回ります。パジャマを脱いだり、部屋から出ていってしまったりすることもあります。目を開けていて、障害物もうまく避けながら歩くので、目覚めているかと思うのですが、話かけても返事はありません。

数分間歩き回りますが、このときに目覚めさせようとしても、すぐには起きられず、しばらくは夢うつつでぼんやりしています。翌朝に歩いていたことを話して聞かせても、本人は全く覚えていません。疲れていたり睡眠が不足していたり、不安なことがあったりすると、遊行しやすくなります。

睡眠時遊行症は、女の子よりも男の子に多く見られます。4~6歳ごろから始まり、7~14歳ぐらいで自然になくなります。5~12歳児の調査では、一度は夢遊したことがある子どもが約15%いて、しばしば夢遊する子どもは3~6%います。また、睡眠時遊行症の子どもの1~2割で、家族にも同じような症状が見られます。

脳波検査では、特に異常はありません。睡眠時遊行症の原因はまだよくわかっていませんが、睡眠から覚醒するメカニズムが未熟なためではないかと考えられています。成長とともに自然に遊行しなくなるので、特に治療は必要ありません。歩き回るときにケガをしないように寝室の環境を整えて、見守っていてあげてください。叱ったり、無理に目覚めさせようとしたりしないでおきましょう。
 

子どもの睡眠障害2:夜驚症……手足をバタバタし、奇声と共に目覚める

夜驚症(やきょうしょう)も睡眠時遊行症と同じく、眠り始めて3~4時間以内の深い睡眠のときに起こります。男の子に多いことや、家族に同じような症状が出やすいことは睡眠時遊行症に似ていますが、数は少なくなります。

典型的な夜驚症では、睡眠中に突然、叫び声を上げたり泣き声を出したりして、起き上がります。顔は、恐ろしい目に会ったような表情をしています。手足をバタバタ動かしたり、汗をびっしょりかいていたりすることもあります。発作は10~30分ほど続き、次第に静かになります。発作中に声をかけたり体を揺さぶったりしても、なかなか目覚めさせることはできません。翌朝には、夜のできごとを全く覚えていません。

夜驚症の原因もまだ不明ですが、成長すると発作が起こらなくなることから、睡眠に関する脳の神経系の発達や成熟が、まだ不完全なためではないかと考えられています。症状がひどい場合には、ベンゾジアゼピン系の薬が使われることがあります。多くはありませんが、発作の最中にケガをすることがあるので、寝床の周りには危険なものを置かないようにしましょう。
 

子どもの睡眠障害3:悪夢障害……多くは年齢とともに自然治癒

眠る子ども

できれば、楽しい夢を見てほしいものです

夢は主に、レム睡眠のときに見ます。レム睡眠は睡眠の後半になるほど時間が長くなるので、悪夢も夜中から明け方に見ることが多くなります。悪夢を見ると、子どもは泣いたり怖がったりして目を覚まします。起き方だけみると夜驚症に似ていますが、悪夢障害では目覚めは比較的スッキリしていて、悪夢の内容をはっきり思い出せます。

大人の場合、精神的なストレスが原因で悪夢を見ることが多いのですが、子どもではそうとは限らず、ストレスが少なくても悪夢を見ることがあります。悪夢を見やすくする薬として、レセルピンやアドレナリンを遮断する薬、睡眠薬などが知られています。日本では少ないかもしれませんが、子どもがアルコールを飲むと悪夢を見やすくなります。また、睡眠が十分とれず、特にレム睡眠があまりとれていないと、悪夢が増えます。

年齢とともに悪夢を見なくなることが多いので、通常は特に治療の必要はありません。子どもが悪夢を見て泣きながら目覚めたら、優しくいたわってあげてください。そうすれば、次は楽しい夢を見られるかもしれません。ただし、悪夢の回数が多かったり子どもの精神的なストレスが強かったりしたら、カウンセリングや睡眠薬の治療を受けたほうが良いことがあります。そのときには、睡眠障害の専門医にご相談ください。
 

子どもの睡眠障害4:夜尿症……ストレスが原因のことも

おねしょのことを医学的には、「夜尿症」と呼びます。赤ちゃんの頃はだれでもみな、眠っていてもおしっこをします。成長するにしたがって、眠っている間に尿意を感じたら目覚められるようになります。この習慣が身につくと、普通は眠りながらおしっこをすることはなくなります。ところが、何かのきっかけで、再びおねしょしてしまう子どもがいます。これが夜尿症です。

夜尿症の原因はまだよく分かっていませんが、睡眠メカニズムがまだ未熟なためではないかと考えられています。女の子よりも男の子に多く見られ、親や兄弟で同じ症状を持つことがあります。睡眠時遊行症や夜驚症を合併することもよくあります。心理的なストレスや生活習慣の乱れが、夜尿症を引き起こしたりひどくしたりすることがあります。

ほとんどの場合、夜尿症は年齢とともによくなります。そのため、小学校に上がる前の時期なら、そのまま様子を見ているのが良いでしょう。強く叱ったりこだわったりするとそれがストレスになって、夜尿症が長引くことがあるので注意してください。小学生になっても夜尿症が続き本人が気にするときには、夜尿アラーム療法や三環系抗うつ剤、抗利尿ホルモン剤、抗コリン剤などの治療を受けると良いでしょう。


【関連サイト】
メルクマニュアル家庭版・子どもの睡眠障害
日本夜尿症学会

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