海外ミュージカルにもたくさん出演しましたが、やはり1番は、本公演お披露目作品の『THE SCARLET PIMPERNEL』パーシー・ブレイクニー。キチンとしていてはじけている……。圧倒されるほどの歌唱力は言わずもがな。これは後に、タカラヅカレビューシネマやバウ・スペシャルシアターとして上映されました。
日本物にも定評があり、中でも『大坂侍-けったいな人々-』の鳥居又七は当り役。魚の水を得たるが如し。「霧矢大夢にしかできない役」でした。
また、ヒゲの似合う男役でした。包容力たっぷりな『La Esperanza-いつか叶う-』のファビエル、ギラギラな『エリザベート』のルキーニと、品格のあるフランツ、チャーミングなおじ様『ME AND MY GIRL』のジョン卿。
女役も似合う男役でした。コケティッシュな『ガイズ&ドールズ』アデレイド。しっとり&凛とした『紫子』の紫子。
ショーでも、『TAKARAZUKA舞夢』でのパンドラや『Apasionado!!』での瀬奈じゅんさんとのデュエットダンスなどの名シーンを残しました。
男役の演じる女役って、“男役が演じている女役”という雰囲気があり、それも魅力なのですが、霧矢さんの場合は完璧に「女役・霧矢大夢の魅力」でした。
そして最後の役は、軍服もスーツ姿も素敵な『エドワード8世-王冠を賭けた恋-』のデイヴィッド・ウィンザー。何かで誤魔化すことのできない、役者の真の力が見える上質なこのお芝居は、霧矢さんの魅力を余すところなく見せてくれました。
立っているだけで、「きりやん、やっぱり上手い……」とにやにやしてしまうほどに。
霧矢さんの舞台を観ていると、宝塚への愛というより、挑戦を感じます。どれだけいいものを作れるか、どれだけ感動させられるか……。そのための苦労は相当なものだったでしょう。
しかし、舞台上の霧矢さんは、華やかでカッコよく涼しい顔。激しいダンスの後、肩で息をしていても、辛そうに見えたことは一度もありません。見せるのは“頑張っている姿”ではなく完成品。
そんな霧矢さんのプロ意識の高さは、本人のみならず、組の、そして宝塚歌劇全体のクオリティをさらに上げてくれたことに間違いはありません。
宝塚トップスター史上に燦々と残る実力ある男役。
稀代のトップスターでした。