女性杜氏「武者返し」の寿福酒造場
この日は雪景色の趣きある蔵。ファンも多い
人吉市内、胸川沿いにある風情ある蔵「寿福酒造」。ここの造り手は女性杜氏でもある寿福絹子さん。常圧蒸留のみで地元米を使用し、熟成とともにふくよかさと深みを兼ね具える骨太の味わいはもちろんのこと、肝っ玉母さんのイメージがある絹子さんファンも全国に多い。
仕込みは甕。働くのは絹子さんの息子。頼れる存在。ぶれてゴメン
「もともとは家業を継いだだけ。子育てもしていたし、本当に大変だった。酒造りをメインとしたのは40を越えてからよ」と語る。今は息子さんとお嬢さんが仕込みや事務を手伝う。
一次仕込みは5割麹。今でも創業時の明治23年製の甕で仕込んでいる。蒸留してから2年熟成させて出荷する。原料がよくないと熟成しないし、おいしくないと絹子さん。原料に思い入れをもって、愛情こめて造る。そう、本当に子供を育てるように話しかけながら造るのだ。
麹室。焼酎作りでも重要な麹。味が決まる要素だ
「先日15年熟成物を7500円と値付けしたら驚かれた」と。日本酒にしても焼酎にしても、どうも日本人は、日本の酒が高いといけないような感覚にとらわれているように思えてならない。
甕の中で発酵を続ける酒は、静かな蔵に不思議に響き渡る。
寿福ファミリーと鳥飼社長(左)。球磨弁での情報交換がはじまる。
「この音、まるで小雨の降る音のようでしょ?」と笑う絹子さんはとてもチャーミングだ。